今号ではアメリカを離れて、東南アジアの国「マレーシア」で取材を敢行した。現地は日本と同じ左側通行で、右ハンドルのクルマが基本。日本車輸入天国かと思いきや、マレーシア独自の自動車産業が発展していたのだった。
【ニッポン旧車の楽しみ方 2016年 マレーシア・スペシャル Vol.1】
例年のように厳しい天候に見舞われた、2016年8月の日本列島。暑い日には旧車に乗るのがためらわれるし、台風が来るとなればクルマへの被害が気にかかる。
その8月に訪れた南国マレーシアは、梅雨明けの日本のような天気だった。
「プロトンとプロドゥアという国産車です。日本の三菱とダイハツと同じクルマなんですよ」
ミーティング会場に向かうクーラーの効いた新車の中で、ナイムさんが教えてくれた。
「ミーティングをクアラルンプールでやることが多いのは、国内どこからでも4時間以内で来られるからです。細かい車種分けをした集まりはあまりしなくて、『日本車全部』みたいなくくり方ですね。だからオーナー同士の垣根みたいなものはありません。日本旧車をリアルタイムで体験した世代には、閉鎖的なクラブ運営をしている所もあるようですけれど」。
三々五々到着するクルマの中から姿を見せるオーナーに対しておざなりに挨拶を交わす。
>>【画像25枚】若年層が主体だったマレーシアの日本旧車ファン。
日本旧車のファン層がそれほど厚くないマレーシアの様子が、ミーティングの運営方法から想像できた。
高層ビル群の谷間にあるオープンカフェで朝食をとりながら、ナイムさんは同席のショーン・ユーさんとカズキ・フーさんと、英語とマレー語を織り交ぜながら説明を続けた。時計の針はすでに10時半。ミーティングの集合時間は9時らしいのだが、これがマレーシアの人の時間感覚なのだろう。そもそも真夏だというのに朝明るくなるのが7時過ぎなのである。この国の朝の始まりは遅い。
時折雲の合間から太陽がのぞく薄曇りの天気。昼前の会場には10台ほどの日本旧車がそろっていた。屋外に立つとジワッとにじむ汗が、肌とシャツの間に忍び込むように広がっていく。みんなはそれを避けるかのように、止めたクルマをよそに日陰に集まっておしゃべりに興じていた
けだるかった午前が、やがて午後になるとようやく目が覚めたかのように会場に元気がわき出した。誰もがスマートフォンやゴープロを取り出して互いに記念撮影を始める。志を共にする仲間との交流を楽しんではしゃぐ様子は、南国特有の人懐こさそのもの。
「週末の朝とかの道路の空いている時間帯がベスト。渋滞にはまると暑くてつらいから。一年中夏なんだし」
旧車をいつ走らせるのかという問いに、参加者はそう声を揃えた。常夏の国マレーシアは文字通り、いつでも夏。クーラーのない旧車にとってドライブ日和はあり得ないのだ。
【2】に続く