名作『ひぐらしのなく頃に』のリバイバルと思わせて、第2話からファンに大きなサプライズを仕掛けて新たに展開する『ひぐらしのなく頃に 業』。第2話からのオープニングテーマ「I believe what you said」を歌う亜咲花にインタビューを敢行。
彼女自身、原作の大ファンでリスペクトして臨んだ本作。また彼女にとっては手術からの復帰第一弾として、収録曲ごとに歴史が刻まれた形になった最新シングルについて、初のオンラインワンマンライブへの意気込みとともに話を聞いた。

【動画】亜咲花「I believe what you said」Music Video(TVアニメ「ひぐらしのなく頃に 業」オープニングテーマ)


ファンが「ひぐらし」らしさを感じられることを最優先に歌う
――ニューシングル「I believe what you said」は、亜咲花さんの21歳のお誕生日直後のタイミングにリリースされます。亜咲花さんは20歳の年にやりたかったこともたくさんあったかと思いますが、世界的に危機的状況になってしまって、特にお好きなライブが開催できないなど、想像されていたものとはおそらく違った状況になってしまいました。この1年間をどんな想いで過ごされましたか?

亜咲花 20歳の1年はとにかくライブをして、CDを出して亜咲花という名前を広めたいなと思っていたので、本音を言うならばちょっと悔しく、もどかしい気持ちは未だにあります。ただ、ライブでファンの皆様を危険な目に晒すわけにはいきませんので、慎重に動く必要がありました。そんな状況でも新たに「ファミ通LIVE」さんでゲーム番組のMCを担当させていただくといった、趣味が仕事に繋がったこともあり、この1年は残念なことばかりではなかったと思っています。

――この状況下でもプラスになる新たな活動が。

亜咲花 はい。私はスーパーポジティブガールなので、ちょっとお休みをいただいたり自分を見つめ直す機会だったと捉えています。それと関連して、4月には喉のポリープの手術を行いました。その前は喉の使い方に問題があるのかなと自分を責めることが多かったのですが、ポリープだと分かったことで気持ちが楽になりました。
治療すれば治るものだと分かったので。

――術後の調子はいかがですか?

亜咲花 若返った気がします(笑)。地声も高くなりましたし、以前はライブでキツかった高音も、今はこんなに歌いやすいんだと感じました。低音はまだちょっと時間がかかりそうですが、プラスになることのほうが多かったです。

――さて今回の新曲「I believe what you said」は、突然の新たな展開の発表にご覧になっていた方も驚かれたと思います。ご自身では今回、主題歌を担当することについてはどのように受け止めましたか?

亜咲花 私はホラー作品が大好きで、もちろん『ひぐらしのなく頃に』も大好きな作品でした。デビュー前から観ていた作品に関われたのは、これまでアニソンを歌ってきたなかで初めてだったのでとても嬉しかったです。家族もすごく好きな作品で、その意味でも嬉しかったです。

――亜咲花さんから見た『ひぐらし』シリーズの魅力は?

亜咲花 見れば見るほど目が離せなくなっていく中毒性がある作品だなと思います。最初はとにかく謎をばらまいて、「どうなるの?」と引っ張っていったあとに、「解決編」を見たときの爽快感がスゴいんです。謎の回収をここまで丁寧に描く作品はあまりないのではと思います。スリラー好きとしてツボの恐怖の流行病などもあり、サスペンスが好きな方にもとても楽しめる作品だと思いますし、ゲームや漫画など様々な展開をされているので、今回の放送をきっかけに新たな「ひぐらし」のファンが増えるといいなと思っています。


――今回のシリーズは第1話で前作のリメイクと思わせて、この主題歌が流れる第2話から新しい展開が少しずつ始まるとのことですが、亜咲花さんは内容をご存知ですか?

亜咲花 敢えて詳細はあまり聞いておりません。せっかくならみんなと同じ目線で楽しみたいと思っているので、私も同じ気持ちで臨みました。ゲームは以前からプレイしていたので、今回の詳しいストーリーは知らなくても世界観は肌で感じて、シリーズ全体を総括するつもりで臨みました。

――曲へのアプローチはどのように?

