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落語という芸能がメディアとのかかわりの中でどのように変遷してきたことを探る意欲的な展示「落語とメディア」(早稲田大学演劇博物館)を見に行く。だいぶ前からチェックしていたのだが、ようやく見に行った時には図録が売り切れ。
雲田はるこの人気漫画「昭和元禄落語心中」のイラストをはじめ、柳家喬太郎のインタビューやらあれこれとフックが多かったのか、はたまた今の落語ブームを反映して入場者が多かったのか。地味な企画のはずだが図録が会期中に完売とは盛況で喜ばしいが、買えないとなると、それはそれで悔しい。
展示は、かつて歩いていける範囲にひとつはあったという、ラジオもテレビもない時代の庶民の娯楽の王道だったころの小さな寄席を再現するコーナーにはじまる。座敷で聞くこういう小さな会場での会がやはり落語という芸能にはあっているのだろうが、演者の息使いまで手に取るように感じられて(その演者の個性が合わない時などは特に)目のやり場にも困るようなところがある。とはいえ贔屓の会をこんな空間で聞ければ僥倖ではあるのだが。
続いて圓朝の名演が速記本になって出版され、また新聞連載で好評を博すなど、文章にされて複製されることになった「活字化」のコーナー。このことで、限られた1回のライブ(寄席)の観客の数百倍の人達にリーチし、活き活きとした速記本から、多くの人たちが自分の好きな時に名演家の落語の語りを楽しむことができるようになった。