『モーニングショー』でテレビの嫌韓煽動を批判した玉川氏


 衝撃を与えた韓国政府による軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄。米国政府もポンペオ国務長官が「失望」を示すなど国際情勢への波及は必至で、日本政府も「安全保障環境を完全に見誤っていると言わざるを得ない」「断固として抗議する」(河野太郎外務相)などと大慌てで批判している。

ネトウヨたちは「よくやった韓国ww」「これで国交断絶に近づいたwwww」などと高笑い。この国を一色に染める“嫌韓ファシズム”はとどまるところを知らない。

 そんななか、きょう放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で、番組コメンテーターの玉川徹氏が、GSOMIA問題をめぐる報道について実に冷静な批評をしていた。

 番組では、朝日新聞の「韓国、「歓迎」「最悪」二分」という記事を紹介。記事は、韓国与党の「共に民主党」の報道官が「協定を終了しても、実質的には韓半島の安全保障環境を害することはない。日本に対する断固たる態度は不可欠だ」と歓迎する一方、保守系の最大野党「自由韓国党」は「文政権は、国際情勢に目をつむり、安保のアマチュアであることを世界に宣言した」と批判、さらにSNSでも「韓国より進んだ情報分析能力を持った国から情報支援を受ける手段を台無しにすることが、何の国益か」「我々だけが損をするのでは」という声が出ていることをあげて、GSOMIA破棄に対する世論の反応がまっぷたつに分かれていると伝えるもの。

 『モーニングショー』のスタジオでは、韓国世論は二分しているという報道について、まず、金曜レギュラーのノンフィクション作家・吉永みち子氏がこのようにコメントした。

「二分しているということは、とてもある意味健全だと思います。やはり、全部一色になったときが一番怖いわけですよね。むしろなんか日本のほうが一色になりつつあるというような心配もあるんですけども。やはり、いろんな意見がこうやって出てくるということは、逆に冷静になりやすいんですよ。いろんな考えがあるんだなということで、抑えられますけども。

韓国よりもいま日本の報道・言論の自由度は低いというような国際的な評価になっているようですから。やはりこう言い辛いなというような雰囲気があると、なかなか世論がこういうふうに二分、三分の健全なかたちになっていかないことが怖いです」

 このコメントを受けて、MCの羽鳥アナが「損するじゃないと言っているのが韓国の国民で、いやいやいっちゃえいっちゃえというのが与党っていう。ここですよね」と玉川氏にふるのだが、すると玉川氏はこのように冷静に分析した。

「韓国の国民もそれはその歓迎する人も相当いるわけだから。まさに韓国の世論の二分なんですけども。僕はさっき吉永さんが日本の話をされましたけどね、こうなってくると、日本のほうがもしかすると感情的にはエスカレートしてるふうに僕には見えるんですね。

そうなったときに、今度はそれをメディアが煽る可能性がある。つまり、いわゆる世論の大勢にメディアがつこうとする場合がある。とくにテレビなんかがそうだから。テレビは、視聴率だから、韓国に対して「けしからん」と言ったほうが視聴率が取れるんだったら、そっち側の流れ、低きに流れる可能性があるんですよね。そうなると、やっぱりまた、それが国民の感情を煽っていく」

 玉川氏の言うように、感情的にエスカレートしているのはむしろ日本のほうだろう。とりわけテレビのワイドショーなどでは連日「韓国けしからん」の大合唱。

安倍応援団コメンテーターたちが安倍政権の正当性を主張し、韓国に対しては文大統領にも韓国国民に対してもやれ「反日だ」「幼稚だ」などと喚き立てている。

 玉川氏は、そうしたマスコミが大衆の劣情を増幅する方向へ動き、冷静に諌めることをしなくなってしまっている現状を、戦中のメディア状況と重ね合わせて、このように警鐘を鳴らした。

「それを、やっちゃだめだっていうようなことは戦前、われわれは学んでるはずなんですよ。ようするに不当に国民の感情を刺激してはいけない、冷静になることを呼びかけることが本来のメディアの役割だと僕は思っているので。だから、そういうふうにある種、志の低いほうに流れていく(ことはよくない)。本当にそう考えてやってるんだったらいいですよ。

そうじゃないけど、そっちのほうが視聴率取れるからっていうかたちで流れていくようなメディアがあったら、僕は残念です」

 まっとうな意見としか言いようがない。本サイトでも伝えたように、実は玉川氏と同じようなことを、先日、久米宏氏もラジオで語っていた。17日放送の『久米宏 ラジオなんですけど』で久米氏は、ワイドショーの日韓関係問題の取り上げ方について、反韓国的な意見を持つコメンテーターや識者ばかりが出演しているとして、「テレビが反韓国キャンペーンをやっているような匂いが、僕、少しだけするんです」。そのうえで、このように苦言を呈していた。

「世論をね、なだめるような仕事をするのがマスコミの仕事じゃないかと思うんですけど、どうもね、最近ね、必要以上に韓国を非難している」
「もしかするとね、いま韓国を叩くとね、数字が上がるんじゃないかってね。(中略)そうじゃなきゃ、連日やってるワイドショーもあるんですよ。

毎日、韓国叩きやってるんですよ」
「これ、たぶんね、数字がいいんじゃないかなって。民放ってやりかねませんからね。数字が良ければなんでも」

 マスコミの中心に身を置く玉川氏や久米氏が言うように、視聴率第一主義のワイドショーは「韓国叩きは稼げる」からこそ、毎日のように“嫌韓キャンペーン”を行っている。その結果、国民の劣情はブレーキペダルをなくし、感情的な応酬が「GSOMIA破棄」という最悪のケースの一歩目を踏み込んでしまった。玉川氏は番組のコーナーの終わりにこう語っていた。

「こういう結果として、何が得があるかっていったら、せいぜい嫌韓感情が満たされるぐらいのことしかない、いわゆる感情がスッとするぐらいのことしかないんですよ。それ以外のは全部、損ですから。得はないですから。そうするとね、損得ばっかり言ってんのかって言われるんだけど、損得大事でしょ。当たり前ですよそんなもん、経済大事に決まってんだから」

“嫌韓暴走列車”と化したマスコミを止めるには、まずは視聴者が冷静にならなければならない。