アイドルマスター シャイニーカラーズ」のオンライン配信イベント“THE IDOLM@STER SHINY COLORS 283フェス 2021 Happy Buffet!”が、2021年10月23日~24日に開催された。今回は24日のDAY2をレポートする。


DAY2には放課後クライマックスガールズより小宮果穂役の河野ひより、園田智代子役の白石晴香、西城樹里役の永井真里子、有栖川夏葉役の涼本あきほ、ストレイライトより芹沢あさひ役の田中有紀、黛冬優子役の幸村恵理、和泉愛依役の北原沙弥香、ノクチルより浅倉透役の和久井優、樋口円香役の土屋李央、市川雛菜役の岡咲美保、福丸小糸役の田嶌紗蘭、シーズより七草にちか役の紫月杏朱彩、緋田美琴役の山根 綺が出演した。

今回の配信イベントにはミュージックSTAGE、バラエティSTAGE、トークSTAGE、フリーSTAGEの4つのチャンネルが存在し、同時進行でさまざまなプログラムを配信するフェス的な内容。本稿ではライブを行なうミュージックSTAGEを中心に、他ステージの内容も抜粋して紹介していく。

フェスのオープニングを飾るライブステージは、ノクチルとストレイライトによる「シャイノグラフィ」からスタート。照明を落としたスタジオでポーズを取る7人のシルエットがロゴマークのように絵となる。白と淡い水色をベースにした衣装のノクチルと目にも鮮やかな和のテイストの衣装のストレイライトは色合いのコントラストも強く、“透明から鮮明に”のイメージだ。
ふたつのユニットが互い違いにフォーメーションを取るとパレットに鮮やかに色が混ざったようになる。ユニットパフォーマンスとの落差という意味では、ストレイライトの柔らかく明るい表情と表現は新鮮だ。“Gradation days”のフレーズの合唱で北原沙弥香の歌声の高音の成分が飛び出してくるように感じられて、全体の歌声に立体感を与えていた。作品2年目以降の新世代のユニットの共演となったが、田中有紀と和久井優のセンターふたりが並び立つ姿にはオーラを感じる。

「Ambitious Eve」は放課後クライマックスガールズとシーズが披露。この組み合わせでの披露は初めてな上に、人数的には放課後クライマックスの成分が増える組み合わせ。
この曲の歌い出しで河野ひよりと白石晴香のふたりが歌声を重ねるのはとても新鮮な響きだ。シーズはデビュー前にリリースされた「Ambitious Eve」に参加。攻めの曲調はふたりによく合っていて、ダンスのキレやニュアンスにシーズらしさを感じた。山根綺は放課後クライマックスガールズと初めて一緒にパフォーマンスできる喜びを「感無量です」と表現していた。

永井真里子はソロのトップバッターとして「過純性ブリーチ」を披露。イントロで腕を組んだキリッとした表情から、鮮やかなハイキックを一閃! 全身で躍動するようなステージングが印象的で、後ろを向いてずばっと振り返る時の笑顔がとても鮮やかだ。
身体を大きく使ったダイナミックなダンスと眩しい笑顔、動きのひとつひとつに表現力を感じる。「はい!はい!」と観客を煽るテンションが振り切れているようで、カメラの向こうに届けという気合だ。落ちサビでは拳を突き上げ、軽く目を閉じて歌声にしっかりと想いと意志を込める姿が印象的だった。

トークSTAGEで永井は「過純性ブリーチ」について、爽快感と駆け抜ける感じが特徴と表現。配信というライブ形態を意識した振付を取り入れたとのことだ。ライブのポイントとしては、「歌詞に樹里の魅力がぎゅぎゅぎゅっと詰まっていると思っていたので、盛り上がるだけじゃなくて歌詞を届けたいと思って歌いました」と語り、歌詞の素晴らしさを噛みしめていた。


田中有紀は「星をめざして」を披露。田中はカメラに背を向けてスタンバイ。イントロのリズムに合わせて背景がカラフルに色を変える。笑顔がこぼれるパフォーマンスからは、柔らかい表現と新しい冒険に旅立つような前向きなワクワク感が感じられる。“気になること ほっとけない性格で”のフレーズでカメラに大きく寄っていく時の楽しそうな表情があさひらしい。落ちサビの浮遊感のある歌い上げを受けて、スクリーンにはカラフルな星が流れた。


