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日本に茶を伝えたのは、臨済宗の開祖、栄西(えいさい)禅師と言われています。
精進料理は禅宗とともに全国に広がり、茶とともに禅宗の儀式に欠かせないものとなりました。そのスタイルは、一般的な精進料理の作法や茶の湯の形とはかなり違うようです。それは臨済宗の寺院で行われている「四ツ頭」の茶事(正式には「茶礼(されい)」と呼ばれます)で垣間(かいま)見ることができます。
北鎌倉にある臨済宗の名刹(めいさつ)、円覚寺では、開祖、無学祖元(むがくそげん)禅師の命日に開山忌を行いますが、四ツ頭はその中の儀式の一つです。この四ツ頭は、古式正伝による喫茶法そのままの、日本最古の茶事の形と言われています。
四ツ頭の茶事では僧たちがともに精進料理を食し、茶をいただきながら、約730年前に亡くなった開祖がそばにいるかのごとく振る舞います。こうすることで、つねに開祖とともにあることを認識するのです。
これまで円覚寺の四ツ頭は、円覚寺派の僧侶だけで行い、限られた人のみが見学を許された秘められた儀式でした。しかし、現円覚寺派管長・横田南嶺(よこた・なんれい)老師の「円覚寺をより開かれた寺にしたい」との考えから、一般参加の行事として開催されたこともあります。
■門前が守り続けてきた精進料理の文化
円覚寺の四ツ頭の精進料理を例年担当しているという、北鎌倉の精進料理店を訪ねました。ここでは、『吾妻鏡(あずまかがみ/東鑑)』の記録や口伝をもとに過去の精進料理を再現するなど、文化の担い手としての取り組みにも力を入れています。