八雲の目を通して見る「日本が失ってきたもの」

1890年に来日後に帰化して日本人 小泉八雲として生涯を終えたラフカディオ・ハーン。『NHK 100分で名著』2015年7月号では、小泉八雲が日本にやってきて最初に上梓した『日本の面影』を取り上げる。なぜよく知られた『怪談』ではなく、『日本の面影』なのか──講師の早稲田大学教授・同国際言語文化研究所所長の池田雅之(いけだ・まさゆき)氏がその意図を解説する。

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今回、よく知られた『怪談』ではなく『日本の面影』を取り上げたのには、二つの理由があります。一つは、この作品を通して、日本文化と日本人の生き方についてもう一度問い直してみたいからです。『日本の面影』には、ここ120年ほどで日本が失ってきたものが克明に書き留められています。それは、近代化の波に飲み込まれる直前の、慎ましくも誠実な庶民の生活ぶり、美しい自然、暮らしの中に生きる信仰心などです。
八雲はそれらを丸ごと双の腕(かいな)で抱きとめ、讃えています。彼の日本賛美は、現代の私たちにとってはいささか面映(おもは)ゆく感じられるかもしれません。しかし、外国人だった八雲の目を通して描かれる日本像を読むことで、私たちは、日本文化とは何か、日本人とは何かを、もう一度見つめなおすことができるように思います。
もう一つの理由は、この作品が異文化理解についての大きなヒントを与えてくれるという点です。八雲は、ギリシャに生まれてアイルランドに育ち、イギリス、アメリカ、仏領のマルティニーク島での生活を経て日本にやってきました。さまざまな文化を経験してきた八雲は、異文化に対してやわらかく相対的な、独特の視線を持っていました。「上から目線」ではなく、むしろローアングルの視点で、いろいろなものを丹念に見、聞き、それらに共鳴したのです。異文化に対する八雲のこのようなアプローチは、さまざまな文化・文明間の対立が起きている現代の私たちにとって、きわめて示唆に富むものといえるでしょう。
■『NHK100分de名著 小泉八雲 日本の面影』より

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2015年8月9日のライフスタイル記事

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