最もカッコよく、超難解な本の主張「死に至る病とは絶望のことである」

最もカッコよく、超難解な本の主張「死に至る病とは絶望のことである」

『死に至る病』(著:セーレン・キェルケゴール 訳:鈴木 祐丞)

19世紀デンマークの哲学者の代表作の翻訳である。たいへんに難しい本である。

わが国の思想家・三木清の『人生論ノート』は難解をもって知られているが、あの本が難しいのには理由がある。あれは「あえて難しく書いた」本なのだ。

『人生論ノート』は1938年から1941年まで断続的に発表されている。自由にモノが言えない時代であった。三木は「難しすぎてわからないように」書くことによって、同時代の政治、状況、人々の生活などへの批判や提言を表現したのだ。(にもかかわらず、三木は1945年に投獄され、獄中死した)

キェルケゴールには三木のようなのっぴきならない理由があったわけではない。この本が難解である要因のひとつは、「難しいことを言おうとしているので、難しく語らざるを得ない」ということである。

引用しよう。

絶望とは、それ自身に関係する総合の関係における不協和である。しかし、総合それ自体が不協和ということではなく、総合はその可能性であるにすぎない。言い換えれば、総合のうちに不協和の可能性が潜んでいるということだ。

何を言ってるか正確に理解できる人はすくないだろう。わざとわかりにくいところを抜き出したのではない。本書は基本的に、全編この調子なのである。

だがこれは、キェルケゴールの誠実さのあらわれなのだ。

一見やさしくわかりやすく思える記述は、書き手が読み手をあなどっていることから生まれる。このぐらいわかりやすく表現すればわかるでしょ──要するに読者をバカにしてるわけだ。


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