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「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する」
日本国憲法は、この書き出しで始まる。主権者は国民である。しかし、国民が直接、政治権力を行使するわけではない。
「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。」
国民が正当な選挙で代表者を選び、選ばれた代表者が、国民の厳粛な信託により、権力を行使する。代表者は、この基本を踏まえなければならない。国民に選ばれた代表者だからといって、好き放題、勝手し放題は許されないのである。とりわけ重要なことは、選挙に際しての公約である。
選挙で当選するとは、主権者である国民に公約を明示し、「その公約を必ず守る」という「契約」を交わすことと同義である。選出された代表者は、契約を履行する義務を負っていると認識する必要がある。
米国大統領選で新しい大統領に選出されたトランプ氏は、「トランプと米国有権者との契約」と題する文書を発表した。この文書にはトランプ氏のサインが記入されており、有権者のサイン欄に有権者がサインすることで契約書が完成される形態がとられている。
ビジネス界出身のトランプ氏ならではの流儀であると言えるが、選挙で選出される代表者は、「国民の厳粛な信託」によって政治権力を行使することになることを厳しく認識しなければならない。この点において、日本政治の現状はあまりにも悲惨である。