太陽が誕生したばかりのころ、その周りには惑星になりきれずに砕け散った天体がいくつもあった。
サハラ砂漠で見つかった隕石を調べたところ、もともとは月ほどの大きさの原始惑星の可能性があることがわかった。
アメリカのコロラド大学ボルダー校の研究チームが岩石の奥に閉じ込められた結晶を分析した結果、小惑星ではこれほどの結晶はできないとわかり、もっと大きな天体だったと結論づけた。
今からおよそ45億年前、太陽のすぐそばに地球の衛星である月サイズの惑星が存在し、ほかの天体とぶつかって砕け散ったことになる。
この研究成果は『Earth and Planetary Science Letters[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0012821X26002128]』誌(2026年4月10日付)に掲載された。
太陽系が生まれたばかりのころの記録
今からおよそ46億年前、太陽が生まれて間もないころ、その周りはガスと塵が渦巻く混沌とした世界だった。
塵は少しずつ集まって小さな塊になり、塊どうしがぶつかって大きくなり、やがて惑星へと育っていった。
ただし、すべての塊が惑星になれたわけではない。
途中で成長を止めたものや、他の天体と衝突して砕けてしまったものも数多くあった。
砕けた天体のかけらの一部は、長い時間を経て隕石として地球に降ってくる。
そうした隕石は、太陽系が誕生した当時の物質をそのまま閉じ込めたタイムカプセルのような存在だ。
アングライト隕石は長らく小惑星のかけらと考えられていた
今回の研究の中心となった「アングライト」と呼ばれる隕石は、もとの天体で一度溶けて固まり直した火成岩で、太陽系で知られている岩石の中でも飛び抜けて古い。
およそ45.5億年前、太陽系ができてからわずか数百万年のうちに結晶化した。
主成分は単斜輝石(クリノピロキシン)で、ほかにカンラン石や灰長石などを含む。
地球で見つかった8万個を超える隕石のうち、アングライトはごくわずかで、最新の報告によると68個しかないという。
アングライトには長らく科学者を悩ませてきた特徴があった。
地球や火星のような岩石でできた惑星には、石英や砂の主成分である二酸化ケイ素がたっぷり含まれている。
ところがアングライトには、二酸化ケイ素がほとんど入っていないのだ。
岩石惑星の材料が乏しいことから、科学者たちはアングライトは、半径200kmにも満たない小さな天体から砕け落ちた小惑星のかけらだと推測していた。
岩石を作る材料が少ないのだから、もとの天体も小さかったはずだという考えである。
小惑星ではない?隕石の中の結晶に高圧力の証拠
ところが、アメリカのコロラド大学ボルダー校のアーロン・ベル氏らがサハラ砂漠で2019年に見つかったアングライト「NWA 12774」を詳しく調べたところ、隕石の主成分である単斜輝石(クリノピロキシン)に、アルミニウムが多く含まれていることが分かった。
単斜輝石は地球の地殻やマントルにもありふれた鉱物だが、NWA 12774のものはアルミニウムが際立って多かった。
鉱物にアルミニウムがどれだけ取り込まれるかは、結晶ができるときの圧力で決まる。
圧力が高いほど、アルミニウムは結晶の中に多く入り込む。NWA 12774の結晶はアルミニウムが豊富だったので、相当な高圧のもとで生まれたと考えられた。
ベル氏らはこの結晶ができるのに必要な圧力を計算で再現した。
すると、少なくとも17.5キロバールという途方もない圧力が必要だとわかった。地球で最も深いマリアナ海溝の底でさえ圧力は約1キロバールなので、その17倍を超える。
小さな小惑星の内部では、これほどの圧力は生まれない。
アルミニウムを多く含む結晶は、もとの天体が小惑星よりはるかに大きかったことを示していた。
隕石は月サイズの原始惑星の一部かもしれない
惑星になる一歩手前まで成長した天体を原始惑星と呼ぶ。
太陽系の初期には、こうした原始惑星があちこちで生まれ、衝突と合体を繰り返しながら今の惑星へと育っていった。
アングライト隕石の結晶ができるのに必要だった圧力は17.5キロバールである。
天体は大きいほど内部が強く押されるので、これほどの圧力を生み出すには、それに見合った大きさが必要になる。
この圧力から試算すると、原始惑星の半径は最低でも1,000kmはあったことになる。アングライト隕石のもとになった天体は、小惑星ではなく原始惑星だった可能性が濃厚になった。
さらに調べていくと、NWA 12774の結晶は、鋭い縁と繊細な化学模様をきれいに保っていた。
地下のごく深いところで生まれていたら、こうした特徴は周囲の熱や圧力で消えてしまう。
模様が残っていたということは、結晶が比較的浅い場所で生まれたことを意味する。
浅い場所で17.5キロバールもの圧力に達するには、半径1,800kmほどの大きさが必要になる。
地球の衛星である月の半径は約1,737kmなので、原始惑星はほぼ月と同じか、それより少し大きい可能性がある。
小惑星のかけらだと思われていた隕石が、月サイズの原始惑星のかけらだったことになる。
地球や火星とはまったく別の道を歩んだ原始惑星
ベル氏は、この原始惑星を作った物質は地球や火星の材料とは根本的に違うと指摘する。
同じ太陽系で生まれながら、この原始惑星は地球や火星とはまったく別の進化の道をたどっていた。
太陽系の初期には、私たちのよく知る惑星とは異なる成り立ちの世界が、いくつも存在していたのだ。
月サイズの原始惑星がどのように最期を迎えたのかは、まだはっきりわかっていない。
有力な見方は、太陽系がまだ荒れていた時代に別の天体と激しく衝突して砕け散り、その破片がのちに地球をはじめとする岩石惑星を作る材料になった、というものだ。
今ある地球の一部にも、失われた原始惑星のかけらが混じっているのかもしれない。
ベル氏によれば、まだ十分に調べられていない隕石が数多く残されているという。
私たちがまだ知らない原始の天体の証拠が、未調査の隕石の中から今後も見つかる見込みは高い。
まとめ
この研究でわかったこと
- サハラ砂漠で見つかった隕石は、月ほどの大きさの惑星になりかけた原始惑星のかけらだった
- 太陽系の初期には、地球や火星とは別の成り立ちの天体が存在した
まだわかっていないこと・今後の課題
- 月サイズの原始惑星が、いつどのように砕け散ったのかはわからない
- 未調査の隕石に、別の原始惑星の証拠があるかもしれない
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References: Rare meteorite provides evidence of giant early planet[https://www.colorado.edu/today/2026/06/01/rare-meteorite-provides-evidence-giant-early-planet] / DOI.10.1016/j.epsl.2026.120029[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0012821X26002128]











