今年4月でデビュー30周年を迎える東京スカパラダイスオーケストラ。それを記念し、彼ら初のトリビュート・アルバム『楽園十三景』が3月13日にリリースされた。
参加ミュージシャンは、かねてから親交の深いACIDMANUNISON SQUARE GARDENをはじめ、大森靖子氣志團のような意外な(でも実は所縁のある)顔ぶれまで、実に多彩。「No Border」をモットーに掲げ、ジャンルを問わず様々な人々とコラボを積み重ねながら、自らの音楽性を押し広げてきたスカパラならではの人脈といえよう。そこで今回KKBOXではアルバムの全曲紹介をお届けする。

SKY-HI / Paradise Has No Border -SKY-HI Remix-

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

アルバム冒頭を飾るのは、AAAに所属しつつラッパーとしてMIYAVIやUTA、tofubeatsら様々なジャンルのアーティストとコラボし続けているSKY-HIこと日高光啓。さかなクンをフィーチャーし、「音楽に境界線はない」というスカパラの理念をそのまま音にしたようなこのメッセージ・ソングを、彼が大胆にリミックスしている。まるでホーン・セクションとバトルを繰り広げているような、ドラマティックなラップが最大の聴きどころといえよう。


04 Limited Sazabys / 銀河と迷路

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

オリジナルは、松嶋菜々子と福山雅治によるドラマ『美女か野獣』の主題歌にも起用されたスカパラ通算23枚目のシングル。NARGOお得意の甘く切ないメロディ、それを朗々と歌い上げる茂木欣一のボーカルが印象的なこの曲を、フォーリミが疾走感溢れるメロコアに料理した。GENの甘い歌声は、この曲との相性も抜群で、HIROKAZとRYU-TAのツイン・ギターによる組んず解れつの絡みとともに、楽曲の新たな一面を引き出している。

10-FEET / DOWN BEAT STOMP

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

シンガロング必至のキャッチーなメロがのっけから飛び出すこの曲は、今もスカパラの代表的なレパートリーとしてライブで演奏されているキラーチューン。挑むのは、97年に京都にて結成されたメロディック・ハードコアの重鎮10-FEET。いきなり倍速でかっ飛ばしたかと思いきや、途中でオーセンティック・スカのアレンジへとなだれ込むなど、縦横無尽の展開にヴェテランの余裕をうかがわせる。
メジャーとマイナーを行き来する構成も、オリジナルにはなかったものだ。

大森靖子 / ちえのわ

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

銀杏BOYZ峯田和伸をフィーチャーした元曲は、“めんどくさいのが愛だろっ?”と、こんがらがった人間関係をそのまま全肯定するような歌詞が最高に泣けた。それを、狂おしいほどエモーショナルなEDMアレンジにして熱唱するのは、これまた“めんどくさい愛”をデビュー以来真摯に歌い続けてきた超歌手の大森靖子だ。実は彼女、高校時代に吹奏楽部でスカパラをカヴァーしたことがあるという。意外な“繋がり”に想いを馳せながら聴いてほしい。

ACIDMAN / 追憶のライラック

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

「追憶のライラック」は、2005年にリリースされた「歌ものシングル3部作」の第1弾。
ゲスト・ヴォーカルにハナレグミこと永積タカシを起用し、オーケストラをバックに演奏された壮大なミドルチューンだ。ACIDMANはこれを、ソリッドなギターとローファイなブレイクビーツによるシンプルなアレンジに。音数を削ぎ落としたぶん、大木伸夫のボーカルが胸にしみる。ちなみに彼らにとってスカパラ(谷中と加藤)は、バンド解散の危機を救った恩人でもあるのだ。

LiSA / サファイアの星

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

どんな歌でもCHARA色に染め上げてしまう彼女にしては、珍しく丁々発止のせめぎ合いを繰り広げたコラボが、スカパラ2006年のシングル「サファイアの星」。沖祐市(キーボード)による洗練されたコード進行とメロディ、軽快なスカビートを包むホーリーなオルガン。
そんなオーガニックなテクスチャーを、バキバキのエレクトロ・ロックへと大胆にアレンジしたのはLiSA。ケレン味の利いた彼女の歌声は、聴けば聴くほどクセになりそう。

UNISON SQUARE GARDEN / 愛があるかい?

