団地は最前線、団地こそが移民の受け皿として機能する?

<自身も子供の頃、団地に住んでいたという安田浩一氏によれば、高齢化の問題を抱える団地が今、排外主義の最前線になっている。埼玉県川口市の芝園団地などを取材した安田氏による『団地と移民』が描く日本の未来>

『団地と移民――課題最先端「空間」の闘い』(安田浩一著、KADOKAWA)の著者は、自身も子供のころ住んでいた団地という環境について、以下のように記している。

団地は私にとって「世界」そのものだった。コンクリートの箱に、喜怒哀楽のすべてが詰められていた。給水塔の見えない場所に行くと、知らない国の知らない場所に置き去りにされたような気持ちになった。そして専業主婦だった母親にとっても、団地こそが「時代の風景」だった。高度成長のただなかにあって、団地は未来へと向かう階段の踊り場のような存在だった。その先には、もっと豊かな暮らしがあるのだと信じられていた。 他人のプライバシーが筒抜けであるということは、我が家の秘密だって漏れていたはずだ。隣に、いや、上下左右の家に、私の成績も悪癖も伝わっていたはずだ。だが、それでも「気にならなかった」と母親はいう。 いまは隣宅が何をしている人かさえ知らない。調味料を貸してくれるようなご近所さんもいない。 この先、きっとよいことがある。そう信じさせてくれるのが団地という存在だったという。(「まえがき――団地は『世界』そのものだった」より)

母親にとって団地がどのような存在であったか知りたかったとの思いから、母親を連れ、かつて暮らした団地を訪ねたときの描写だ。「子どもの声も響かない静かな団地のなかを、五〇過ぎの私と八〇近い母親がゆっくり歩く」という文章を目にしたとき、数十年前の私自身の記憶が蘇ってきた。
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