亜咲花 作品のファンの方が純粋に「ひぐらし」っぽい曲だなと思ってもらえることを最優先にしてアプローチしていきました。ここで私が自分の歌いたいように歌う、たとえば全部英語とかだったら、それは「ひぐらし」の世界観ではないわけです。自分の気持ち良い歌い方を押し殺して歌った感じですね。ジメっと、キメキメで歌う感じ。それがちょっとでも崩れてしまうと亜咲花節が出てきてしまうので、とにかく笑みを殺して、戦いに行くぞ、生き残るぞという強い感情を持ちながら歌いました。

――志倉千代丸さんによる歌詞と曲はどのように受け取りましたか?

亜咲花 志倉さんの曲はいつも本当の正解が分からないままで、今こうして話してる間も分からないんですよ。この曲に限らず、志倉さんの曲は歌詞とメロだけをいただいて、あとは自分で解釈しなさいというスタイルなので、アーティストとしての解釈の仕方とかを試されている感じです。なので、とにかくひたすら歌詞を読んで意図を解釈する必要があるので、時間がものすごくかかりました。そのぶん、レコーディングは自分の中で決めた状態で挑むのでスムーズでした。


――その歌詞の読み取りはどのように?

亜咲花 本当に難しくて。これは感情移入する歌ではないと思うんです。私が歌わせていただいた志倉さんの曲すべてに対して言えるのですが、曲の個性が強いからこそ、私が感情を込めてしまうと曲がうるさくなってしまうんですよね。そうすると聴く人は一度で、もうお腹いっぱいの状態になって二度目がなくなってしまう。そうはなってほしくないので、自分の要素を”引き算”していくようにしました。なので、あまり深く考え込まない方がうまくレコーディングできるんです。「この世の果てで恋を唄う少女」(『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』オープニングテーマ)のような、”無”を意識して今回もレコーディングしています。

――その”引き算”をご自身で身につけたのはいつ頃から?

亜咲花 デビュー曲が志倉さんの作曲だったので、もうそのときからですね。レコーディングでは「もっと被害者意識を出せ」とか、「演技をしろ」とか、厳しく鍛えられました。自分の個性の出し方とかアニソンの歌い方がわからなかったので、そこで指導していただいて、「YU-NO」くらいから自分で消化できるようになった感じですね。だからこそ、今は解釈を任せてもらえているのかなと思っています。あの曲がなかったら、もう少しパワフルに歌っていたかもしれませんね。


――そうしたステップの踏ませ方もアーティストプロデュースなんですね。

亜咲花 これで志倉さんの曲は6曲目。歌っていく回数が増えていくにつれて、向き合い方が分かってきた感じですね。あと、今回のレコーディングではデモの段階からキーを3つ下げていただきました。その方が私の声の特徴も出せるし、「ひぐらし」っぽいと納得できる曲にしたかったので。

――その3つ下げはインスピレーション?

亜咲花 そうですね。これは手術前にレコーディングをしたので、ハスキーでちょっと低音が効いている声の状態で、それを生かすにはやっぱりそのキーだなとピンと来たんです。スマホのアプリでキーを変えられる機能があるので、CDのインスト音源で試していただくと、私の感覚が伝わるかなと思います。

――ミュージックビデオは廃工場でのロケだったとか。

亜咲花 はい。廃墟に行くのが初めてで、ホラー好きとしてはワクワクでした(笑)。窓の割れ方とか落書きとか、もうガチですからDVDのメイキング映像もぜひ見ていただきたいです。


――被写体としてはどんなところ意識されましたか?

亜咲花 白と黒の衣装を着た2人の亜咲花がいるのですが、別の世界線にいるかのように使い分ける必要がありました。白は儚い感じでリップや表情も作っていて、黒では表情がすごく強張っているというか、怒っているのに近くて、その2人が対面して目を合わせて歌うシーンがあるので、表情の違いを見ていただきたいなと思います。衣装の形は同じなのですが、雰囲気やアクセサリーは違っているので、そこにも注目していただければと思います。

2つの“別れ”のパターンを歌ったカップリング曲
――カップリングの「SCREEEAM!!!」はこれまでも亜咲花さんの曲を担当されたYockeさんによるものですが、これはどのようにお願いをされましたか?