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

ユニゾンとスカパラといえば、斎藤宏介(ボーカル&ギター)が参加したスカパラ2017年のシングル「白と黒のモントゥーノ」が記憶に新しい。中南米帰りのスカパラが試みたサルサへのアプローチと、斎藤のハイトーン・ボイスが高次元で融合した意欲作だったが、今回は杉村ルイ在籍時代のシングルをユニゾン全員で瑞々しくカヴァーしている。途中、「白と黒のモントゥーノ」が一瞬コラージュされるのでお聴き逃しなく!

HEY-SMITH / Glorious

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

「Glorious」は、スカパラが2018年にリリースした最新アルバムのタイトル曲。このところ交流の深い横山健やTOSHI-LOWに感銘を受けたのか、シンコペーションを多用したホーンのリフや、高速モータウン・ビートを取り入れるなど「スカパラ流メロディック・パンク」とも言うべきアレンジだった。
メンバーにホーン隊を擁するHEY-SMITHは、これを(エンディングの半音転調以外は)ほぼ忠実にカヴァー。大先輩へのリスペクトがひしひしと伝わってくる。

VIVA LA J-ROCK ANTHEMS feat.TERU(GLAY)/ 美しく燃える森

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

2001年の「歌ものシングル3部作」で、奥田民生をフィーチャーした「美しく燃える森」。古き良き歌謡メロディを得意とする川上つよしの真骨頂。色気とダンディズムが交差するこの名曲を、亀田誠治、ピエール中野(凛として時雨)、津野米咲(赤い公園)、そしてスカパラの加藤隆志(ギター)というオールスターズが、TERU(GLAY)をボーカルにフィーチャー。ストリングスを従え、情感たっぷりにカヴァーした。


BiSH / カナリヤ鳴く空

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

チバユウスケがしゃがれた声でシャウトする、ジャジーでハードボイルドな「カナリヤ鳴く空」。迎え撃つは、「楽器を持たないパンクバンド」の異名を持つ6人組アイドルグループBiSHだ。歪みまくったドラムと転がりまくるピアノ、エッジの効いたディストーション・ギターが鉄壁のグルーヴを構築。その上で、悪女感たっぷりに熱唱するセントチヒロ・チッチのボーカルが最高にパンク!

氣志團 / 砂の丘~Shadow on the Hill~

いよいよ本作もラストスパートへ。2018年度より千葉ロッテマリーンズの「チャンステーマ」として使用されているこのインスト曲をカヴァーするのは、なんと木更津出身の氣志團。元々彼らがインスト・バンドだったことはあまり知られてないが、ここでは西園寺瞳星グランマニエ、そして綾小路翔というトリプル・ギターが唸りを上げている。普段はダンサー&スクリーム担当の早乙女光が、ドライヴ感たっぷりのハーモニカを披露するなどレアなアンサンブルだ。

キュウソネコカミ / メモリー・バンド

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

2018年に「This Challenger」とのダブルA面でリリースされた「メモリー・バンド」は、切なくも美しいメロディが「銀河と迷路」の再来などと言われ、スカパラ・ファンの間でも評価の高い名曲。これを兵庫出身の5人組ロックバンド、キュウソネコカミが正攻法でカヴァーしている。原曲の口笛や、ホーン・セクションをシンセに置き換え、ソリッドなギターをかき鳴らしながら歌うストレートなアレンジ。彼らの、音楽に対する真摯な姿勢が伝わってきて胸熱だ。

フジファブリック / 戦場に捧げるメロディー

出典元:YouTube(TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA OFFICIAL)

ラストを飾るのは、スカパラ通算18枚目のシングルのカヴァー。美しく雄大なメロディを持つこの曲にチャレンジしたのは、来年結成20周年を迎えるフジファブリックである。静謐と喧騒を行き来しながら“今、この瞬間”を照らし出すアレンジが感動的。スカパラもフジファブリックも、メンバーとの死別を乗り越え今も走り続けているバンドであり、この曲がいつリリースされたのかを知れば、フジファブリックがカヴァーした意味も見えてくるだろう。

以上、本作収録曲を駆け足で紹介してきた。どのアーティストもスカパラの魅力を存分に引き出し「それぞれの楽園」を作り上げており、そこに「境界線」など存在しないことを証明してみせている(Paradise Has No Border!)。ここからまた新たなコラボも生まれるかも……? そんなことを期待しながらさらに聴き込みたいアルバムだ。

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(KKBOXライター:黒田 隆憲)