しかし周囲から期待をかけられた狩野だが、会場や記者会見場で披露したギャグは散々。復興を新しい旅立ちとかけているだろう渾身のバースデイソング型ギャグは、「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー、ハッピー・バースデー・トゥ・ユー、ハッピを~羽織って、はっぴを脱~ぐ」という、よく理解できないものだった。もちろん会場や会見場でも周囲は失笑。だがそんな空気にも関わらず狩野は笑顔で「ライブよりは受けてます」と言い放つ。その強心臓ぶりに会場や会見場は爆笑だった。
「先日放送された『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で、狩野は業界で働く女性から『嫌いな芸人』のNo.2に選ばれました。その主な理由は、『好きになれない』や『頼りない』といったもので、狩野は相当ショックを受けているようでしたね。ただ、理由をよく聞くと、『礼儀正しいく素敵な人だが...』や『応援したいが...』という前置きがありました。そのことが狩野を特徴付けているんじゃないですかね。つまり彼を否定する前には、まず肯定しておきたくなるような雰囲気が彼にはあるんでしょう。本当に嫌いだったらそんなこといちいち言いませんよね」(業界関係者)
嫌いな芸人のNo.2に選ばれた狩野は、その理由を告げられるとき、FUJIWARAの藤本敏史の手を握り、辛らつな意見から身を防ごうと必死に唇をかみ締めた。
「番組内で藤本が、狩野を見ていると胸がキュンとするというようなことを言っていましたが、まさに視聴者もそういったことを感じているのではないでしょうか。ギャグは寒く、女性にも人気がない彼があれだけの舞台で活躍できるのは、やはりどこか放っておけない感じがするからでしょう。
たむらけんじには「そのポテンシャルでここにいるのがすごい」と言われ、フットボールアワーの後藤輝基には、「(この先)ないな」と一蹴された狩野英孝。「日経エンタテイメント」(日経BP社)による毎年恒例の「嫌いな芸人ランキング」でも、3年連続トップ10に入っている彼だが、ネットなどでの評判を見ると最近は上々だ。震災被害への同情や、震災後実家の神社を継ぐことを決心したというニュースが、彼の背中を押しているのだろう。だが、単にそれだけで狩野への評価が変わったとは思えない。やはり前出の放送作家が指摘したように、彼の好感の持てる天然さというのが、ここ数年の活躍で伝わってきたのだろう。
(文=峯尾)
(※画像はDVD『ファーストライブ Ciel』より)