トークSTAGEで田中は「星をめざして」について、初披露の時は後半トロッコに乗ったので、フルでステージで踊るのは初めてだったことに言及。ダンスについては「ふわふわした振付が増えていて、練習でも力を入れました。今までは指差しはパキパキしていたので、ふわふわした動きとの緩急を意識しました」と表現していた。フルで踊りながら歌いきれるように、筋トレも頑張ったとのことだ。

涼本あきほは「Damascus Cocktail」を披露。イントロはカメラに背を向けて、サウンドに合わせてのキメを交えたダンスを披露。
リズミカルなステップワークだったり、ダンスでも魅せる意志を感じる。背景のスクリーンには緑色の清涼な背景が映し出され、カクテルグラスに飛び込んだような不思議な世界を作り出した。間奏ではゆったりつややかな表現力重視のダンスを多彩なアングルと演出で見せていった。ラストの“見せてあげるわ”のフレーズでのさりげないウィンクも印象的だった。

トークSTAGEで涼本は「すっごくドキドキした!」とステージを振り返ると、最初のブロックで先陣を切る意識や、初の配信オンリーライブで画面越しに届け! という想いだったことを語った。“一秒前の自分に勝っていたいの”という歌詞にふれて、前回のパフォーマンスを超えられるように頑張ったことを明かしていた。

田嶌紗蘭は「わたしの主人公はわたしだから!」を披露。「Go!Go!」と視聴者を煽ると、「ジャンプ!ジャンプ!」で両足をそろえてぴょんぴょん! とサイドに跳ねる動きが楽しい。ファンシーな背景とキュートに振り切った歌声のマッチングがいい。合いの手もかわいく、小糸成分100%な感じだ。カメラに向けて「プロデューサーさん!」と呼びかけてコールや動きを求める流れからは、配信ライブでも一体感を大事にしている姿勢が感じられた。“頑張ろう!”からの畳みかけの力強さと安定感がより増していて、頼もしく背中を押してくれる応援歌に仕上がっていた

トークSTAGEで田嶌はまたソロが歌えることになってびっくりしたことを明かすと、「私の中では目の前にステージがあって、同じ空気を感じるような熱量をお届けできればいいなと思っていました」と、配信ライブならではのカメラの活かし方を考えたことを語っていた。歌詞の前向きさで、聴く人が明日も頑張ろうと思ってほしいとのことだった。以前のライブからの成長のポイントには、ライブ前に余裕をもって呼吸ができるようになったことを挙げていた。

河野ひよりは「ハナマルバッジ」を披露。イントロは膝で大きくリズムを取りながら、楽しそうな頭上クラップと弾ける笑顔でパフォーマンスへの期待を高めていく。日常の様々なことに対する発見と感情の振れ幅が瑞々しく表現されていて、見下ろす足元に大きな水たまりの水面が見えてくるような表現力に驚かされる。間奏の後ろを向いてのダンスや、振り返りながらの笑顔のクラップもとてもキュート。明るくハッピーなニュアンスはそのままに、落ちサビにかけての伸びやかで張りのある歌声ではなぜか泣きたくなるようなエモーションを感じる。エネルギーとあふれる感情表現がアウトロまで詰め込まれていて、まさにはなまるのパフォーマンスだった。

トークSTAGEで河野はちょっと緊張した様子。ライブでも初めて果穂としてステージに立った時の緊張感を思い出したが、イントロでこの曲は果穂ちゃんだと思って歌えたとのこと。ダンスの先生に「殻が一個破れたね」と言われたことを明かすと、「(ステージの自分が)果穂ちゃんだと思ってもらいたいと考えすぎて萎縮している部分があったのが、私でも果穂ちゃんをやれるなと思って、小学六年生のスーパーヒーローアイドルとして歌って踊れたんじゃないかと思います」と語っていた。歌詞に合わせていろいろな表情や大きな動きで、気持ちを伝えようとしていたとのことだ。

幸村恵理は「SOS」を披露。その歌声はとろりと甘く、イントロのダンスの表現力といたずらっぽい表情の相乗効果がとても魅力的だ。手元の動きのニュアンスが細かい。キュートさの中に時々涼やかなまなざしやドキッとするウィンクを織り交ぜてくるのか印象的で、表現の重層性が黛冬優子という少女の本質を伝えてくるようだ。スクリーンの背景はドットで描いたフラクタルのようなおしゃれな雰囲気で、甘すぎないバランスがいい。和とサイバーパンクテイストの衣装も含めて、アンバランスな要素が調和して独特の魅力につながっているように感じた。

