大好きな人だ!チンパンジーが命の恩人と最高に甘い抱擁をかわす
恩人フィストンさんと抱擁を交わすチンパンジーのシトロン/image credit:instagram

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 赤ちゃんの時に両親を密猟者に奪われて孤児となり、違法な野生動物取引から助け出されたチンパンジーは、お世話になった恩人のことをずっと忘れない。

 彼らが保護区で何度も交わす抱擁が、人々の心を大きく揺さぶっている。

 何年たっても変わらない信頼と愛情。その絆の深さがありありと伝わるこちらの動画は、幼少期に保護されたオスのチンパンジー、シトロンと彼のお世話係をつとめたフィストンさんの心温まるワンシーンだ。 

保護区の島で恩人と何度も抱擁を交わすチンパンジー

 場所はカメルーンのドゥアラ・エデア自然公園内にあるチンパンジーの島。

 動物保護区のこの島を訪れたのは、チンパンジー保護団体のスタッフで、ベテランお世話係のファブリス・フィストン・ムドゥングさんだ。

 彼はチンパンジーの健康と栄養チェックのために時々ここにやってくる。

 お土産のバナナなどを用意してると、川の向こうからオスのチンパンジー、シトロンが歓声を上げながらやってきた。

 フィストンさんにすぐ気づいたのだろう。水にぬれないようにか、両腕を頭に上げながら、うれしそうな顔でまっすぐ向かってくる。

 川の中で合流すると、大好きなフィストンさんとギュッとハグ。

 彼の大好物であろうお土産(イモ系?)をすぐに食べるかと思いきや、なにより甘い抱擁を交わしたかったみたいだ。

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 とっても長い抱擁の後、フィストンさんが体を離すとシトロンが「もう1回!」とリクエスト。2回、3回と愛情がたっぷりこもった抱擁を何度も交わすふたり。

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 フィストンさんも満面の笑みでシトロンを見つめてたりしてとにかく幸せそう。

そこに言葉が無くてもどれだけふたりが仲睦まじいかが手に取るように伝わってくる。

 たっぷりの抱擁の後、お土産を受け取りフィストンさんと握手して、また川の向こうに戻ってゆくシトロン。

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 何をおいても恩人のフィストンさんを大歓迎。お互いに喜びでいっぱいのひとときだったね。

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赤ちゃんで孤児となり違法取引から救われたシトロン

 シトロンがフィストンさんと初めて会ったのは、違法な野生動物取引から救われた直後のころだ。

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 シトロンはもともとはアフリカの森で暮らすチンパンジーだった。

 ところが赤ちゃんのときに密猟者に両親を奪われ、さらに悲惨なことに捕獲され、連れ去れたあげく、違法取引業者に売られそうになった。

 だが彼はすんでのところで、カメルーンを拠点とするチンパンジーの保護団体、パパイエ・インターナショナルに救い出された。

つらい幼少期を過ごすもフィストンさんに導かれ健康に

 パパイエ・インターナショナルを運営するマリリン・ポンズ・リフェット氏はこう語る。

現在、私たちは34頭のチンパンジーを管理しています。シトロンも他のチンパンジーと同じように悲しい幼少期を過ごしました。傷つき、おびえ、悲しみに包まれたまま保護区に到着したんです

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 だが幸いなことに、シトロンは悲しみに打ちのめされず、元気を取り戻してくれた。ベテランのお世話スタッフのフィストンさんが彼を健康に導いてくれたからだ。

(フィストンは)私たちの中でも最年長の世話人で、島にやってきたすべてのチンパンジーのことを知っています

シトロンは彼を、愛情と尊敬をもって自分をお世話し、尊厳ある暮らしと穏やかな未来をもたらしてくれた友人として、とても大事に思っています (リフェット氏)

  現在シトロンは、この島で他のチンパンジーたちと一緒に暮らしている。

ここでチンパンジーたちは自由に生活し、探検し、家族をもつこともできる。

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 それでもシトロンを始めとしたチンパンジーたちとかつて彼らをお世話したフィストンさんとの心のつながりは続いている。

大好きなのはおやつよりフィストンさんの抱擁

 島のチンパンジーの健康状態と食事の状況を確認するため、フィストンさんは時々食べ物を持って島を訪れる。幼い時からフィストンさんに育てられたシトロンにとって、彼の訪問はおやつよりもずっとうれしい瞬間だ。

シトロンの笑顔は服従の笑顔ではなく、心からの喜びの笑顔です。人間の友達を抱きしめられることが嬉しいんですよ
 
親を失った孤児のチンパンジーの赤ちゃんは死亡率が高くなります。つまり、ある意味フィストンは、シトロンの生涯の恩人といえるでしょう。そして、シトロンもそれをわかっているようです  (リフェット氏)

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チンパンジーから奪うのも立ち直らせるのも人間性

 また2025年6月25日に公開されたこの映像は、インスタグラムで83万件、Facebookで20万ものいいねがつき、視聴者からは「美しい抱擁」「自然と涙が出てきた」「とても貴重」などの反響が巻き起こった。

 このシーンにリフェット氏はこうコメントしている。

チンパンジーはDNAの98%を人間と共有しています。この映像からもそのふるまいがいかに人間と似ているかがわかります。知性、感受性、共感は、人間だけが持つ特権ではありません

人間性の一部、つまり密猟や密売、殺害をする人間性が、チンパンジーから家族と自由を奪いました

一方で、同じ人間性の別の部分、つまり愛し、救い、守る人間性が、チンパンジーを支え、自立に導びけることを保証しています

チンパンジーに尊厳や自由がある未来のために

 多くの人の心を震わせた今回の動画には、団体からのこんなメッセージも添えられている。

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年月を越えた抱擁…シトロンは、フィストンのことを自分を世話し、寄り添い、尊敬してくれた人だと認識しています

かつて私たちの協会に保護されたこのチンパンジーは、数年前にこの島で自由を見つけました

フィストンと何度も交わす抱擁が、かつての記憶やゆるぎない信頼、そして懐かしい感情を鮮やかに呼び覚まします。 この愛に満ちた光景に誰もが心揺さぶられることでしょう

私たち人間のDNAの約98%は、チンパンジーと共通しています。

それでも彼らは搾取され続けています。彼らはサーカスで芸を仕込まれたり、実験動物やペットにされる存在ではありません!

それは彼らの居場所でもなければ、たどるべき運命でもないのです

私たちは日々、チンパンジーが持つべき尊厳や自由、彼らが心から尊敬される未来のために働いています。 赤ちゃんチンパンジーが子供時代を奪われるような現状を変えなければなりません

彼らの内にある人間性を認めることは、私たち自身の人間性の始まりでもあります。私たちが望むのは、そのことを誰一人忘れ去ることなく心に刻んでいる未来です

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