このFSWツールは、高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物(Co3(Al,W))を分散したCo基合金をツールの材料として用いることで、従来のセラミック系FSWツールと比べ、高い耐久性と耐磨耗性を実現したもの。
高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物は、2006年に東北大工学研究科金属フロンティア工学専攻石田研究室が発見している。
今回開発したFSWツールは、融点が高く接合の難しい鉄やチタン合金、ジルコニウム合金などの接合も可能であることから、電力プラントや化学プラント、自動車などの産業分野への応用展開が期待できるという。
この接合方法は、従来のアーク溶接などとは異なり、材料を溶かさずに接合でき接合後の変形も小さく、かつ接合欠陥が小さいため、製品の高品質化と低コスト化を実現でき、また粉塵などの発生もなく、環境にも優しい接合法だ。
日立は、1997年にアルミニウム製鉄道車両の製造で、世界で初めて摩擦攪拌接合を実用化し、その後、二輪用ブレーキ部品などにも応用展開している。
こうした背景から、今回の新しい金属製FSWツール開発に至ったという。
1.耐摩耗性に優れたCo基合金の高温強度を改善する技術
金属間化合物(Co3(Al,W))をCo基合金に分散させ、分散量、粒径、結晶粒界の形状などを制御することで、高温でも高い耐摩耗性と強度を向上している。また、開発したツールは靭性が高く、工具の欠損に対する耐久性も向上している。
2.鋳造性に優れる生産技術
金属製FSWツールの耐久性を向上させるとともに、ロストワックス法での製造が可能なため、素材費と切削加工費を低減することができる。さらにツール素材として高価で強度のあるレニウムなどを使用していないことから、接合コストに優れる。