亜咲花 「I believe what you said」は色が強い曲だと思うので、それに負けない曲がほしくてゴリゴリのハードロックでとお願いをしました。その前に悩んだのが作詞の方向性でした。私は作詞をするときに、自分の妄想を描くか、周りの出来事について描くといった形にすることが多いのですが、ちょうど私の知り合いで、恋人と別れてしまった方がいてとても落ち込んでいたので、この人を励ます曲を作りたいなと思ったんです。恋愛に限らず、別れから立ち直ってもいいんだよと、背中を後押しするような力強い歌詞に仕上がっています。もちろんその方だけではなく、迷っている人たちの支えになることができる歌にできたと思います。人って弱くなってしまうと、浸っていっちゃうと思うんですよね。だから底に沈んでしまった人を助けるには、ちょっと肯定してあげつつも、「ちゃんとしなさいよ」って喝を入れて、「こんなことをしている場合じゃない。もっと強く生きなきゃ」と目覚めさせることができたらいいなと思って書きました。サビでは“答えは自分自信だよ”とあるのですが、これは誤変換ではなく、答えは自分の「自信」だよという意味です。
その後の“泣いても One More Chance ア・ゲ・ナ・イ!”は、その子に対する喝と、別れた相手からの視点での言葉が交互に入り混じった、恋愛ドラマのように描けたので自分でも満足しています。

――歌入れはどうでしたか?

亜咲花 最高に気持ちよかったです! これだけ歌詞にメッセージ性がある歌においては感情100%で歌うくらいがちょうど良いので、闘争心MAXで臨みました。アニソンではなかなか使わない巻き舌を使ったりシャウトしたりと好き放題に歌わせていただいています。この曲を通して、誰かを励ますことの喜びを感じました。今度は私が夢を追いかけてきた人間なので、同じように夢を追っている立場の子に向けて励ましや後押しの曲が書けたらなと思います。

――もう1つのカップリング曲は「Last Friday Night」。これはどんなテーマで臨みましたか?

亜咲花 曲のオーダーとしては今、YouTubeで全編イラストのミュージックビデオが流行っていて、そういったものにインスパイアされて、サブカル色がある物語調のものをベースに、いつかできるようになるライブで盛り上がれる曲をと、みんなで歌えるところを追加していただきました。

――こちらも亜咲花さんが歌詞を書かれていますね。

亜咲花 歌詞のテーマとしては新しい生活が始まる女の子のお話。それは引越しとかではなく、お別れしたから。「SCREEEAM!!!」ではふっきれなかったけれども、この曲はふっきれた女の子を描いています。金曜日の夜に別れて、傷心していたなか友達と飲んで騒いで「やっぱ女子が最高だよね~」と言っていた状況があります。女の子っておしゃべりが好きで、みんなで意見を出し合って、この恋愛乗り切れるわと思っていたけれども、いざ友達が帰ってしばらくすると、「やっぱ寂しい」と素に戻ってしまう。ラスサビで月曜日の夜になって、好きな気持ちと別れている現実とのギャップに混乱して、現実なのか夢なのかわからない、ごちゃごちゃに入り混じって、いったん区切りを付けるという意味で“こんな私を愛してくれてどうもありがとう!”となります。最終的に彼女がふっきれることができたのかどうかは、聴いた方に解釈してほしいなと思います。

――女子同士の会話を歌詞として展開する上での工夫はどんなところに?

亜咲花 曲はいわゆるサブカル系なんですけれども、歌詞は自分の好きなジャンルを参考にしてみようと思って、それがハロプロ (ハロー!プロジェクト)なんです。私自身がすごくファンで、今まで聴いてきたのも女子が共感できる歌詞ばかりで、この歌詞でもそういったテイストを採り入れました。そのインスピレーションもあって、歌詞はそっちに寄せてみようかなと思って作詞をしました。一つまた引き出しができた作詞になったと思います。

――レコーディングの時もそういうニュアンスで?

