【動画】『記憶にございません!』予告編
かねてより三谷幸喜ファンを公言していた小出部長が迷わず『記憶にございません!』をチョイス。
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みんなの映画部 活動第57回[後編]
『記憶にございません!』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)
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■中井貴一、草刈正雄。ベテラン俳優に20代・30代がしびれる
ハマ:今日のお客さんは年齢層高かったよね。シニア層がメインって言っていいほどの。三谷幸喜ファンに加えて、中井貴一さんや草刈正雄さんのファンが多いんだろうな。それでどっかんどっかんウケてたし。
小出:三谷さん自身は「風刺じゃない」って言われてるけど、この映画がウケてるバックボーンは今の政治の空気も絶対にある。でも映画の構想自体はだいぶ前からあったというのがすごいよね。
ハマ:ずっと撮りたかったらしいよ、設定としては。
小出:だいたい撮影が終わってるのって1年くらい前だったりするじゃん。なのに現実とのリンクが怖いというか。
現実の日本で内閣改造をやったばかりのタイミングで公開になってさ、消費税も増税します、アメリカからとうもろこし買います、とか実際の政府が言ってるところで、劇中では「あんたが消費税を上げるからお金が貯まらないんだよ」って市民に言われたり、「アメリカンチェリー買いません、日本の農家守りたい」ってアメリカを突っぱねたりしてる。
ハマ:当たっちゃうっていうか、リンクしちゃうんですね。ちゃんと考えて作ってるものって、そうなるってことですね。
小出:“最悪の総理大臣ってことを想定しただけのコメディ”なのに、今の現実がそのコメディをなぞっちゃってるっていう恐ろしさ。
■本作最大の生命線は、“主演・中井貴一”
ハマ:しかしまあこの映画って、とにかく“主演・中井貴一”っていうのが最大の生命線っていう気がしますね。そのポテンシャルの高さがもっと世に浸透するきっかけになるかも。
小出:ちょっと前に中井さん主演の『グッドモーニングショー』(2016年)っていうコメディ映画があって。それもちょっと似てるっちゃ似てるのよ、設定が。
レイジ:俺も同じこと思った。
──同じ東宝映画で、吉田 羊さんも共演されてますね。
小出:監督は『踊る大捜査線』の脚本家として知られる君塚良一さん。
で、彼女が本気の恋愛モードになっちゃうわけですよ。でも中井さんはそんなつもりなくて、酔っぱらってたのを介抱してただけです、なんて言っていて。でもその件、今日の番組で公表しますからって言われて、朝の生放送が始まるんだけど、そこで立てこもり事件が起こって……みたいな展開。
キャラクター設定とか、窮地に追い込まれたところのドタバタなどちょっと『記憶にございません!』に似てるんですけど、やっぱり中井貴一さんってこういうコメディをやるとめっちゃ面白い。
演技のスキルがものすごくあるんでしょうね。だって実際ニュース原稿を読むシーンとかあるんだけど、すごい発声がしっかりしてて、本物のアナウンサーみたいだった。
レイジ:今、話していて思ったけど、結局『グッドモーニングショー』も今回のも、ある程度モテてるっていうところが腑に落ちるのがいいですよね。作品によっては、そんなモテるか? みたいな人がモテてるシーンとかあるじゃないですか。
でもあの中井貴一さんは本当にモテてそうで、長澤まさみさんが入れ込んじゃうのとか、吉田 羊さんとの関係もわかるっていう感じが良い。
ハマ:実際に色男だからじゃないかな。
小出:中井貴一さんって全然派手な感じじゃないけど、実はすっごい女子人気ありますよね。うちのベースの関根(史織)も「好きな俳優は中井貴一」ってずっと言ってる。
ハマ:うちのレーベルにもいる。中井貴一大好き女子。
──タレントイメージ的に“色男推し”はしてないんですけど、そこがまた良いんでしょうね。
世武:たしかにすごいさらっとした感じで、そんな目で見たことない。良い感じの大人の男性。
ハマ:いかにも昭和っぽい日本人イケメンでカッコ良いですけどね。イケメンの大人といえば、その横にいた草刈正雄さん。これまた最高!
小出:草刈さんもめっちゃ良かったね。草刈正雄ってすごいんだなって、ここ2~3年で思い知らされた。
ハマ:草刈正雄フィーバーが巻き起こってるからね。『なつぞら』をやりながらの今回の内閣官房長官役は良かったっすね。
世武:めちゃめちゃ良い人にも見えるし、めちゃめちゃ悪い人にも見えるし、どっちにもリアリティがある。
ハマ:ああいうのが本当に怖い。一見悪役じゃないヒールっていうか。
レイジ:終盤の会見のときのやたらライトでコミカルなノリも超面白くて良かったですね。
世武:あの人だからできる感じだよね。
──意外なキャストといえばROLLYさん。
世武:ROLLYさん、一見わからなかった。
小出:ROLLYさんもめっちゃ良かったね。
ハマ:ROLLYさん、良い意味で空気が違うし、ギター弾くシーンあったし。でも違和感なかった。
レイジ:すっぴんオファーは超これから増えそう。
世武:三谷さんの映画って、芝居のリハーサルとかみっちりやられてるんですか?
小出:三谷幸喜さんがまず撮る前に自分が入って、その日の演出の立ち稽古を自分でやる。自分でシミュレーションしてから役者さんが入って、それのリハをやって。だから撮影前にがっちり固めていて、「間」も計算しているでしょうね。演出法としては、“アドリブNG”の伊丹十三監督と近いのかもしれないよね。
──三谷さんは伊丹監督の最後の映画になった『マルタイの女』(1997年)に企画協力で参加していますから、そこでバトンタッチが起こったという見方もできます。
世武:なるほど。他の作品、私もちょっと観てみよう。
ハマ:こいちゃん的にはどうなんですか、世武さんにお薦めするなら『12人の優しい日本人』(1991年)とか?
小出:『12人~』は三谷さんの監督作じゃないんだけどね。原作・脚本だけ。あれは元々、東京サンシャインボーイズの舞台を別の人(中原 俊)が監督してる。
ハマ:僕は『ラヂオの時間』(1997年)と『竜馬の妻とその夫と愛人』(2002年/注:これも原作と脚本のみ。監督は市川準)が好きだけど。
小出:『ラヂオの時間』は三谷さんの映画監督一本目。それも東京サンシャインボーイズの舞台が原作。
世武:じゃあシチュエーションコメディ。
小出 もちろん。シチュエーションものとしては『ラヂオの時間』は素晴らしく良くできてると思うし、それだけ完成度の高い舞台だったっていうことでもある。あと『竜馬~』良いよね、面白いよね。
ハマ:観直したくなったな、昔のやつ。
TEXT BY 森 直人(映画評論家)