『朝まで生テレビ!』に出演した田崎、三浦両氏


 反社会勢力の招待疑惑など広がりをます、「桜を見る会」をめぐる一連の問題。菅義偉官房長官の「反社の定義は定まっていない」なるトンデモ発言にあらわれるように、窮地に追いやられている安倍政権だが、かたや、テレビマスコミでは“御用コメンテーター”たちが政権擁護を連発。

安倍首相は今井尚哉首相秘書官を引き連れ、記者クラブの各社キャップを集めた懇談会を開き、マスコミに「ワイドショーはもういいんじゃないか」「NHKの報道はひどい」と“圧力”をかけるなど必死だ。

 そんななか、11月30日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に、あの“自称・国際政治学者”三浦瑠麗氏と、“官邸御用ジャーナリスト”田崎史郎氏が揃って出演。言うまでもなく、三浦氏は「桜を見る会」問題を“呼ばれていない人の嫉妬”に矮小化、田崎氏は“民主党政権も「桜を見る会」をやっている”などと政権のフォローをしまくってきた。

 そんな2人が揃い踏みした『朝生』、安倍擁護の流れになるのは火を見るより明らかだったが、実際、2人は手を替え品を替えフォローや話のスリカエを連発したのであった。

 まず、この日の『朝生』は「激論!安倍長期政権の功罪」と題して、歴代最長政権となった安倍政権を検証するというフレコミだった。パネリスト出演は、自民党の柴山昌彦前文科相、片山さつき・前地方創生相、立憲民主党の大串博志衆院議員、国民民主党の大塚耕平参院議員、共産党の宮本徹衆議院ら7人の与野党議員が参加。

そこに金子勝・慶應大名誉教授、ジャーナリストの堀潤氏、そして三浦氏と田崎氏を交えて行われた。

 盛り上がりを見せたのは前半、やはり「桜を見る会」問題でのやりとりだ。今年5月9日、共産党が国会質問のために資料の提出を求めた当日、政府が今年分の名簿をシュレッダーにかけた件、つまり情報隠蔽だったのではないかとの疑惑について、片山さつき議員が「今年だけこのタイミングにしているわけではなくて、前の年も、その前の年もそのタイミングでシュレッダーをしている」と内閣府は説明していると主張。

 つまり、シュレッダーの時期は例年通りであり、情報を隠蔽しようとしたのではないと言うのだが、これに対し、国会でもいち早く疑惑に切り込んできた共産党の宮本議員が反論した。周知の通り、政府は今年の「桜を見る会」の名簿を「保存は1年未満」つまり“いつでも処分していい”という決まりに基づいて5月に破棄したと言っているが、これは2018年4月に安倍政権が変更した規定だ。宮本議員は、変更前の2017年には、行政文書としての名簿が「1年間の保存」であったはずであることを挙げて、片山さつき議員が言う「前の年もその前の年もこの(5月の)タイミングでシュレッダーをした」という発言の矛盾をつく。

 そこから宮本議員は、シュレッダーされたのは名簿の写しにすぎず原本は実はいまも残っている可能性について説明を続けようとするのだが、司会の田原総一朗氏に続き片山さつき議員が割り込んで「それはあまりにもテレビでおっしゃるには誤解が与えられる」と追及を遮る。ここで田原が「田崎さんはどうですか」とふる。すると、田崎氏はシュレッダー疑惑など聞いてなかったかのように、片山氏のすり替えに乗っかって、こう言い放ったのだ。

「(宮本さんは)じゃあ文書は残ってるってお話なんですか。過去のものではなくて、いま名簿が存在するというご主張なんですか」

 この田崎氏の発言にさらに勢いづいた片山さつき議員が「それは余程の証拠がないとこういう場所では言うべきことじゃないと思います」と発言。つまり、宮本議員は内閣府の説明の矛盾から“シュレッダーのタイミングが例年通りというのは、名簿を隠すためのストーリーではないか”と追及していたのに、いつのまにか「破棄をしていないというなら証拠を出せ!」という反転攻勢にすり替わってしまったのである。

まさに“阿吽の呼吸”というやつだろう。

 番組はその後も、片山さつき議員ら与党側を、田崎氏と三浦氏がアシストする形で進行していく。政権が「名簿のデータは復元できない」と言い張っていることに、金子氏が「技術的には可能」と話すのだが、ここで三浦氏も参戦。「残っているという根拠がまだ示されていない」と田崎らの“証拠出せ”攻撃に加勢しつつ、いつもの中身のない長ゼリフで議論のポイントをうやむやにしにかかりながら、飛躍した論理で政権を擁護した。

