実は仲良しだった?オセロットとオポッサムが一緒に行動する姿が何度も目撃される
オセロットとオポッサム Photo by:iStock

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 南米ペルーのアマゾン奥地で、ネコ科の肉食動物のオセロットと、小型の有袋類オポッサムが、仲良く一緒に歩いている姿が複数回観察された。

 本来であれば捕食者と獲物という関係にある両者だが、映像には緊張感のない自然な姿が収められていた。

 科学者たちはこれを偶然の出来事とは考えていない。普通なら考えられないような異種の動物同士に協力関係があるのではないかと関心を寄せている。

この研究は『journalEcosphere[https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecs2.70322]』誌(2025年6月24日付)に掲載された。

トレイルカメラが捉えた珍しい組み合わせのコンビ

 この発見のきっかけは、ペルー南東部のマヌー国立公園にある「コチャ・カシュ生物学研究所」で、ドイツのビーレフェルト大学の研究者たちが行った観察だった。

 彼らは夜間に鳥類の行動を記録するため、現地にカメラを設置していた。

 ところが、映像には思いがけない光景が映っていた。

 ネコ科の肉食動物であるオセロット(Leopardus pardalis)と、有袋類のオポッサム(Didelphis marsupialis)が、敵対する様子もなく、まるで仲間のように並んで森の小道を歩いていたのだ。

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オセロットとオポッサムが共に行動をしていることを何度か確認

 両者は本来、捕食者と獲物という関係にあり、こういった行動は極めて異例である。研究者たちは驚き、この奇妙なペアがなぜ共に行動していたのかを突き止めるべく、アマゾン各地の研究施設に情報提供を呼びかけた。

 その結果、2019年から2023年の間に、ペルーの異なる地域で同様の「オセロットとオポッサムの共同行動」が少なくとも4件記録されていたことが判明した。

 いずれの事例も異なる個体によるものであり、同じ2匹ではないことも確認されている。

 いずれのケースも、互いに警戒したり攻撃したりする様子は見られず、短時間ながら、敵意のない同行が確認されている。

 2023年9月27日22時50~52分頃に記録された映像では、2匹がオポッサム、オセロットの順番で画面右から左へと並んで歩いていていき、その約2分後、今度は反対方向から再び同じ順番で並んで歩いてきた。

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オポッサムはオセロットの匂いを好む?

この不可解な行動が単なる偶然なのか、それとも何らかの関係性の現れなのか?研究者たちはその謎の解明に向けて本格的な調査を開始した。

 研究者たちは検証のための野外実験を行った。

 ピューマ(アメリカライオン)の匂いと、オセロットの匂いを染み込ませた2枚の布を設置し、それぞれにオポッサムがどのような反応を示すかを観察したのだ。

 その結果、複数のオポッサムがオセロットの匂いのついた布に対して積極的に反応し、体をこすりつけたり、何度も布のもとを訪れたりする行動が見られた。

 一方、ピューマの匂いにはほとんど反応を示さなかったという。

 この実験は、オポッサムが意識的にオセロットの匂いに近づいている可能性を示しており、単なる偶然では説明できない何らかの生態的な意味があることを示唆している。

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なぜ敵が味方に? 協力関係の可能性も

 研究者たちはこの関係性について、いくつかの仮説を立てている。

 ひとつは、オセロットとオポッサムの匂いが混ざることで、どちらか、あるいは両方の匂いを隠す「化学的カモフラージュ」が働いているのではないかというものだ。

 オポッサムは、クサリヘビ科のヘビ毒に耐性がある。そのため、オセロットは、オポッサムと共に行動することで、毒ヘビへの防御力を高め、安全に狩りをしている可能性があるという。

 一方、オポッサムにとっては、オセロットの匂いを身にまとったり、近くにいることで、他の捕食者から身を守る効果があるのかもしれない。

 このように、両者が互いの生存に間接的に貢献し合う協力関係があるのではないかと推測されたが、現時点ではその仕組みは完全には解明されておらず、今後のさらなる研究が待たれている。

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異種間の協力関係

 このような異なる種の動物が利害を一致させて行動を共にする例は、自然界ではきわめて珍しい。

 「協力関係が事実かどうかはまだ分かりませんが、北米におけるコヨーテとアナグマのよく知られた関係の南米版を目撃しているのかもしれません」と、ドイツのビーレフェルト大学生物学部の行動生態学者で、この研究の筆頭著者であるイザベル・ダマス=モレイラ博士は説明する。

 北米では、コヨーテとアナグマが協力して地リスなどの獲物を狩ることがある。コヨーテは地上を、アナグマは穴の中を追い詰めるという分担を行い、それぞれが単独で狩るよりも効率よく獲物を得られるとされている。

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 オセロットとオポッサムの関係も、まだ初期的な観察段階ではあるが、捕食者と獲物という一方向の関係では説明できない、新たな異種間関係の可能性を示している。

 今後、さらなる観察と研究が進めば、アマゾンの奥地に隠された、動物たちの知られざる共存の姿が明らかになっていくかもしれない。

オセロットとオポッサム、それぞれの生態

オセロット

 オセロット(Leopardus pardalis) は、中南米の熱帯雨林やサバンナに広く生息する中型のネコ科動物で、体長は55~100cm、尾の長さは30~45cm、体重は8~18kgほど。

 全身にはヒョウのような美しい斑点模様があり、夜行性で単独行動を好む。主に小型哺乳類、鳥類、爬虫類などを捕食し、木登りにも優れており、地上と樹上の両方で狩りを行う。

 オセロットはネコ科オセロット属に属し、現生では1種のみとされているが、地域ごとの違いにより10種以上の亜種が提案されている。

 毛皮はかつて非常に高値で取引されており、さらに人によく懐くことからペットとしても人気が高かったため、20世紀には乱獲が深刻化した。

 現在では多くの国で保護対象となっており、IUCNのレッドリストでは「軽度懸念(LC)」とされているが、地域によっては絶滅危惧種に指定されている場合もある。

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オポッサム

 一方の オポッサム は、有袋類の一群であるオポッサム亜目(Didelphimorphia)に分類される動物の総称で、南北アメリカにかけて約100種が知られている。

 多くは夜行性で、南米の熱帯林に生息する種は樹上生活に適応している。

 体長は10~50cm、体重は数百gから5kgほどで、雑食性のため果実や昆虫、小型の動物などを幅広く食べる。危険を感じると「死んだふり」をする擬死行動でも知られている。

 今回映像に映っていたのは、南米北部に広く分布するコモンオポッサム(Didelphis marsupialis)だ。

この種は比較的大型で、都市周辺にも出現するなど適応力が高い。IUCNのレッドリストでは「軽度懸念」とされているが、生息地が限定された他の種には絶滅危惧種も含まれる。

 ちなみに、「オポッサム」と「ポッサム」はしばしば混同されるが、実際には別の動物である。

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References: Esajournals.onlinelibrary.wiley.com[https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecs2.70322] / Aktuell.uni-bielefeld.de / Mentalfloss[https://www.mentalfloss.com/animals/ocelot-opossum-friendship-caught-on-video]

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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