サウディ・イラン対立の深刻度 - 酒井啓子 中東徒然日記

 サウディアラビアでのシーア派宗教指導者ニムル師の処刑、在テヘラン・サウディ大使館への抗議の暴徒化、イラン・サウディ間の国交断絶、親サウディ諸国の対イラン断交――。年頭から急に緊迫化した中東情勢に、友人がフェースブックでこう嘆いた。

 「いつも『問題は宗派対立じゃない』といい続けてきたけど、またくりかえさなきゃならないのか」。

 友人の嘆きのとおり、日本のメディアには、イラン=シーア派、サウディ=スンナ派の宗派対立との論調が相次ぐ。だが、英インディペンデント紙にロンドン大学比較哲学の教授が書いているように、「イランとサウディ間の緊張関係は宗教とほとんど関係ない」。むしろ「両国関係は地域覇権をめぐるもの」であり、「神なき世界政治の現実」だと、ムガッダム教授は言う。サウディのシーア派について2014年にThe Other Saudiを出版して、いまや世界中で売れっ子の英オクスフォード大若手研究員、トビー・マシューセンは、「ニムル師の処刑はもっぱら国内世論向けの行動」と指摘している。

 宗教や宗派じゃなく一連の展開を説明すれば、こうだ。

① サウディアラビアは、イラン革命で王政を倒してイスラーム主義を掲げた共和政政権を作り上げたイランを脅威視している。同じ発想でいけば、サウディでも王政が倒れるからだ。

② だがこれまでは、革命イランに対して他の国が前線に立って、これをやっつけてくれた。80年代にはイラクがイラン・イラク戦争で、湾岸戦争(1991年)以降はアメリカがイランとイラクを「二重封じ込め」作戦によって、である。サウディは、自分で何かしなくても安心できた。
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