トークSTAGEで幸村は緊張の大きさを明かすと「新しいふゆちゃんを見せたいし、いろいろなドキドキを抱えたライブでした」と語った。間奏にオリジナルの振付を考えたとのことで、おいで→しーっ→小指を差し出す、という動きで秘密の約束を表現していたようだ。視聴者コメントでウィンクのタイミングについて聞かれると、「ドキッとするところを探してウィンクしちゃったりしてます」とのことだった。

和久井優は「statice」を披露。人気のない海岸と清涼な水面を背景に、すっと立ち歌う姿が美しく、カメラを見つめるまなざしが柔らかく優しい。澄み渡るような涼やかな歌声が水面に、自由に鳥が舞う青空に響き渡っていく。“海のように深く”のフレーズでは、背景が珊瑚の森を色鮮やかな魚が泳ぎ回る海底に早変わり。めまぐるしく変わる景色の中で、安定感抜群の歌声と和久井の存在そのものの明度の高さが主役としてくっきりと主張している。アウトロの舞うようなダンスと伏し目がちな表情が余韻を残した。

トークSTAGEで和久井は(自分が)緊張しているのに周りには伝わらないタイプであること、リハでは緊張するのに本番は楽しめることを明かした。配信ライブという環境については「想像以上にプロデューサーさんの暖かさをカメラ越しに感じました」と語っていた。ライブでは透らしくリラックスして、肩の力を抜くことを意識したとのことで、ソロ曲の好きなフレーズには、“さよなら「風」”のさわやかさ、歌っている時の気持ちよさなどを挙げていた。

ユニットのライブトップバッターはノクチルで、和久井優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保がステージに立った。1曲目は「あの花のように」。デビューから何度も歌ってきた楽曲だ。ステージセット風の背景を選択すると奥行きのあるライブスタジオで歌っているように演出できるのがMIRAIKEN studioのメリット。スタジオライブならではのフォーメーションを取っていて、向かい合っての2対2を多用したパフォーマンスをマルチアングルのカメラで捉える見せ方が印象的だ。ラストの“隣で笑うきみと”のフレーズではお互いに視線をかわしていて、幼なじみの4人が笑い合っている空気感が感じられた。

今回のフェスでは、ユニットライブの曲間などに朗読劇が入る。ノクチルの朗読は放課後の自室で過ごす4人の時間を描く。透が雑誌に出ていることを雛菜が見つけたことをきっかけに、個人の仕事とノクチル4人の仕事について会話が広がる。それぞれのスタンスをそれぞれのテンションで語る中で、透の興味が突然別の方向(野球)に向き、他の3人もそちらに引っ張られていく感じがいかにもノクチルだった。

ノクチルの2曲目、「僕らだけの未来の空」は新曲だ。柔らかい表情で向き合った4人が、イントロに合わせて歩みだすとすっと顔を上げる。力強いギターが走り出すと共に一気にテンションを上げてカメラの向こうを煽っていく。歌い出しを土屋の落ち着いたビターな歌声のソロで入っていく感じが新しい。それぞれの力強いソロを歌い継ぎ、4人のカラフルな歌声がひとつになった時に無限のパワーを感じさせる。4人で一緒に進んでいく前向きな推進力を強く感じるパフォーマンスだ。お互いに笑みをかわすようなノクチルらしい動きがあったり、4人が円を作って向きあって、岡咲が楽しそうにタクトを振っていた姿が記憶に残った。ラストは4人で衣装をひるがえして、ステージ奥にそれぞれの歩幅で歩んでいった。

ミュージックSTAGEでのライブ前半戦を締めくくったのはシーズの紫月杏朱彩、山根綺のパフォーマンス。前日に続いての登場だが、冒頭の「シーッ。静かにして」の独白が、にちかから美琴に変わっている。1曲目は「Fly and Fly」、新曲2回目の披露だ。“Hey you”のコーラスに合わせてカメラをズバッと指差す紫月の不敵な表情がいい。イントロからダンスのクオリティの高さに圧倒される感じで、踊りながら歌うというシンプルな行為の凄みを見せつけるようなステージングだ。間奏のダンスのシンクロで見せると、ラップパートではライブ感にあふれる掛け合いを見せる。明滅するライトの中、ラストに向けて天井知らずにテンションを上げていくステージだった。

