日本の国をつくったオオクニヌシは、兄弟たちによって、2度も命を奪われましたが、いずれも母の愛によってよみがえりました。最終的には運命の人と出会い、縁結びの神様に。
そんなオオクニヌシが祀られている京都市東山区の地主神社(じしゅじんじゃ)は縁結びの聖地として知られています。國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所教授の平藤喜久子(ひらふじ・きくこ)さんと共に訪ねました。

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清水寺の本堂にある「清水の舞台」を過ぎて、すぐ左手にひときわ賑やかな社(やしろ)があります。清水寺の参拝客のほとんどが、この小さな神社へ。石段を登ったところが、縁結びのパワースポット、地主神社です。コンパクトな境内に、本殿、拝殿、摂社(せっしゃ)、末社(まっしゃ)、手水所(てみずしょ)、社務所などがぎゅっと詰まっていて、ここにいるだけで何やらご利益が得られそうな予感がしてきます。

誰もが目指すのは、「恋占いの石」。本殿前に、10mほど離れてひざの高さほどの神石(じんせき)が2つあり、片方の石から反対側の石に目を閉じて歩き、無事たどりつくことができると恋の願いがかなうという願掛けの石です。この石で占うことが、神社参拝の目的の1つになっているようで、順番待ちの状態です。
こちらの神社になぜ、こんなにも大勢の人がご縁を求めて訪れるのでしょう。それは、ご祭神にも関係があるようです。主祭神は神様界きってのイケメン、オオクニヌシ。
因幡の白兎を助けた優しい神様でもあり、境内にはオオクニヌシとウサギの石像もあります。さらに、オオクニヌシの父母神のスサノオとクシナダヒメ、そして、クシナダヒメの父母神であるアシナヅチとテナヅチ、計5柱の神様をお祀りしています。3世代にわたるため、子授け安産のお社としても信仰を集めているのです。
創建は日本の建国以前と伝えられ、弘仁(こうにん)2年(811)に嵯峨(さが)天皇が行幸されたときには、境内の桜の美しさに心を奪われ、3度も車を引き返させたという逸話が残っています。
■『NHK趣味どきっ! 幸せ運ぶ! ニッポン神社めぐり』より