従来の航空機は、プロペラの回転やジェットエンジンの噴射から推力を得て加速前進し、前進移動と固定翼による揚力で浮上する仕組みとなっており、プロペラやタービンといった可動部品と燃料に用いる化石燃料が不可欠だ。
これに対し、高電圧を加えて空気分子をイオン化し、「イオン風」と呼ばれる気流を発生させ、この推進力と揚力で飛行する、電気空気力学をベースとした「可動部品のない航空機」が、世界で初めて飛行実験に成功した。
イオンが生み出す推進力
米マサチューセッツ工科大学(MIT)のスティーブン・バーネット准教授らの研究チームは、2018年11月21日、学術雑誌「ネイチャー」において、電気空気力学的推進系を実装した小型固定翼航空機の設計とその飛行実験に関する研究論文を発表した。
この航空機は、重さ5ポンド(約2.27キログラム)と軽量で、5メートルの翼を持つ。翼の前部には正極となる細い針金、後部には負極となる太い針金がそれぞれ配置され、胴体部には、動力源として4万ボルトの超軽量高圧電力変換装置も備えられている。
4万ボルトの高電圧を加え、正極となる前部の針金を通電させると、周囲の空気分子から負に帯電した電子を引き寄せ、残された空気分子は新たにイオン化されて、後部の負に帯電した電極に引き寄せられる。負の電極に向かってイオンの流れが新たに形成されている間、それぞれのイオンは他の空気分子と頻繁に衝突を繰り返して推力を生み出し、航空機はこれによって推進力を得る仕組みとなっている。
プロペラ機の場合、騒音の発生源はエンジン。それだけの電源をプロペラを回すのに使えば騒音のないプロペラ機が作れる。