曲間の朗読劇は、前日と同じだるまさんがころんだを巡るやりとりを、美琴サイドから描いた。同じ場面をふたつの視点から見せる演出は両日出演のシーズだからこそだ。改めてこんなにも重い内容のだるまさんがころんだがあるのかと思うほどで、あまりにも重い美琴の独白はある意味前日のにちか以上だ。お互いに暗い何かを抱えながらも、表面上はぎこちなくも普通にコミュニケーションしている空虚さがより強調されているように感じた。

2曲目は「OH MY GOD」。治安が悪いと形容されそうなイントロに合わせて、姿勢を低く構えた独特のダンスを披露。タッチをかわす仕草に火花散らすような鋭さを感じる。語尾をひっかけるようにハネさせるシーズ特有の歌唱が印象的だ。朗読の重たい想いと空気感を味わった後だと楽曲の響き方もどこか変わって聴こえる。パフォーマンスはクオリティに特化した乾いたテイストなのに、その見え方に直前の重くウェットな演技が影響を与えているのが面白い。間奏の圧巻のダンスからの背中合わせの「シーッ」は何度見ても息を呑んでしまう鮮やかさだった。

休憩に入り、前半戦は終了。ここで様々な企画が行なわれたバラエティSTAGEで印象に残ったプログラムについて軽く書いておこう。

バラエティSTAGEでトップバッターを務めたのはノクチル。衣装の着こなしに担当アイドルの個性が反映されている。企画内容は「箱の中身はなんだろな」で、チャレンジ前から岡咲が、田嶌の怖がらせるリアクションが下手なのが心配とダメ出しするのが4人の仲の良さを感じさせる。岡咲はカマキリのおもちゃ当てにチャレンジ。仲間の(主に和久井と土屋の)リアクションに怖がっていた岡咲だったが、いざ物にさわると「これは無機物だわ」と看破したりと、怖さと負けず嫌いを往復する様子が面白かった。

涼本あきほ、田中有紀、山根綺、河野ひよりの4人は「お絵かき伝言ゲーム」にチャレンジ。比較的絵が上手な4人が集められたようだ。チャレンジ前から涼本は自信たっぷり。一問目の“カレーライス”は見事全員伝達成功だったのだが、続く“クレーン車”“液晶テレビ”は初手で伝言失敗して一番手の難しさが明らかになった。ミラクルが起きたのがラスト問題の“桃太郎”。田中があわてて描いたイラストから桃太郎を読み取った河野は、桃太郎の横にクマ? 犬? のイラストを描くアレンジを加える。これは間違えるフラグか? と思われたところで、涼本が“大きな桃から生まれる男の子”に描き換えるスーパーファインプレー! これは山根にも楽勝で伝わり、お絵かき伝言ゲームを3番手の機転が救うという珍しいパターンで、涼本が戦前の自信を証明してみせたのだった。

ストレイライトの○○ランキングは、メンバーそれぞれが第3位から第1位までを書き、お題(テーマ)は何かを当てるクイズコーナー。回答側が突然幼稚園児になったりしながらコーナーは進行。田中のあさひ感あふれる解答や、北原の“カバ、お母さん、うちら”という独創的な出題に、田中が“強い!”幸村が“最強!”と正解して絆を見せたりで盛り上がった。

シーズの「ゲーム3番勝負!シーズバトル」はシーズの2人がバトルをする企画で、田中がMCを担当。1本目はMC田中の似顔絵対決、3本目はクイズ対決に挑戦。似顔絵対決は48%対52%の僅差で山根が勝利、クイズは引き分けという互角の結果だ。盛り上がったのが2本目の都道府県古今東西で、2人が北海道から順番に北から南に順番に塗りつぶしていくような協力プレイを披露。あまりに長く続くリレーに司会の田中がびっくりしていたほどで、対決にも関わらずふたりのチームワークの良さが光っていた。

さて、ミュージックSTAGEを中心としたレポートに戻ろう。後半戦のトップバッターは白石晴香の「チョコデートサンデー」から。フルーツが舞うキュートな映像を背景にしたステージに、白石の笑顔の花が咲く。“どぅいどぅい どぅ~”の独特のコーラスに合わせたポーズのひとつひとつがガーリィでかわいらしい。幸せも悩みもすごく身近なところにある、智代子らしい等身大のパフォーマンスだった。

