アルバム『LOVE』は、『PLAY』に続いて様々なアーティストが楽曲を提供し、菅田将暉自身が作詞や作曲を手掛けるナンバーも収録した一枚。歌手として、アーティストとしての彼の魅力が詰まった充実作だ。
その内容を一曲ずつ解説していこう。
まちがいさがし
出典元:Sony Music(Japan)
アルバムのオープニングを飾るのは、米津玄師が菅田将暉のために提供し、作詞・作曲・プロデュースを行った一曲。米津玄師のアルバム『BOOTLEG』に収録された「灰色と青(+菅田将暉)」で共演が実現して以来、互いに「何かやりたいね」と話していたことから、このコラボレーションが実現した。
クローバー
前作でも「さよならエレジー」を書き下ろした石崎ひゅーいによる一曲。雑誌の対談をきっかけに意気投合し、一昨年には共に時間を過ごす中で10曲以上を作り上げたという彼だが、この曲は初めて一緒にスタジオに入ったときに、石崎が最初に聴かせた一曲だという。フォークロックをベースにしたミドルテンポの曲調で「僕はね君がいる ただそれだけでいい」とピュアな愛情を歌い上げる。アルバムの初回限定盤には同曲をモチーフに菅田自身が初めて監督を手掛けた47分のショートフィルム『クローバー』も収録されている。
ロングホープ・フィリア
出典元:Sony Music(Japan)
アニメ映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』主題歌、そしてアニメ『僕のヒーローアカデミア』エンディングテーマとして書き下ろされた一曲。
7.1oz
作曲は柴田隆浩(忘れらんねえよ)、作詞は菅田将暉と柴田隆浩の共作というクレジットとなっているこの曲。前作に収録された『ピンクのアフロにカザールかけて』と同じく、歌詞の原型になる文章が菅田から柴田に送られ、それをもとにインスピレーションを膨らませて曲が生まれていったのだという。
ドラス
菅田将暉が作詞作曲を手掛けた、本作の中でも最も疾走感に満ちた一曲。『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』の撮影中に書かれたらしく、もともとは「ドラマのブルース」を短縮したことから仮タイトルとしてつけられた曲名とのこと。「勘違いしないでくれこのドラマに最終回なんてものは多分ないんだ」という歌い出しから、畳み掛けるように言葉を連ねていく。俳優・菅田将暉の心の叫びがそのまま音楽になったようなパンクナンバーだ。
つもる話
菅田将暉が作詞作曲を手掛けた冬のラブソング。カントリーにも通じるオーガニックなバンドサウンドが聴き所だ。映画『何者』の中で菅田将暉とバンド演奏のシーンで共演した元・カラスは真っ白のメンバーたちが、前作『PLAY』も、その後のライブも、そして今作の制作でもバンドメンバーとして菅田をサポートしている。息の合った歌と演奏からも、かけがえのない仲間になっていることが伺える。
キスだけで feat. あいみょん
出典元:Sony Music(Japan)
あいみょんが書き下ろした一曲。
りびんぐでっど
映画『溺れるナイフ』の撮影をきっかけに出会ったという、志磨遼平(ドレスコーズ)が作詞作曲を手掛けた一曲。
TONE BENDER LOVE
菅田将暉が作詞・作曲を手掛けたロックンロール・ナンバー。縦ノリのビート、手拍子を盛り込んだアレンジ、バンドメンバーとの掛け合いのコーラスなど、ライヴで盛り上がる光景が思い浮かびそうな一曲だ。「街中から鳴るLOVE」というフレーズもあり、アルバムタイトルの『LOVE』もここからとられているのかもしれない。
あいつとその子
「こんな日に限って 素直な言葉が 出てきません」「あなたに出会えて 愛について一度考えました」と、あふれる思いを率直に綴ったストレートなラブソング。作詞・作曲は菅田将暉。フジファブリックの「茜色の夕日」をきっかけに音楽にのめり込んだという彼らしい、ミドルテンポでメロディアスな一曲になっている。アルバムにはバラエティ豊かな楽曲の数々が収録されているが、彼にとっての“ど真ん中”はこうした曲調にあるのかもしれない。
ベイビィ
アルバムのラストを飾るのは、人肌のあたたかさを感じさせるアコースティック・ギターの弾き語り「ベイビィ」。作詞を菅田将暉が、作曲をショートフィルム『クローバー』にも出演した同世代の俳優・永嶋柊吾が手掛けている。永嶋柊吾はミュージシャンとしての活動を行っているわけではないが、プライベートで共にスタジオに入ったこともあり、菅田とは音楽仲間なのだろう。他の曲に比べると音程にも若干揺らぎが見られるが、そういうところや、最後の二人の語らいも含めて、パーソナルで親密な空気感がアルバム一枚を締めくくっている。
(KKBOXライター:柴那典)