国会閉会中審査は、加計学園問題の真相解明には程遠い結果となった。当然だろう。

安倍首相本人が外遊と称してトンズラし、キーマンである和泉洋人首相補佐官や木曽功前内閣官房参与の参考人招致も与党が拒否した状況で、疑惑の核心を追及できるはずがない。

 しかも、青山繁晴議員ら自民党側の質問者は前川喜平前文部科学事務次官のことを「岩盤規制の守護者」に仕立て、ひたすら攻撃を行う始末。前川氏が加計問題の本質は規制緩和の是非でなく、安倍首相が行政を捻じ曲げて"腹心の友"加計孝太郎理事長の経営する学校法人加計学園を特別扱いしたことだと再三にわたって証言しているのに、それにはなんの反論もできないまま、とにかく論点のスリカエをはかって、安倍首相の利益誘導隠しに必死だった。

 ようするに、安倍首相も自民党も「深く反省」などというのは口先だけで、実際はそんな姿勢など微塵もないのだ。

 さらに、ここにきてもうひとつ、安倍首相が加計学園問題をまったく反省していないことを証明する事実が明らかになった。

 安倍首相が加計理事長と同じ「男たちの悪巧み」仲間を、政府の要職に引き立てていたことがわかったのである。


「男たちの悪巧み」というのは、昭恵夫人が2015年のクリスマスイブ、Facebookに投稿した写真のこと。安倍首相と加計理事長が仲良く酒を飲んでいる写真に、昭恵夫人が「クリスマスイブ。男たちの悪巧み・・・(?)」とコメントをつけていたことで、「シャレになってない」と批判を浴びたのだが、実はこの写真には安倍首相、加計理事長以外にもう2人、「男たち」が写っていた。

 ひとりは鉄鋼ビルディング専務の増岡聡一郎氏、もうひとりは、三井住友銀行元副頭取の高橋精一郎氏。高橋氏は安倍首相と加計理事長にはさまれてグラス片手にご機嫌な様子で安倍首相を指差していた人物だが、このメガバンクの元副頭取のほうが7月の人事で金融庁の参与に抜擢されたのだ。

 断っておくが、高橋氏はたまたまこの酒席に参加していたわけではない。
高橋氏は加計理事長と同じ、安倍首相がアメリカに留学していたときの仲間で、安倍首相とはずっと、プライベートでも深いつきあいをしてきた。

 実際、首相動静を見ても、高橋氏は14年から現在までの間に計8回も登場。安倍首相は、加計理事長ともに高橋氏と食事やゴルフを楽しみ、別荘にも招いている。昭恵夫人同席も珍しくなく、家族ぐるみのつきあいであることが伺える。

 この「男たちの悪巧み」の写真もたまたまではなく、去年も、クリスマスイブにはもうひとりの「悪巧み」仲間である増岡氏が専務を務める丸の内の鉄鋼ビルディング内のエグゼクティブラウンジに加計氏、高橋氏らで集い、夕方から酒を酌み交わしている。

●金融庁でも訝られる高橋氏の抜擢、やはり官邸の圧力が

 ようするに、高橋氏は加計理事長とまったく同じ安倍首相の腹心の友であり、利益誘導を図っていた安倍・加計コンビの仲間なのだ。
金融庁はそんな人物を参与という金融政策遂行のブレーンにつかせてしまったのである。

 実は、この人事には金融庁内部からも疑問の声が上がっているという。そもそも金融機関を監督・指導する役所である金融庁の参与に、監督される側のメガバンクの元幹部を就任させるというのもありえない話だが、加えて、高橋氏のキャリアや資質は金融庁がいま抱えている課題とはほとんど関係がなかったからだ。

「金融庁の喫緊の課題は、新たな金融機関の監督・検査体制の構築と、地域金融機関の再生なんです。金融庁では2月にも三菱UFJフィナンシャル・グループ元副社長の田中正明氏を採用していますが、田中氏は国際金融規制やコーポレートガバナンス(企業統治)に明るい人物なので、まだ納得がいきます。ところが、高橋氏はディーラー出身で、市場営業部門を統括してきた人物ですからね。
ガバナンスにはあまり詳しくないうえ、在任中に三井住友が国際法で禁止されたクラスター爆弾の製造会社に対して投資していたことから、むしろガバナンス意識が薄い人物ととらえられている。同じメガバンク出身でもほかに適任がいただろう、という声が圧倒的です」(全国紙金融庁担当記者)

 そして、ここでもささやかれているのが、官邸の圧力だ。実は高橋氏は三井住友銀行の次期頭取候補の一人だったが、昨年末の人事で敗れ、副頭取を退任することになった。そこで、官邸が再就職のためにつなぎとして参与に起用するよう、金融庁に働きかけたのではないかというのだ。

「金融庁は、菅義偉官房長官からの信頼が厚く、異例の続投で3年目を迎える森信親長官が支配する、"アベノミクス影の主役"と言われる省庁ですからね。官邸から言われたらさからえないでしょう。
これに先立つ2月の田中MUFG元副社長を参与にした人事も、高橋氏を参与にするための露払いだったのではないかという声まで上がっている」(前出・全国紙金融庁担当記者)

 いずれにせよ、これは安倍首相による"お友だち人事"と言われても仕方のないものだ。加計学園問題に国民の批判が集まっているのは、前川前次官の言うように、まさに安倍首相のお友だち優遇のために行政をゆがめていることなのだが、そのさなかにこんな人事をしてしまうというのは一体どういう神経をしているのか。

 しかも、こうした身内の重用人事を巡っては、森友問題の国会答弁で「資料はすべて破棄した」などと言ってのけた佐川宣寿理財局長が、財務相ナンバー2の国税庁長官に栄転。「ご褒美人事」などと揶揄されたが、他にも、第二次安倍政権以降、スピーチライターを務めた経産省出身の若手官僚・佐伯耕三内閣副参事官が首相秘書官に抜擢された。

 さらに、警視庁刑事部長時代に山口敬之氏の準強姦事件逮捕をもみ消した中村格氏は、今度の人事で警察庁長官へのルートでもある警視庁総括審議官に出世するのではないかといわれているし、安倍首相の腹心中の腹心である、"官邸のアイヒマン"こと内閣情報調査室の北村滋内閣情報官も、次の内閣改造で杉田和博官房副長官の後任に座らせるという見方が広まっている。

 安倍首相や自民党が見せているごまかしの反省のポーズに騙されてはいけない。
結局、安倍政権の政治私物化体質は都議選で痛いしっぺ返しをくらっても、まったく変わっていないのである。
(編集部)