「ただ、今回の件がなんで問題になったかっていうと、結局、個人情報だから(名簿は)見せられません、仮に見せた時にひとりひとり吊るし上げにあったりしたり、あるいはTwitter社会になったときに住所とかいろんな会社の所在地とかをさらされて電凸とかされたら困るからそういうの見せられませんっていう保護の観点と、それから情報としてこういうものは出したほうがいい、あるいは残したほうがいいっていう観点がごっちゃになっていて、たぶん政権の説明がその個人攻撃を恐れるあまり廃棄するっていう原理原則と、本来なんていうんですかね、シュレッダーにすぐかけてデータも結局復元できませんみたいなのを一緒くたにしないほうがいいんですよ」

「電凸されたら困る」って、安倍首相が御用評論家の小川榮太郎氏に電話で話したという言い訳にそっくりだが、三浦氏にも連絡網が回ってきたのだろうか。安倍政権が追及を妨げるためだけに「個人情報保護」を無理やり持ち出しているだけなのに、その理屈に乗っかってわざとごちゃごちゃにしているのは三浦氏のほうだが、さらにこう続けるのだ。

「私はですね、個人的な見解から言うと、総理の枠の人数の大きさを問題にすべきであって、総理枠の人数はやはりちょっと膨らみすぎてこれはどう考えてもおかしいよねっていう話は問題にしてもいいかもしれないけども、6000人の私人、6000 人いたとしたらですよ、私人のリストがいろんな各社とかネットとかに出回ることがいいことだとは思わないです。私自身は文化人枠として行っているので、実際に報道に顔写真も映像も出てるから、私は公人として出ているからいいけれども、一般の私人の人にそういうこう名前とか住所とか顔とかを晒されるリスクを負わせるのはよくない」

 ちょっと待ってくれ。そもそも「桜を見る会」の問題は、安倍首相が税金を使って支援者たちをもてなすという私物化問題がスタートだ。疑いを晴らしたければ、リストを公開すればいいだけなのに、そのリストを隠しているからこそ、疑惑が深まっている。そもそも、自民党が公式に送付した今年の「桜を見る会」案内状にも〈「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づいて名簿全体を公開されることもあります〉との注意書きがあり、名簿は公開前提だ。

 しかも、追及されているのは安倍首相ら公人であるにもかかわらず、“名簿が公開されたら私人が攻撃されるリスクがある”などというのはメチャクチャにもほどがある。

三浦氏は「だけど、公開しなくても保存しておくべきだよねっていうのはあって」などと予防線を張っていたが、言っていることは完全に「名簿は個人情報でありプライバシーの観点から破棄した」と強弁する政権の代弁でしかない。あまりにも露骨すぎる。

 実際、三浦氏は、「桜を見る会」問題以降も安倍政権の支持率はほとんど落ちていないという話題でも得意の矮小化をはかろうとするのだが、そのなかでつい、自分が“政権側の人間”であることをポロリと口走っていた。

「これ見ててね、これで政権が倒れる感じには見えないんですよ、世論調査のポイントの落ち方見ても。で、明らかに安倍政権は初動対応として間違ったと思います。それはやっぱり例年ずっとやってきて民主党政権もやってきたからっていうのがあって、どのくらい実態として(招待人数が)拡大してしまっているのかとか、マルチ商法の人が呼ばれたのかってこともちゃんと把握せずにやっぱうっちゃろうとしたところがあって、その後、(来年の中止を)決めたときからは早かったですけど、つまり来年はしないと。

中止と。だけどもやっぱりその初動の対応の影響って引きずるので、ただいま私が申し上げているのってダメージコントロールの観点なんですよ」

「初動対応」とか「ダメージコントロール」って安倍応援団が政権不祥事追及が盛り上がっているときよく使う常套句だが、不祥事や疑惑そのものでなく対応の問題にすり替え矮小化するものであることは言うまでもない。田原氏が「どういうこと?」と聞くと、三浦氏はこう続けた。

「ダメージコントールとして安倍政権の側から見た時にはまちがったね、と。ただ、これ国会全体とか与野党通しての政治の話として考えるとやっぱり説明すべきところはしっかり説明したほうがいいし、あと、やっぱもう一つ、ごめんなさい、すごい老婆心的な感じで言うとですけど、やっぱり野党さんは最初は関電の問題でいくって決めたじゃないですか。関電の問題を本国会ではやると」

「関電の問題」というのは、関西電力幹部が福井県高浜町の元助役・森山栄治氏から大量の金品を受け取っていた問題のこと。散々「いまさらな話」をしておいて、唐突に「関電問題」に切り替えた三浦氏の狙いは、その後を聞けば明らかになる。

「桜を見る会の話で、なんで関電のニュースを出したかっていうと、やっぱり(「桜を見る会」の追及は)立憲民主と国民民主を利してないんですよ、明らかに。共産党はわかんないですけど。やっぱりこの追及のやり方が明らかに利してない、なんでうまくやれないのか」

