
9月9日夜(現地時間)にオンラインでのヴェネチア国際映画祭記者会見に出席した黒沢清監督
ヴェネチア国際映画祭が12日(現地時間)に閉幕、『スパイの妻』の黒沢清監督が銀獅子賞(監督賞)を受賞した。日本人の監督の同賞受賞は第60回(2003年)に『座頭市』で北野武監督が受賞して以来のことになる。
新型コロナウイルス感染拡大が収まらない状況下で、社会的距離確保のために会場には空席が設けられ、参加者は登壇時以外はマスク着用という例年とは全く違う光景のクロージング・セレモニーで、黒沢監督や出演者の蒼井優、高橋一生のヴェネチア入りも実現しなかったが、監督は東京から受賞のビデオメッセージを送った。
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監督はヴェネチアに行けなかったことを残念に思うことを告げつつ、受賞について「長い間、監督に携わってきましたが、この年齢で喜ばしいプレゼントになりました」と語った。
『スパイの妻』は太平洋戦争開戦前夜の時代、神戸を舞台に貿易商の夫(高橋一生)が満州で恐ろしい国家機密を知り、夫と共にスパイの疑いをかけられた妻(蒼井優)の物語。高精細の撮影で、今年6月にNHK BS8Kで放送された同名ドラマの劇場版。10月16日より日本公開予定。
コンペティション部門審査員長のケイト・ブランシェットは「素晴らしい演出の作品が揃い、審査は非常に難しかったのですが、この結果は議論の余地のないものです」と絶賛。審査員でドイツの映画監督のクリスティアン・ペツォールト (『未来を乗り換えた男』)は「黒沢監督は、時代劇で、オペラのような映像とリズムで、とてもハードで政治的な内容を描いています。このような映画をここ数年見ることはなかった。1930年代、40年代の伝統を非常にモダンな形で描いています」と絶賛した。