亜咲花 はい。せっかくの新しい試みなので、レコーディングでは亜咲花を残しつつも、頭の中ではハロプロさんをイメージしつつ歌いました。毎回何かしらで新しい顔を引き出してもらっているなと思っています。これは手術をした後の、初めての曲になっているので、シングルを通して聴くと声が若返ってるように聴こえるかもしれません。それも私が歩んできたアーティスト人生の記録だと思っているのでそこは正々堂々と今の自分の歌い方、喉はこうですよという記録として収めることができたと思っています。手術後なかなか自分らしい歌を歌うことが出来ずに悩んだ日々もありましたが、日が経つについてどんどん自分らしさを取り戻せているので、今この歌を歌うとまた音源とはちょっと違った感じになるのではないかと思います。

――11月20日にはオンラインライブが開催されるそうですね。

亜咲花 オンラインでのワンマンは初めてなんですよ。結構周りのアーティストさんがオンラインライブをやっていたので、羨ましいなと思っていました。私も喉を思ったようにコントロールできるようになってきたので、活動5年目をファンの方に向けて、自分の言葉で感謝の気持ちを届けられたらいいなということで、このタイミングで開催させていただきます。

――お客さんからの熱を受けてどんどんライブ中にヒートアップしていく亜咲花さんだからこそ、オンラインライブに向かうにあたっての気持ちの持っていき方を模索して行く必要がありそうですね。

亜咲花 そうですね。私は人に見られることによって力を発揮するタイプなので(笑)。でも、やっぱりこういう時でも100%の歌を届けられるのがプロのアーティストだと思うので、言い訳せずいつも通りのモチベーションやコンディションで届けられるように頑張りたいと思います。セットリストも今、絶賛考えているんですけれども、亜咲花のファンの方が聴いてくれるものだと思うので、きっとマイナーな曲も喜んでくれるのではないかなと。ポリープがあったときは歌えなかった曲も今は歌えるようになっているので、このところ寝かせていた曲も引っ張り上げて、今まで応援してくれたことへの応援も含め、普段のライブではちょっと歌わなかったような曲でもスポットを当てて披露することができたらと思っています!

INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉



●リリース情報
TVアニメ「ひぐらしのなく頃に 業」OPテーマ

「I believe what you said」
亜咲花

10月14日発売

※初回封入特典(DVD付盤、アニメ盤共通)》
亜咲花オリジナル生写真(プリントサイン入り)
※全5種類のうち1枚をランダム封入

【DVD付盤(CD+DVD)】

品番:USSW-0270
価格:¥2,200+税

※初回生産分限定ランダム封入:亜咲花直筆サイン入りCD(盤面に本人サイン)
※亜咲花撮り下ろしジャケット

【アニメ盤(CD)】

品番:USSW-0271
価格:¥1,600+税
※TVアニメ「ひぐらしのなく頃に 業」キャラクターデザインを手がける渡辺明夫による描き下ろしジャケット

<CD>
1. I believe what you said(TVアニメ『ひぐらしのなく頃に 業』OPテーマ)
作詞・作曲:志倉千代丸 編曲:悠木真一
2. SCREEEAM!!! [作詞:亜咲花 作曲/編曲:Yocke]
3. Last Friday Night[作詞:亜咲花 作曲/編曲:Johnny.k]
4, I believe what you said -off vocal-
5. SCREEEAM!!! -off vocal-
6. Last Friday Night -off vocal-

<DVD>
「I believe what you said」Music Video、メイキング

●作品情報
TVアニメ『ひぐらしのなく頃に 業』

TOKYO MX:毎週木曜23:30~
BS11:毎週木曜23:30~
サンテレビ:毎週木曜24:30~
AT-X:毎週金曜24:00~
リピート放送:毎週(日)26:30/毎週(月)16:00/毎週(木)8:00

【スタッフ】
原作:竜騎士07/07th Expansion
監督:川口敬一郎
シリーズ構成:ハヤシナオキ
キャラクターデザイン:渡辺明夫
音楽:川井憲次
プロデュース:インフィニット
アニメーション制作:パッショーネ
製作著作:ひぐらしのなく頃に製作委員会

【キャスト】
前原圭一:保志総一朗
竜宮 レナ:中原麻衣
園崎魅音:ゆきのさつき
北条沙都子:かないみか
古手梨花:田村ゆかり

(C)2020竜騎士07/ひぐらしのなく頃に製作委員会


関連リンク
亜咲花オフィシャルサイトTVアニメ『ひぐらしのなく頃に 業』公式サイト
編集部おすすめ