『イノベーターズ1 天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史』(著:ウォルター・アイザックソン 訳:井口 耕二)
◎求められていた「コンピュータの歴史」
本書は、詩人バイロンの娘エイダ・ラブレスを起点とし、約200年弱のコンピュータの歴史を時代を追ってたどったものです。「イノベーターズⅠ」と「イノベーターズⅡ」の上下2冊、あわせて900ページにおよぶ大著ですが、この分量は決して多くはありません。後述の理由によって、本書こそ「求められていた本」だと言えるからです。
著者はベストセラーになった評伝『スティーブ・ジョブズ』のウォルター・アイザックソン。わたしたちの多くはまさにこの本によってアイザックソンを知ったわけですが、当人は『イノベーターズ』こそライフワークであり、『スティーブ・ジョブズ』はその副産物という認識を持っているようです。
◎ジャーナリスト、ウォルター・アイザックソン
「おっ、著者はアイザックソンか、期待できるな」
本書のリリースを知ったとき、そう思ったのを覚えています。
彼がヨイショ記事に終始しない、優れた書き手であることを知っていたからです。
『スティーブ・ジョブズ』を通読した方ならおわかりでしょう。あの本を読んだ後で、ジョブズを偉人と呼ぶのは勇気がいります。あれは、断じてジョブズを絶賛した本ではありません。
たとえば、ジョブズは若くして子を設けていますが、長いこと認知しませんでした。母親に当たる女性とは同棲していたし、DNA鑑定の結果、まちがいなくジョブズの子と証明されているのに、認めようとはしませんでした。
子の立場になって考えてみてください。ゲスの所業だと思いませんか? 『スティーブ・ジョブズ』は、こういう人でなしなエピソードが次々に出てくる本です。