去年1月、埼玉県八潮市で発生した大規模な道路の陥没。市民生活に大きな影響を与えた事故は、『老朽化した下水道管の破損』が原因で起こったものとみられています。

 この事故を受け、全国で水道管の緊急点検が行われました。その結果、「老朽化」が進み対応が必要な下水道管の長さが「全国最長」の都道府県が大阪府であることがわかったのです。

 行政は対策を急いでいますが、コストの問題などにより簡単には進まない現実があるようです。

埼玉・八潮市で陥没事故

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 去年1月、埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没事故。突然、道路にできた穴にトラックが転落し、運転手の男性(当時74)が死亡しました。

 県が設置した原因究明委員会によりますと、下水から発生した硫化水素によって道路の地下にあった下水道管が腐食。破損した部分から土砂が流れ込んで陥没事故を引き起こしたとみられます。

 下水道管は設置されてから42年が経過していました。

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 道路は長らく通行できなくなっていましたが4月15日、4車線のうち2車線で通行が再開しました。車が通るのは事故から約1年3か月ぶりです

 (近隣住民)「『え?』と思って3度見くらいして。うそやろ通ってるほんまにと思って。もうなんていうか、言葉にできない」
 (近隣住民)「大きい道路なんでやっぱりよく使う。ありがたいです」

「真夏のボットン便所の中にいるような」事故で生活が激変した近隣住民

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 事故は道路以外にも住民たちの生活に深刻な影響を及ぼしていました。

 事故現場から約70mの場所に住む木下さん。

事故後、約1年もの間、悪臭に悩まされたと言います。

 (木下史江さん)「例えるなら真夏のボットン便所の中にいるようなというか。においってこんなに精神的にもやられてしまうのかっていうくらい」

 さらに、事故の影響でこんな変化も。車のミラーやシャワーをかけるフックなどの金属製品が下水から発生した硫化水素によって腐食したといいます。

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 また、事故が起きた交差点の目の前にある飲食店は…

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 (飲食店店主 松井多恵子さん)「ガーガーガーガー音がする、においはきつい、揺れる、そんなところで『いらっしゃいませ』なんてやってられないよ」

 復旧工事による音や振動などにより休業を余儀なくされてきました。影響は減ってきていますが、営業再開に不安を抱えています。

 (飲食店店主 松井多恵子さん)「常連さんだっていいところ見つけるからね。(店を)開けたからって客が戻ってくるかどうかもわからない」

対応急務の下水道管“全国最長”の大阪

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 暮らしを根幹から揺るがす下水道管の老朽化。実は特に関西で対策が急務になっています。

 5月11日、大阪府堺市で行われていたのは下水道管の点検です。

 カメラを搭載した小型の車を遠隔で操作し、下水道管の内側に亀裂や腐食がないか人の目で確認していきます。堺市ではこうした下水道管のメンテナンスに力を入れています。

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 八潮市の事故を受けて、全国の自治体で行われた下水道管の緊急点検の結果が4月発表され、原則1年以内に対応が必要な下水道管の長さが大阪府は約21.6kmと全国「最長」だったのです。

 専門家によりますと、府内の下水道管の整備は大阪市で1960年代から本格的に進められるなど全国に先駆けて行われました。

 そのため老朽化の問題にも他より早く直面しているのです。

下水道管の老朽化対策 工事に記者が同行

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 そんな中、点検と同時に下水道管を新しくする工事も進められています。今回は設置されてから62年が経った下水道管約540mの老朽化対策を行うといいます。記者も工事に同行しました。

 (記者)「足元に下水が、生活排水が流れています。中は真っ暗です。ライトがないと何も見えないような真っ暗な空間です」

 縦約2.2m、横2.7m。今回、工事が行われる下水道管の内部です。足元には絶えず下水が流れています。

 (記者)「トイレみたいなにおいがしますね」

 今回の工事に使われるのは、こちらの巨大な機械です。下水道管に沿うようにぐるぐると回転しています。

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 この機械で老朽化した下水道管の内側に塩化ビニル製の素材を巻きつけていき、中に新たな下水道管をつくるのです。

 従来のコンクリート製と比べ、塩化ビニル製の下水道管は腐食に強い上、この工法には他にもメリットがあるといいます。

 (堺市下水道建設課 足立正行さん)「この工法は掘ることがないので騒音とか振動をなるべく防ぐ。下水を流したまま施工することができるので、皆さまの下水の利用を止めていただく必要もございません」

工事にかかる費用は6億円超…問題は莫大なコスト

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 ただ、問題は莫大なコストです。今回の約540mの工事にかかる費用は約6億6000万円。1m当たり約120万円かかる計算です。

 また、工期は、約1年3か月。堺市が管理する下水道管は約3200kmあり、全てを一気に点検したり工事したりすることはできません。

 (堺市下水道建設課 足立正行さん)「限られた人、予算の中で工事をしていくので、優先順位の高いものからどんどん工事を行っている」

静岡・磐田市が導入した「宇宙水道局」とは

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 途方もない老朽化対策を迫られている中、それを効率化できる可能性を秘めたシステムが登場しています。

 (静岡・磐田市上下水道工事課 松尾聡幸さん)「漏水のリスクを5段階で評価したマップ。赤い部分がリスクが一番高いとされている箇所で、オレンジが2番目、緑が3番目」

 静岡県磐田市が2年前に導入したのが「宇宙水道局」です。

 このシステムは下水道管ではなく上水道管を対象にしていますが、漏水しそうな場所を見抜くもので東京の企業が2023年にサービスの提供を開始しました。

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 人工衛星から得た地表面の温度、地盤のデータ、さらに自治体から提供された漏水の履歴などをAIで解析し、リスクを5段階で評価するといいます。

「事故が起こる前に未然に防げたのは、大きな成果」

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 磐田市内の道路。一見なんの異常も見当たりませんが、宇宙水道局は漏水リスクが高いと診断しました。

 実際に中を点検したところ、水道管から水があふれ出ていました。

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 (静岡・磐田市上下水道工事課 松尾聡幸さん)「システムの導入前だと、なかなか見つけきれない漏水であったと考えているので、事故が起こる前に未然に防げたのは、大きな成果かなと考えている」

 磐田市では導入前と比べて漏水箇所を発見できる確率が、約6倍に向上したということです。

 開発した東京の企業は、上水道管で確立した診断技術を下水道管にも応用していきたいとしています。

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 (宇宙水道局を開発「天地人」 河瀬博信さん)「(下水道管は)構造も非常に入り組んでいたり複雑だったりするので、下水道に合わせた形のデータの使い方を考えまして、優先的に調査をするところを考えている」

 より深い場所により複雑な構造で張り巡らされている下水道管。効率的な方法の模索が喫緊の課題となっています。

(2026年5月22日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)

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