建築物としての銭湯の魅力

建築物としての銭湯の魅力
入母屋造(いりもやづくり)の屋根 撮影:森山雅智
ひと目で銭湯とわかる、神社仏閣のような独特の店構えは、東京の銭湯に多い様式です。そんな銭湯建築の見どころを、一級建築士の今井健太郎さんに教えてもらいました。

* * *

「東京で現在のような宮造りの銭湯が増えたのは、1923(大正12)年の関東大震災後のこと。それ以前は町家造りの建物が多かったようです」と、銭湯建築に詳しい今井さん。銭湯建築の鑑賞ポイントは、まず何といってもその外観、と話します。
「震災後の街の復興が進む中、もとは『楽しんでお風呂に入ってもらいたい』という遊び心の表れだったのではないでしょうか。やがて人気を呼び、流行となって広まっていったようです。銭湯の経営者は、横のつながりが強く、流行が広まりやすいという側面もあるようですね。いずれにしても、宮造りは東京近辺の流行で、関西にはあまり見られませんでした」
屋根は、破風(はふ)や懸魚(げぎょ)など、寺社や城の造りに通じるディテールが盛り込まれ、威風堂々たる構え。左右はシンメトリーで、破風の両脇に観賞用の坪庭を設置するのも贅沢な遊びです。
入り口ののれんをくぐると、まず目に入るのが下駄箱。
「銭湯の下駄箱には昔ながらの定型があって、古くからの鍵屋さんがつくるものは、みんな木製の大きな鍵なんです」
そして中に入ると、印象的なのが高い天井。寺院のお堂を思わせる空間です。
「格子状に区切られた格(ごう)天井は格式が高く、宮造りの典型的な要素。番台の材質や庭などとともに、銭湯が大繁盛で、店どうしデザインを競っていたころを彷彿(ほうふつ)させますね」
豪華な造りの一方で、おむつ台や洗い場の低い仕切りなど、昔の日本の暮らしを思わせる要素もちらほら。生活に密着した施設であることを実感させます。
「今の暮らしに合わせて、変化した部分もあります。例えば煙突。燃料が薪からガスに変わったことで、煙突を短くしたり、なくした銭湯もあるんですよ」
■『NHK趣味どきっ!銭湯 ボクが見つけた至福の空間』より

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