火星の岩石から硫黄の結晶を発見、キュリオシティが偶然見つけた生命に不可欠な素材
火星の岩石の中から偶然発見された硫黄の結晶 / Image credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS

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 火星でひとり、黙々と探査を続けるNASAの探査車「キュリオシティ」が、偶然にも驚くべき素材を発見した。

 2024年5月、ゲディズ渓谷流路の調査中、たまたま踏みつけて、砕けた岩の中から黄色く輝く「純粋な硫黄」の結晶が姿を現したのである。

 硫黄は、必須アミノ酸の構成要素であり、生命にとって不可欠な元素だ。

 火星ではこれまで硫酸塩が確認されていたが、純粋な硫黄の発見は今回が初めてである。

 この発見は、火星の地質や環境にこれまで知られていなかった重大な秘密が隠されている可能性を示している。

キュリオシティ、偶然に硫黄の結晶を発見

 火星では「硫酸塩[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%AB%E9%85%B8%E5%A1%A9]」自体はそれほど珍しくない。この化合物は、水に溶けた硫黄が他の鉱物と混じった後、水分が蒸発すると残される塩類で、火星の水の存在や風化プロセスを解き明かす手がかりとなる。

 一方で、純粋な硫黄ができる条件は非常に限られている。

 2024年5月、探査車「キュリオシティ」は火星のゲディズ渓谷流路を移動していた。キュリオシティの車体の重量は約899kg、その圧力で脆い鉱物の塊が割れ、中から黄色い結晶が現れたのだ。

 分析の結果、それが純粋な硫黄の結晶であることが判明した。

 しかもそのあたりには同じような岩石がたくさん転がっていた。

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火星の硫黄が示す地質の謎

 それが意味するのは、その一帯では過去にこれまで見過ごされていた地質学的な現象が起きており、付近にかなりの硫黄が存在している可能性があることだ。

 NASAジェット推進研究所のアシュウィン・ヴァサヴァダ博士はこう語る。

 純粋な硫黄でできた石が見つかるのは、砂漠でオアシスを発見するようなものです。

 あるはずのないものがあったなら、なぜそれが存在するのか理由を解明しなければなりません。

こうした不思議で予期せぬ発見こそが、惑星探査の醍醐味です(アシュウィン・ヴァサヴァダ博士)

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生命に不可欠の素材である硫黄

 硫黄の発見は、火星の知られざる過去を教えてくれるだけでなく、生命の発見という点でも重要なものだ。

 というのも、それがアミノ酸の材料で、生命にとって不可欠な元素であるからだ。

 硫黄は通常、硫酸塩として取り込まれ、生物がタンパク質を合成するために必要な必須アミノ酸2種の構成要素として使われる。

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 もちろん、これまで火星で生命の存在は確認されていないし、今回の硫黄がその存在を証明する直接的な証拠になるわけでもない。

 だが、水や化学物質、かつて存在した居住可能な環境など、過去あるいは現在における生命の存在を期待させる手がかりなら次々と発見されてきた。

 2025年7月現在においても、生命発見のニュースは伝えられていない。だがつい最近も生命に関連する分子が発見されている。

 こうした経緯を振り返ると、世紀の大発見は時間の問題という気がするのだが、楽観的すぎるだろうか?

 キュリオシティは今日も火星で黙々と探査を続けてくれている。

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References: Jpl.nasa.gov[https://www.jpl.nasa.gov/images/pia26309-curiosity-views-sulfur-crystals-within-a-crushed-rock/]

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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