 出た! 上から目線でぶっかます謎の説教モード! 表向きは「野党はもっとしっかりしろ」とエールを送っているように見えるかもしれないが、騙されてはいけない。実はコレ、三浦氏お得意のパターンで、「追及は野党を利していない」→「野党の追及は筋が悪い」→「他のことを話すべきだor国民は違うことを求めている」と繋げる“矮小化コンボ”の一発目。ようするに「追及は野党を利していない」と、まるで野党の追及が何か下心があってなされているかのように、さりげなく印象操作しているのだ。

 さすがにタネが割れているので、番組では国民民主党の大塚議員が「別に自分たちを利するためにやっているわけじゃない」とかわし、話題を変えたことで不発に終わったが、読者諸賢もその手口を覚えておいてほしい。

 その後も、田崎&三浦の“御用コンビ”は巧妙な政権擁護を連発していた。たとえば田原氏が「桜を見る会問題について「僕は安倍さんが説明すべきだって言ってんの」と述べると、田崎氏がすかさず「安倍さんは説明すべきなんだけども、僕は民主党が反社勢力、反社勢力って言われますでしょ。あれ何か証拠があるんですか」と口を挟む。

 他にも、反社会勢力問題では、三浦氏が「基準を設けるべきというのは思いますよ」とエクスキューズしたうえで、こんなことを言っていた。

「ただ、やっぱり政党の支部にたとえば応援しますってすごい熱心に来る支援者がいたときに、その人が反社かってみなさんいちいちチェックしてるんですかっていうのは私はすごく思うんですね。やっぱり政治の世界って銀行とかそういう厳しい人たちからすると、めちゃくちゃゆるいものじゃないですか。だから支援者を、たとえば大串さんの支援者の人たち、自分たちを支援してくれる人、ボランティアで働いてくれる人をいちいちひとりの個人名を検索して、そういう調査機関に投げて、この人反社じゃないですかってチェックしてないじゃないですか。だから、そういう問題ってそこまで顧客じゃないから政党はできないってことがわかったうえで、でもじゃあどの段階でどういう調査が入ったって事実が明らかになったら除外しましょうとか、公的な行事に呼ぶ人っていうのは一定の地位の人にしましょうとかっていうふうにしとくべきだと思うんですね」

「向こうから勝手にやって来る不特定多数の人」と「政府主催の公的行事に政府側から招待する限られた人」という、全然ちがう次元の話を一緒くたにして“誰が反社かとかいちいちチェックするの難しいでしょ”って、産経の記者も似たようなことを言っていたが、あまりに無理やりすぎる。政府主催の公的行事なんだからチェックするのは当然、多すぎてチェックできないなら、数を絞ればいいだけだ。しかも野党議員を主語にしてシミュレーションするところが、三浦氏のいやらしいところだ。言うまでもなく、いま問題になっているのは、政府が反社会勢力とみられる人物を招待していたというもの。にもかかわらず、わざと野党議員のケースで話をすることで、さも野党にもそうした疑惑があるかのように“どっちもどっち”に持っていこうとしているのだ。このまったく比較にならないものを無理やり同列に並べる手法、産経の例の「野党議員も5000円で朝食会やってる」攻撃やネトウヨが拡散しまくっている「野党議員と反社勢力ツーショット集」なるフェイクと同レベルではないか。

 三浦氏といえば、以前は安倍政権を擁護するにも、もうちょっと高度に中立を装ったオリジナリティのある擁護の仕方をしていたと思うが、最近はもはや田崎スシローを通り越して、産経とかネトウヨが叫んでるような、無理やりすぎる政権擁護を連発している。この日も、もう完全にあっち側の人なんだということが、あらためて印象付けられた。

 こんな感じで30日の『朝生』は、ある意味では、田崎氏と三浦氏という“御用コンビ”による政権フォロー話法の「見本市」でもあった。もとより、この人たちに政治問題を語らせても、もはや手を替え品を替え安倍政権を擁護するだけということは明らか。本来、あらためて言うまでもないことだが、権力者は批判されなければ簡単に政治を私物化するものだ。この人たちには、そういう当たり前の観点が完全に抜けきっている。

 この日の『朝生』は、歴代最長政権となった安倍政権を検証するというフレコミだったはずだが、ほとんどレギュラー状態の三浦氏に加え、わざわざ田崎氏まで呼ぶなんて、本当に検証する気があったのか。

 これは他の多くのメディアにも言えることだが、田崎氏や三浦氏のような人物を重用することは、すなわち“権力のウォッチドッグ”であるという責務を放棄しているに等しい。いい加減、気づいてほしい。