
誰にでもお気に入りの場所があるものだ。アメリカ・フロリダ州で暮らす大型犬、グレート・ピレニーズのリッチーにとって、その場所は近所のドラッグストアチェーン「CVS薬局」だ。
きっかけは9か月前。リッチーは飼い主と一緒に買い物でCVS薬局を訪れた。
レジで飼い主が会計をしている時、リッチーの耳に犬用おやつの袋の音が聞こえた。なんと親切な店員が、カウンター越しからリッチーにおいしいおやつをごちそうしてくれたのだ。
この出来事がよほどうれしかったのだろう。以来、リッチーは散歩中に必ずCVS薬局に立ち寄ろうとする。
今ではリッチーはすっかり顔見知りとなり、どの店員たちもリッチーの訪問を心待ちにし、姿を見かけるとおやつをくれるようになった。
おいしいおやつをくれるやさしい人間がいる薬局
リッチーはおやつをもらったあの日以来、毎日CVS薬局に立ち寄ろうとする。散歩に出ると、迷うことなく薬局へ向かおうとする。
飼い主は、「今日は薬局には寄らないわよ」とリードを引っ張っても、座り込んで言うことを聞かない。
根負けした飼い主がリッチーに導かれるままに薬局に向かうと、店のドアの前で期待に満ちた表情を浮かべる。
親友の犬と公園で過ごすのももちろん楽しいが、リッチーにとって、お気に入りのお店に入って、親切な店員さんたちと触れ合い、おやつを分けてもらうことも、一日を充実させるうえでとても大切なものなのだ。
散歩コースに薬局が含まれるように
それからというもの、リッチーの散歩の行程の中にCVS薬局が含まれるようになった。
リッチーはゆっくりと店内に入り、まっすぐレジへと向かう。
人間のお客さんが並んでいるときは、自分も列に加わり、おとなしく順番を待つ。どれだけ時間がかかっても、リッチーは我慢強く待ち続ける。
店員全員と友達になったリッチー
リッチーに最初におやつをくれた店員とは特に強い絆が生まれたが、今では店員全員がリッチーのことをかわいがるようになった。
誰であっても、リッチーがレジに来ればおやつを手渡してくれる。
飼い主は「あのやさしい女性は、まさか自分の行動がチーム全体に影響を広げることになるなんて思ってもいなかっただろう」と投稿している。
VIP待遇で薬局を後にするリッチー
リッチーがたっぷりとおやつをもらい、店員たちと触れ合ったあとは、赤い制服の薬局スタッフが車まで付き添ってくれることもある。
まるで特別なお客様のように送り出される。そして家に帰ると、お気に入りのベッドでくつろぎながら、次の薬局訪問を夢見て眠りにつく。
リッチーはアメリカ各地を旅した経験もあるが、どの場所よりも地元のCVS薬局が一番特別な場所になっているようだ。
グレート・ピレニーズとは
グレート・ピレニーズは、フランスとスペインの国境に広がるピレネー山脈で古くから家畜の護衛犬として飼育されてきた大型犬種である。
体高は約65~80cm、体重は45~60kgほどで、毛色はほとんどが白だが、耳や顔、尾の付け根付近に薄い褐色(バッジと呼ばれる模様)が入る個体もいる。
もともとは羊や家畜をオオカミやクマなどの外敵から守る役目を担っており、勇敢さと冷静さを併せ持つ。
飼い主や家族に対しては非常に穏やかで優しく、子どもやほかの動物とも仲良くできる。
一方で強い自立心を持っており、時に頑固に見えることもある。
警戒心は強いが、無駄に吠えたり攻撃的になったりすることは少なく、状況を見極める知性を持つ。
体が大きく力強いため、根気強いしつけが求められるが、信頼関係を築けば穏やかで社交的な性格を発揮してくれる。
グレート・ピレニーズの平均寿命は10~12年とされている。大型犬としては標準的な長さである。