全市民の生活に直結する厚労省・毎月勤労統計データ不正問題、アベノミクス“偽装”問題で国会が紛糾するなか、ネット右翼たちは「辻元清美・外国人献金問題」なる話題で盛り上がっている。
発端は、今月6日の夕刊フジの報道だ。
この夕刊フジの報道を受けて歓声をあげているのがネトウヨや安倍応援団たちだ。〈あなたは本当に日本の政治家なんですか?〉〈辻元はさっさと辞職しちまえ!〉などとがなり立てているというわけだ。
しかし、この問題、こんなに大騒ぎするようなものなのか。夕刊フジによれば、問題視された献金の額は2013年に1万円で2014年に1万2000円とごく少額。辻元議員はその後に男性が外国籍と判明したため、2013年分は本人に返却し、2014年分は国籍を問わない「後援会会費」に訂正(時事通信6日)。党内役職である国対委員長の辞任は否定している。
また、男性が使った振込用紙には「寄付金は外国籍の方からはできません」と記載されており、辻元議員には「外国人献金」であるとの認識はなかった。しかも、男性も夕刊フジの取材に対して「政治資金規正法に抵触するとの認識はなかった」と説明している。
そもそも、日本には在日コリアンなどの外国籍の人が多く生活しており、一概に「外国人献金」として禁止・処罰の対象にしていいのかというは当然あるが、それはひとまず置いておくとしても、このケースでは献金額もごくわずかであり、当人らも認識していなかったのだから、悪質性はほとんど感じられない。
にもかかわらず、針小棒大にあげつらって、やれ「責任を取れ」「辞職しろ」などとがなりたてるのは、いいがかりとしかいいようがない。
とくに、呆れるのが、報道の口火を切った夕刊フジだ。そもそも、このネタ自体、タイミングからして、官邸や公安からのリークのにおいがプンプンするが、いくら自民党・政権擁護に寄りまくった安倍応援団メディアとはいえ、わずか2万円そこらの「外国人献金」を「スクープ」と喧伝するとは……。
しかも、夕刊フジは〈民主党政権時代には、前原誠司外相と田中慶秋法相が「外国人献金」が発覚して閣僚を辞任している。重大な行為であり、重い法律といえる〉(6日)、〈政治資金規正法に抵触するため、ネット上は役職辞任を求める声であふれている〉(8日)、〈「外国人献金」を放置すれば、日本の政治や政治家が、外国や外国勢力によって政治的圧力や干渉、影響を受けかねない〉(8日)などとたたみかけているが、一方で、完全にネグっていることがある。
それは、「外国人献金」を指摘されたながら、役職の辞任や議員辞職をしていない政治家が大勢いることだ。自民党議員も例外ではない。たとえば2012年には石破茂議員(当時自民党幹事長)の政治団体が2006から2011年にかけて、外国人が代表取締役などに就いている企業3社から計75万円の献金を受けていたことが判明。全額を返金したが、幹事長は辞任しなかった。
また、福田康夫元首相も総理になる直前、2007年9月に福田氏が代表を務める自民党の群馬県支部が、外国籍の経営者が株式の過半数をもつ企業から計20万円の寄付を受けていたことが明らかになったが、そのまま、総理大臣に就任している。
●安倍内閣の巨額違法献金を追及せずわずか2万円の献金に「辞任しろ」
いや、問題はそれ以前だ。
たとえば、西川公也農相(当時)は、代表を務める政党支部が、西川氏が顧問をしていた補助金受給企業から300万円の献金を受けていたことなどが発覚。今村雅弘復興相(当時)もJR九州のグループ会社から計6000万円超の巨額企業献金を受け取っていたことが報じられ、その見返りとしてJR九州に便宜をはかっていたのではないかと取りざたされた。下村博文文科相(当時)は「週刊文春」(文藝春秋)に違法性の高い「裏献金」疑惑をすっぱ抜かれ、その後も加計学園への“ヤミ献金”を報じられた。菅義偉官房長官も日本歯科医師連盟からの「3000万迂回献金」疑惑を「週刊ポスト」(小学館)にスクープされた。
他にも小渕優子経産相(当時)の政治資金問題や、甘利明経済再生担当相(当時)や片山さつき地方創生相の“口利き”疑惑など、「政治とカネ」をめぐる不祥事は枚挙にいとまがない。
だが、安倍応援団はこうした疑惑をたいして追及もせず、わずか2万円そこらの「外国人献金」を「スクープ」と銘打って大騒ぎを繰り広げているのだ。どっちが悪質で、国政の根幹に関わる問題なのか、小学生でもわかりそうなものだが、連中の頭の中では野党の2万円の献金のほうが大事らしい。
まあ、それも当然だろう。前述したように、今回のネタはどうみても、勤労統計の不正データ問題のカウンターとして仕掛けられたネタ。安倍政権への追及をそらし、野党を攻撃できるならなんでもよかったのである。
しかし、問題はやはり夕刊フジだ。
(編集部)