小栗旬主演の『信長協奏曲』(フジテレビ系)や、関ジャニ∞丸山隆平主演の『地獄先生ぬ~べ~』(日本テレビ系)など、多彩な作品が揃った10月スタートのドラマ。中でも目玉といえるのが、綾瀬はるか主演の『きょうは会社休みます。
主人公・花笑は、33歳の誕生日を迎えた高齢処女。誕生日の夜に行きがかり上、会社の飲み会で大学生アルバイト田野倉と酒を飲んでいるうちに記憶が飛び、目を覚ますと隣にはベッドで眠る田野倉の姿! ひと回り以上年下の田野倉との関係に不安を覚えつつも、勇気を振り絞って彼との交際をスタートさせた花笑は、年下とは思えないほどの包容力を持つ田野倉にどんどん魅かれ、恋愛の楽しさに目覚めて行く。
花笑の場合は、学生のときに一度だけあった脱処女のチャンスを「門限」を理由に断ってしまい、その後チャンスが訪れなかったというパターン。
一方、"女子をこじらせて"処女になってしまったのは、『エア彼』(大久保ヒロミ/講談社)の主人公リア。ハーフ・高身長・美人とモテ要素を持ち合わせているが、幼少のころのイジメゆえに自己肯定感が低く、男性がリアを見てときめいているのに、「クドい顔を思われている」と思いこむなど被害者意識が強い。それがゆえ、29歳になっても彼氏もおらず、彼女を慰めてくれるのは脳内彼氏のツトムくんだけ。勤めていた会社が吸収合併され、新社長となった男性に憧れるものの、リア本人はそれを「アレルギー」だと思い込む。そんな美人ゆえの悩みと周囲の人とのギャップが笑いを生み出し、こぎみよく進む物語が楽しい。
高齢処女になるまいと奮闘する女性たちの姿を描くのは、『ヤらみそ~ヤらずに三十路はだめですか?~』(ながえ直/小学館)。処女のまま30歳を目前にしためぐみは、「今日最後に一緒にいた男とヤッてやる!!」と半ば開き直りの状態で、会社に出前にきたラーメン屋の男をターゲットに。あの手この手で迫るものの彼は鈍感で関係はなかなか進展せず......。脱処女を焦る女性たちの、理想と現実の間で右往左往する姿がリアルだ。
このように高齢処女を主人公にした作品が多く、また人気上昇中の『クローバーtrefle』(稚野鳥子/集英社)のように10年間彼氏がいない主人公が社内一の女好きと恋に落ちていく、「セカンドバージン」をテーマにした作品も人気を集めている。では、なぜここまで高齢処女をテーマにした物語がウケているのだろうか。
男性経験を持たずに妙齢になる焦りと孤独と絶望感は、これまで女性同士でもアンタッチャブルな話題だった。しかし、2010年の厚生労働省の「出生動向基本調査」によると、未婚女性のうち「性経験がない」と回答した女性は、30~34歳で23.8%、35~39歳で25.5%と、未婚女性の4人に1人が処女という結果に。現実には高齢処女が「意外と多い」と認識されたのか、男性の童貞ネタのように徐々にオープンに話せる空気が生まれたのかもしれない。
また上記の作品を読んでいると、目の前にチャンスが来たときに"一歩"を踏み出し、脱処女を図った女たちの強さが感じられる。その勇気に力づけられるのは、処女・非処女にかかわらず、恋愛に逃げ腰になりがちなすべての女性読者なのではないだろうか。男性と深くかかわり、恋愛に突き進み始めた主人公たちは、恋愛初期のときめきや楽しさを読者に思い出させてくれる。
(江崎理生)