トークSTAGEで白石は、まずは後半のソロ出番までの緊張と、終わってほっとした心境を明かした。「チョコデートサンデー」は歌っていると楽しくなる楽曲で、プロデューサーさんとデートしている気持ちで歌ったとのこと。こだわったポイントとして、より振付を見てもらえるように、肩や首の角度にも気を使ったことを挙げていた。白石はバレエやジャズダンスの経験があって動きがきれいになりがちなため、智代子らしくなくなってしまうのではと考えた結果、手をいっぱいに広げて大きく動かして元気さ、かわいさを表現したというエピソードはとても興味深かった。

岡咲美保は「あおぞらサイダー」を披露。.後ろ向きでスタンバイした岡咲の手元がぐーぱーと開閉して、サイダーの泡が弾ける様子をリズミカルに表現する。静かに話しかけるような歌唱の中で、さらにささやきかけるような「ひ・み・つ」が耳に残る。抑えめだったテンションをだんだんと高めていき、「あれ!?」の一言の感情表現の大きさでドキッとさせる。抑えたテンションを喜怒哀楽の表現の時に爆発させる形でメリハリを生み出しつつ、静かなトーンの表現自体も魅力的という二段攻撃だ。ライブ中に様々な表情を見せた岡咲の、ラストの顔いっぱいの笑顔が印象的だった。

トークSTAGEで岡咲は、もうちょっと上手に歌いたかったとくやしさをにじませた。ライブ前には自分は雛菜だから一番幸せにステージに立とうと、私は雛菜と言い聞かせながらステージに向かったとのこと。ステージで心がけたこととしては、コンディションや自分の心のゆらぎにとらわれずに、ステージに立つ時は幸せは忘れないようにして、今日楽しかったという気持ちを届けたいと考えていたとのこと。ソロでやりたいことを聞かれた答の中では、「ノクチルみんなでいる時間がすごく好きだから」と、この日のノクチルの朗読劇にも通じる言葉がこぼれていた。

北原沙弥香は「Going my way」を披露。イントロで静止して片手を捧げ、つかんだ何かを振り払うようなアクションのメッセージ性が強い。激しい情感と力強さを感じさせるボーカルと情熱的な歌声が一体になって、全身で激情を表現していく。間奏のニュアンス豊かなダンスも、言葉がないとは思えないほど雄弁だ。落ちサビの意志を込めたまっすぐなまなざしと、“誰にも負けない”で何かをつかみとった時の充実した笑顔も記憶に残った。アウトロで衣装の袖口で表情を見え隠れさせるような見せ方が巧かった。

トークSTAGEで北原は「一言で言うなら絞り出したなという感覚です」という言葉で、自分の中の限界の先まで絞り出したステージを表現。こういうステージを作りたかったからこそ、始まる前は緊張したとのことだ。そこで助けになったのがストレイライトの仲間の存在で、「Going my way」の初披露時にふたりが側にいてくれるように感じた感覚を思い出したことで、地に足をつけてパフォーマンスができたと語っていた。

土屋李央は「夢見鳥」を披露。ファンには周知のことだが、土屋は樋口円香としてパフォーマンスをする時は、キャラクター表現として笑顔を見せない。この曲でも表情を常に抑えている分、おだやかで優しい歌声に繊細な色と表情をつけていく。サビのおそろしいほどの安定感と力強さのバランスが素晴らしい。オレンジに輝く街並みの美しい夕景が背後にオーバーラップして、土屋と円香の歌声がどこまでも広がっていくようだ。ラストの“重ねた 手のひらに”の微かで繊細な歌声からの、力強く優しい飛翔。円香が内に秘めた想いと熱量を感じさせるパフォーマンスだった。

トークSTAGEで土屋は、ゲーム内で円香が成長しているからこそ自分も成長しないといけない、ステージに立つ時は円香でありたい、円香として気持ちを伝えたいという心情を語った。その結果、気持ちが入りすぎて歌えなくなってしまい、山根綺に相談したことや、本番ギリギリまで練習していたことを明かしていた。本番前後も含めたキャラクターへの入り込みの深さと、役者としてのストイックなまでの真面目さが伝わってくるトークだった。

ミュージックステージのスペシャル枠は、出演者も伏せられていたシークレット枠だ。前日に企画CD「THE IDOLM@STER SHINY COLORS デビ太郎 VS ジャスティスV」から「デビ太郎のうた」が披露されたことで予想されていた通り、ステージに登場したのは河野ひより。楽曲はもちろん「絶対正義 EVERY DAY」だ。

ステージにはまずは放課後クライマックスガールズの面々が登場。夏葉監督のアクションの声に従い、樹里と智代子が怪人と襲われるヒロインを演じる。そこに「待てーい!」と登場するのはもちろんヒーロー果穂!

