執筆:井上 愛子(保健師)
医療監修:株式会社とらうべ

日本人の死因として特に多い、がん・急性心筋梗塞・脳卒中は一般的に三大疾病と呼ばれます。
医療保険でも「三大疾病保障プラン」があるほど、将来の健康を考えた時に漠然とした不安を感じてしまうこれらの病気。

実際のところ、どのような人がかかりやすいのでしょうか。また、遺伝は影響するのでしょうか。
ご一緒に詳しく見ていきましょう。
三大疾病:遺伝なのか環境なのか?
「遺伝」にはさまざまな捉え方がありますが、遺伝子によって、親から子や、細胞から細胞へ、生命の基本となる情報が伝達されることを意味します。
親子で顔や性格が似ていることは珍しくないように、遺伝子レベルで、ある部分に同じ情報を持った血縁者は、他人と比べて似通った性質を持つことは事実です。
一方で生活環境をともにする家族は、食事の好みや運動、睡眠といったライフスタイルも近いものになりがちではないでしょうか。

がん・急性心筋梗塞・脳卒中は「生活習慣病」とも言われ、食生活や運動習慣といった毎日の生活も影響することが多い病気です。
つまり、がん家系、家系的に高血圧が多いといった傾向は、もちろん遺伝の関係も否定できませんが、それ以上に家族で似やすい生活習慣が関わっていると言えるでしょう。
遺伝性のがんは1%以下?
実際にがんになったとき、その原因を正しく特定するのは難しいこともあり、がん学会の発表では「遺伝性のがん」と認められるものは1%以下と言われています。
中でも、子どもの目の奥にできる「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」と呼ばれる病気は、遺伝性のがんとして有名です。
このように、がんの種類によって遺伝する可能性が高いものもあります。
その他、統計的に遺伝性が見られる場合もあると考えられているものに、大腸がんや乳がん、卵巣がんなどがあります。

ただし、これらも生活習慣が関わる可能性の方が大きく、家族にがんになった人がいるからと言って、必要以上に怖がるよりも毎日の生活を見直す方が大切です。
国立がん研究センターでは、日本人のがん予防にとって重要な、次の5つの生活習慣を掲げています。
食生活を見直す
適正体重を維持する
身体を動かす
禁煙する
節酒する
この5つを意識して生活習慣を見直すことが、がんになる確率を低くする第一歩です。
血管は大丈夫?急性心筋梗塞と脳卒中
急性心筋梗塞と脳卒中は、どちらも血管の状態が深く関わる病気です。
一言でいえば、急性心筋梗塞は血管が硬くなったり、血の塊が詰まったりして必要な血液が心臓に届かなくなった状態です。
また脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破けたりするなどして脳に障害をきたす病気の総称です。

心筋梗塞や脳卒中は、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった病気と深い関わりがあります。これらは、たとえ「血圧が高い」「血糖値が高い」といった状態が続いていても、進行しなければ自覚症状はほとんどありません。
しかし長年放っておくと徐々に血管にダメージを与え、心筋梗塞や脳梗塞を起こす引き金となるのです。
高血圧や糖尿病、脂質異常症は、それぞれ遺伝が原因で発症する確率もゼロではありません。
一方で家系的に同じ病気が多い場合は、「濃い味つけが好き」「甘い物や脂っこいものが好き」といった幼いころ親しんだ家庭の味や食習慣が影響している可能性の方が大きいと言えます。脳卒中の中でも、「くも膜下出血」と呼ばれるタイプは、遺伝のリスクが高いという報告もあります。

遺伝の影響が心配な場合は、健康診断で血管や脳・心臓の状態を定期的にチェックしておく必要もありますが、何より気をつけるべきは、当たり前になっている普段の生活習慣と言えるでしょう。
心筋梗塞や脳卒中は、生活習慣の改善で、ある程度予防することができます。
食生活の乱れや運動不足、睡眠不足、ストレスが多いといった生活が血管をはじめとする身体の負担となっていないか、この機会に振り返ってみましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供