
インドの町で、飼い主女性が愛犬の散歩をしていたところ、この地域に住む顔見知りの犬が近づいてきた。
「私が散歩させる!」と言わんばかりに、犬は女性の手にあるリードをしきりにくわえようとする。
最初は渡さなかった女性だったが、あまりにも熱心だったため、ついにリードを渡すと、その地域犬は犬を引き連れて歩き始めたのだ。
この微笑ましい光景を撮影した動画がSNSに投稿され、多くの人の心を和ませている。ちなみに、女性の愛犬も元は地域犬だった。
愛犬の散歩中、地域犬がやってきた
インド北部、ウッタル・プラデーシュ州にあるチトラクートという町で、2025年6月27日、地元に暮らすシータル・バートワルさんが、愛犬タイガーと朝の散歩をしていたところ、地域で暮らす犬の「グッチュ」が近づいてきた。
グッチュはバートワルさんたちに近づいてくると、タイガーのリードの持ち手を何度もくわえようとする。
あまりの熱心さに根負けしたバートワルさんがリードを手放すと、そのまま引っ張ってタイガーを先導するように、意気揚々と歩き始めた。
タイガーとグッチュはお互いに顔見知りで、定期的に散歩中に出会っており、親睦を深めていた。
両者が友情で結ばれているのをバートワルさんも知っていたため、リードを託すことができたのだろう。
この時の様子は動画に撮影され、バートワルさんのInstagramに投稿された。
すると多くの反響が集まり、まるで飼い主気取りでタイガーを連れて歩く地域犬グッチュの姿が、多くの人々を笑顔にした。
インドの地域犬、インディーブリード
グッチュはともに「インディー・ブリード(Indie Breed)」と呼ばれるインドの地域犬的存在である。タイガーも元々そうだった。
インディー・ブリードとは、野良犬や半野良犬として地域に根づいて暮らしている土着犬で、見た目は雑種に近いが、インドの環境に適応した在来犬種として認識されている。
こうした犬たちは、地域の人々に餌をもらったり、名前を付けてもらったりしながら、自由に暮らしている。
保護施設で飼育されているわけではないが、町の一員として親しまれているケースも多い。
インディー・ブリードは高温多湿な気候や病気への耐性が強く、性格も穏やかで知能が高いため、家庭犬としても適している。
近年では「Adopt an Indie(インディー犬を迎えよう)」という保護啓発運動がインド国内で広がりつつあり、地域犬を迎える選択肢が注目されている。
動画を撮影・投稿したシータル・バートワルさんは、「純血種の犬に限らず、地域で暮らす犬たちにも目を向けてほしい」と語っている。
都市部では純血種のペットが人気を集めている一方で、インディー・ブリードのような地域犬は見過ごされがちだ。
だが、今回の動画は、そんな地域犬たちが見せる豊かな感情や、他の犬との深い絆を伝えることで、人々の意識を変えるきっかけとなっている。