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「ボケ」と「ツッコミ」は、お笑いの専門用語の中でも、もう一般用語として広く知れ渡っている言葉であろう。広まり過ぎたので、最早専門用語ではなくなっていると言っていい。
この二語が広まったおかげでお笑いに対する理解が進んだのは喜ばしいことであるが、弊害もある。あたかも、ボケとツッコミだけでお笑いの全てが説明できるというような空気が生まれたことである。お笑いには、もう一つ重要なファクターがある。それが、「フリ」である。
そこで本稿ではこの「フリ」の何たるかについて書いてみたい。
「フリ」が「ボケ」と「ツッコミ」に比べていまいち一般に浸透していないのは、この語が非常に多義的な点に原因があると思う。多義的であるがゆえに、正体がつかみにくいのである。
最も広い意味でこの語を使った場合、「何かに先立つ何か」という意味である。
「VTRのフリ」という場合、VTRに先立つ何かのことである。「何か」の内容はなんでもいい。スタジオのタレントが「VTRどうぞ!」と言うだけでもそれはVTRのフリであるし、例えば番組内でVTRを流す前には常にファンファーレを鳴らすようにしているのであれば、ファンファーレがVTRのフリである。
「ボケのフリ」と言った場合もこのように広い意味である場合があるが、特に、ボケを誘引する一定のフレーズや動きを指す場合がある。モノマネタレントのコロッケに、
「どうですか?