目次
  • 話し合っておく
  • 把握しておく
  • 共有しておく
  • 残しておく
  • 介護が必要になったときに何をすればいいか

株式会社Qship(キューシップ)代表・介護福祉士の梅本聡です。

2025年、約700万人が認知症の状態になると予測されています(2017年度高齢者白書より)。

これは、65歳以上の高齢者のうち、約5人に1人が認知症の状態になるということになります。そして認知症は、日々の暮らしの中に何らかの支援・介護が必要な状態です。いわば認知症と介護は他人事ではなく、誰にでも起こり得ることです。

そこで今回は、「認知症と介護が始まる前に今できることはなにか」を考えます。

認知症と介護が始まる前に今できることとしては、次の4つが考えられます。

  • 話し合っておく
  • 把握しておく
  • 共有しておく
  • 残しておく

それぞれについて、具体的に説明します。

話し合っておく

「こうなったとき」を想定して話し合おう

想定しておくべき心身状態の例
  • 認知症の状態になったとき
  • 老化や病気などで心身機能が低下し、口から食べられなくなったとき
  • 終末期が近づいてきたとき
  • 救急搬送されたものの、回復が難しいとき

介護施設・事業所は、ご本人の生活支援や介護の内容などの提案は行いますが、決定することはできません。

決めるのはご本人であり、ご本人による意思確認が難しい場合は、ご家族に決めていただきます。

だからこそ、「こういうときはどうしてほしいのか?」「元気なときに、こう言っていた」という具体的な話があればあるほど、、ご本人の希望に沿った選択がしやすくなります。

どこで暮らすのか?

介護が必要になった場合、どこで暮らすのかを考えておくことが大切です。

自宅で暮らすのか、独立した子どものもとで暮らすのか、介護施設に入るのかなど、本人の希望を聞いて話し合いましょう。

また、介護施設に入ることを想定した場合は、次のことを本人に確認しておくことが大切です。

  • 至れり尽くせりの「お世話型介護」を望むのか
  • 自分でできることは自分で頑張ることを基本とした「自立型の生活支援」を望むのか

この選択によって、利用する施設の種類が変わります。また、候補施設の具体的な支援内容などを確認して入居先を決めることができます。

把握しておく

両親のお金のこと

介護に直接かかる費用のほか、生活費、医療費(診療費、薬代、医療器具代、通院時の交通費など)、健康保険料・介護保険料・各種税金の支払いもあります。

より良い介護生活をマネジメントするために、親のお金にまつわることはできるだけ把握しておきましょう。

普通預金・定期預金
  • 複数の銀行に口座をもっている場合があります。それぞれの金融機関・支店名と残高、届出印を把握しておきましょう。
  • 年金が振り込まれるメイン口座、各種引き落としの口座などを確認しておきましょう。
受給している年金
  • 年金の受給額を確認しておきましょう。
  • 貯蓄だけでなく、収入(年金)を把握することで、介護が必要になった際の生活設計や介護施設を見つける際の基準(毎月どれくらいの費用が施設に払えるか)も設定しやすくなります。
加入している保険
  • 保険金や給付金は保険会社に請求しないと受け取れません。保険会社と保険の種類・内容を確認しておきましょう。
  • 保険の内容と支払っている保険料が見合っているか、確認しましょう。
家族の認知症介護が始まる前にやっておくべき4つの対策の画像はこちら >>

親の近況のこと

介護は突然始まります。できるだけ親と連絡を取り合い、本人のできること・できなくなってきたことなどの把握に努め、早めの対応を心がけましょう。

親と交流のある友人・知人・ご近所さん、親が暮らす地域の民生委員を知っておく

長年に渡って交流のある方たちは、ちょっとした異変に気づいたりしてくれます。また、日常的に声をかけてくれたり、自宅を訪ねて話し相手になってくれたり、暮らしのちょっとしたサポート(例:ゴミ出しや見守りなど)をしてくれたりすることもあります。

民生委員も、親(高齢者)を守ってくれる存在として、訪問や見守りなどを行ってくれます。

だからこそ、「いざというときの支え」になってくれる方たちを知り、子世代がその方たちとつながっておきましょう。

兄弟姉妹の希望

親に対する想い、親の介護のことや看取り期の受けとめ方、考え方などはそれぞれです。また、それぞれに生活があり、経済状況も違います。

そのため、いざというときに兄弟姉妹間でズレが生じ、トラブルになる場合があります。

親本人の意向をもとに、兄弟姉妹それぞれの考えや希望などを確認し合いましょう。

兄弟姉妹で親の介護の役割分担を決定しておく
  • 主となる介護者や役割分担を決める際は、特定の人に負担が集中しないように注意しましょう。金銭的な援助を行うという役割分担の方法もあります。
  • 取り決めを無視する・覆すということがないよう、決定は合意形成を基本にしましょう。

共有しておく

「知らなかった」は、トラブルのもとになります。

主となる介護者から親の生活や介護などにかかった費用の金額や、〇日から検査入院する・ショートステイを利用するといった情報、本人の体調のことなどを発信し、兄弟姉妹間で「親のこと(情報)」を共有しておきましょう。

おすすめはLINEなどのSNSを活用してグループチャットなどで情報を共有することです。

残しておく

何かおかしいなと気づいたことは、まず記録に残しておきましょう。それが、認知症の早期発見につながることもあります。

ポイントとしては、それまではその人になかったような言動が2つ、3つ起こってきたらメモを正確にとり、専門職に相談しましょう。

介護が必要になったときに何をすればいいか

1.それまでになかったような言動が何度もおこる状況になったら、「地域包括支援センター」へ相談に行く 介護のことは介護のプロに相談するのが一番です。また、地域包括支援センターは介護保険だけではなく、医療・福祉サービス等にも詳しいのでご本人の状況などに沿った相談相手になってくれます。 2.認知症のことは自己診断しない。必ず専門医療機関・医師を受診する 風邪で眼科には行きません。認知症の疑いも含め認知症のことは、認知症疾患医療センターや認知症サポート医を受診し、さまざまな症状への対応や相談、助言をしてもらいましょう。 3.手続き・契約などはできる限り同席する

介護保険などの利用は、手続きや契約がたくさんあります。高齢の親に細かなことを覚えてきてもらうのは酷です。

把握と確認は、「あれはどうなったの?」「これはどういうことなの?」と親に問いただして行うのではなく、できる限り手続きや契約は同席して行いましょう。

4.家族の介護は身内(自分)だけで抱え込まない。直接介護の分担は兄弟姉妹ではなく介護のプロに頼む

家族が要介護状態になったら、絶対自分ひとりでみると思わないことが大切です。

本人が自宅で暮らすことを望んでいても、家族が自宅生活をさせてあげたいと望んでも、家族が介護しきれない状態になれば、どちらの望みも叶わなくなるからです。

また、兄弟姉妹での直接介護の分担は、「私はあれをした・あなたは何をした」と、揉めごとになりがちです。

共倒れと揉めごとを回避するためにも、直接介護のことは介護保険サービスを利用して介護のプロに頼みましょう。

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