その流れでステージに登場し、口上を披露する河野の背景には9:30の文字が。ニチアサヒーロータイムになり、特撮番組「ジャスティスV」の主題歌が始まるという趣向だろう。雄大なポーズからジャーンと振り返った河野が着るTシャツの胸には「ジャスティスV」のロゴとイラストが燦然と輝いている。腰に手を当て、ズバッとカメラを指差す河野から笑顔がこぼれる光景は見ているだけで元気で幸せになってしまうほどで、等身大の小学生ヒーロー、小宮果穂がそこにいる! と確かに感じさせる。こんなにハッピーなのに落ちサビではなぜか泣きそうになるエモーションがあるのは、明るいだけでなく時に悲哀の影があるヒーローの宿命だろうか。アウトロはハイキック、パンチ、ガードといった殺陣の動きから、とびっきりキュートな最高な笑顔の横ピースで締めくくった。

ストレイライトのユニットライブには田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香が登場。ストレイライトに関しては、一曲目の前に朗読劇を行う構成だ。朗読はストレイライトに密着取材の企画が舞いこんだという内容で、ファンの前ではクールに振る舞う愛依、裏表のある冬優子と、本来の姿とステージでの姿にギャップがあるからこその悩みが描かれた。愛依のイメージ(妄想)の中のあさひと冬優子の解像度がやたら高い。

ステージと日常でまとうキャラクターの違い、オンオフを朗読で描いた上で、“オン”の姿であるライブへとシームレスに突入する。一曲目は「Transcending The World」。ストレイライトというユニットと楽曲が持つサイバーでソリッドな世界観と、映像演出を組み込んだステージの相性が抜群にいい。ライブごとに進化とマイナーチェンジを繰り返しているイメージのある楽曲だが、今回はラップパートのフォーメーションムーブで北原が低い姿勢からキックを放つ流れが挑戦的でとてもかっこいい。ポジションを入れ替えながらのパフォーマンスは誰が真ん中に立っても鮮烈で、それぞれが千両役者の風格がある。

一糸乱れぬキメを見せると、そこから立て続けに新曲「Another Rampage」へ。イントロが始まると同時にバッと後ろを向いてバックショットでポーズを取ると、振り返りざまに観客に襲いかかるようにステージへ飛び出す。3人が永く響く「Yeah!!」の咆哮で無軌道なエネルギーを吐き出すと、何かとんでもないことがはじまる期待感が映像から伝わってくる。ソロ歌唱のパートの個性豊かなケレン味と、3人がかりのサビの最強感。間奏は多彩なダンスで魅せると、幸村→田中のキュートラップ二連から北原がワイルドにセンターに躍り出る。ノンストップに疾走しながら、常に3つの個性が入り乱れ絡み合う怒涛のパフォーマンスだ。「選べないよ、ひとつの世界だけなんて」「自由でいいじゃん」「だってだって、どっちの世界も、ほんとなんだもん」という3人の締めの台詞のリレーが、そのまま朗読パートに対するアンサーになっている構成も見事だった。

ユニットライブのトリを飾るのは放課後クライマックスガールズの河野ひより、白石晴香、永井真里子、涼本あきほ。ライブ前に朗読が入る構成で、内容は放クラの5人による「銀河級じゃんけん」からスタート。放クラのもう一人、杜野凛世は動画通話の画面越しに参加するという趣向だ。凛世抜きのライブに緊張するメンバーたちだったが、智代子と果穂がライブ前に何を食べるかで盛り上がるうちに自然にいい空気になっていく。「最上最強最高のアイドルに、へーんしん!」の掛け声とともに、ライブに突入する。

放課後クライマックスガールズの一曲目は「クライマックスアイランド」。朗読劇中には「五ツ座流星群」を思わせる台詞もあったが、いきなり新曲で強襲してきた感じだ。ステージセンターに駆け込んだ河野が仲間を呼び集めると、河野のホイッスル(のポーズ)にメンバーが敬礼で応えてパフォーマンススタート。振付やフレーズでステージ上にエンターテイメントテーマパークを創り上げていく。縦一列に並んで順番に腕を回すグルグルムーブで観覧車を表現したのは技あり! そのあとの河野の「しゅっぱーつ!」の叫びのはみ出すぐらい力強い感じは、これぞヒーローという熱さに満ちていた。とにかく楽しくハッピーなエンターテイメントステージで、5人が揃ってさらにパワーアップした完成形が早く見てみたいと思わされるパフォーマンスだった。

