ナショナリズムの暴走が生んだ「鬼胎の時代」

司馬遼太郎が晩年に執筆したエッセイ『この国のかたち』の中に、司馬が昭和について語った代表的な文章が収められている。
「昭和ヒトケタから同二十年の敗戦までの十数年は、ながい日本史のなかでもとくに非連続の時代だった」(一、4「“統帥権”の無限性」)
さらに、『この国のかたち』の「“雑貨屋”の帝国主義」という章では、日露戦争の勝利から太平洋戦争の敗戦に至る四十年間は、日本史の連続性から切断された「異胎」(一、3)の時代だとし、同じ章の別の箇所では、「明治憲法下の法体制が、不覚にも孕(はら)んでしまった鬼胎(きたい)のような感じ」(同前)とも表現している。
「鬼胎の時代」とは何か。歴史家・静岡文化芸術大学教授の磯田道史(いそだ・みちふみ)氏が詳解する。

* * *

■「鬼胎の時代」とは何か

この「異胎」「鬼胎」とは、つまり「鬼っ子」──自分の子どもではあるが親に似ていない子ども─で、司馬さんは、この時代が日本史上の特異な、非連続の時代であったという意味で用いています(「異胎」と「鬼胎」はほぼ同じ意味ですので、ここでは「鬼胎」で統一します)。日本の歴史であるけれども、他の時代と大きく違う。明治と昭和は切断されている。この違いというものをどうとらえるか──と司馬さんは問うわけです。
しかし、司馬さんが本心から、明治と昭和が完全に切断されている、と考えていたのか、私には疑問に思うところがあります。社会の病というのは、現実の病気に似て潜伏期間があり、昭和に入ってとんでもない戦争に突入してしまう菌や病根は、やはり明治に生じていたのではなかったか。明治という時代は、まだそれが発症していない「幸せな潜伏期間」だったのではないか。

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