そして大団円の決めポーズから、そのままさらに無敵な「五ツ座流星群」に雪崩れこむ怒涛の構成だ。「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 3rd LIVE TOUR PIECE ON PLANET」では、河野、永井、涼本、そして丸岡和佳奈の4人バージョンでの披露が多かった「五ツ座」。「ふれっふれっヒーロー!」の声援が白石のオリジナルなのはこれでこそという感じだし、丸岡の凛世らしさあふれるロングフレーズを今回は白石が担当しているのはツアーでのサポートのお返しだ。白石バージョンの「あ~れ~」はめがぐるぐるになった智代子が見えそうなキュートさだった。無数のミラーボールが浮かぶ銀河を背景に、初めての組み合わせの四つ星が無敵の星座を描くステージだった。

今後の展開の告知映像では、「シャニマス」初のオフボーカルコレクション「THE IDOLM@STER SHINY COLORS OFF VOCAL COLLECTION 01」の発売が発表された。発売日は2022年1月19日。

2日間に渡ったフェスの最後は、全員でミュージックSTAGEに登場。河野が代表して挨拶すると、ラストナンバーの「いつかShiny Days」へ。それぞれの優しく柔らかな笑顔が印象的で、その真ん中に河野のおひさまのような笑顔があるのがとてもしっくり来る。“くじけそうになったり”がにちか(紫月)、“逃げたくなったりするけど”が小糸(田嶌)だったりと、パート分けやカメラで抜くアイドルにも細かくキャラクター性を織りこんでいるのが楽しい。ステージ背景に仮想の紙吹雪が舞う中、ステージの上空をよぎったであろう流星については頭上を見つめるアイドルたちの視線の動きだけで表現するところが粋だなと感じた。

2日間を駆け抜けた283プロ初のフェスは長いお辞儀と、出演者全員からの気持ちを込めた「ありがとうございました!」のリレーで締めくくられたのだった。

Text by 中里キリ

THE IDOLM@STER SHINY COLORS 283フェス 2021 Happy Buffet! DAY2
2021.10.24.ミュージックSTAGE セットリスト
M01:シャイノグラフィ(シャイニ―カラーズ)
M02:Ambitious Eve(シャイニ―カラーズ)
M03:過純性ブリーチ(西城樹里(CV.永井真里子))
M04:星をめざして(芹沢あさひ(CV.田中有紀))
M05:Damascus Cocktail(有栖川夏葉(CV.涼本あきほ))
M06:わたしの主人公はわたしだから!(福丸小糸(CV.田嶌紗蘭))
M07:ハナマルバッジ(小宮果穂(CV.河野ひより))
M08:SOS(黛冬優子(CV.幸村恵理))
M09:statice(浅倉 透(CV.和久井 優))
M10:あの花のように(ノクチル(和久井 優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保))
M11:僕らだけの未来の空(ノクチル(和久井 優、土屋李央、田嶌紗蘭、岡咲美保))
M12:Fly and Fly(シーズ(紫月杏朱彩、山根 綺))
M13:OH MY GOD(シーズ(紫月杏朱彩、山根 綺))
M14:チョコデートサンデー(園田智代子(CV.白石晴香))
M15:あおぞらサイダー(市川雛菜(CV.岡咲美保))
M16:Going my way(和泉愛依(CV.北原沙弥香))
M17:夢見鳥(樋口円香(CV.土屋李央))
M18:絶対正義 EVERY DAY(小宮果穂(CV.河野ひより))
M19:Transcending The World(ストレイライト(田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香))
M20:Another Rampage(ストレイライト(田中有紀、幸村恵理、北原沙弥香))
M21:クライマックスアイランド(放課後クライマックスガールズ(河野ひより、白石晴香、永井真里子、涼本あきほ))
M22:五ツ座流星群(放課後クライマックスガールズ(河野ひより、白石晴香、永井真里子、涼本あきほ))
M23:いつかShiny Days(シャイニ―カラーズ)

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

関連リンク
「アイドルマスター シャイニーカラーズ」公式サイト
https://shinycolors.idolmaster.jp/