日本では知名度の低い「ビタミンD」だが、北欧では国がサプリメントの摂取を推奨するほどその重要性が認められており、さらに、米国では新型コロナウイルスの重症化を防ぐ可能性まで報告されている。

満尾クリニックの満尾 正院長は、日本人にはビタミンDが足りていないと警鐘を鳴らす“ビタミンD第一人者”のひとり。
オーシャンズ世代にビタミンDが必要な理由を詳しく聞いた。

話を聞いたのはこの人!
日本のおじさんに足りないのは「ビタミンD」だった!専門家に教わる驚きの効果

満尾 正●東京・広尾にある「満尾クリニック」院長、医学博士。2002年、日本で初めてのアンチエイジング専門院を開設。キレーション治療を中心にした、内科的アンチエイジング治療を行う。著書に『医者が教える 最高の栄養 ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)。



日本人の8割は「ビタミンD」不足

日本のおじさんに足りないのは「ビタミンD」だった!専門家に教わる驚きの効果



 ――まず、ビタミンDとは何ですか?

ビタミンDの本質はビタミンではなく、コレステロールを原料とするステロイドホルモンの仲間です。ステロイドホルモンと聞くとびっくりするかもしれませんが、私たちの体はさまざまなホルモンが複雑に機能して健康を保っています。

ビタミンDは全身の細胞が元気でいるためにもっとも重要なホルモンのひとつです。

 ――日本ではあまり注目されていませんよね。

アメリカをはじめ世界では、予防として積極的にビタミンDを摂る動きがあります。北欧でも国をあげて摂取が推奨されています。残念ながら日本では、ビタミンDの効能について見向きもされていないのが現状です。

 ――満尾先生は日本人のビタミンD濃度の低さに警鐘を鳴らしていますが、どのような状況なのですか?

まず、ビタミンD濃度は40ng(ナノグラム)/ml以上であることが最適な数値だと言われています。
30ng/ml未満ならビタミンD不足状態、20ng/ml未満なら ビタミンD欠乏状態に分類されます。

満尾クリニックの外来受診者全体でいうと、8割近くが30ng/ml未満で、うち4割近くが20ng/ml未満、至適値の40ng/ml以上だった人はわずか5%でした。

――オーシャンズ世代である40代前後の男性についてはどうですか?

20~40歳の男性400人の平均が24ng/ml、40~60歳の男性400人の平均も25ng/mlだったので、私のデータからいうとこの世代の日本人男性のビタミンDは不足状態にあると言えますね。

 

ビタミンDとイライラやうつの深い関係

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――ビタミンD不足になると、この年代の男性にどんな影響がありますか?


いろいろありますが、ビタミンDで予防や改善が期待できる症状は下記の5つです。
① イライラやうつ
② 大腸がん
③ 心疾患・脳疾患
④ 花粉症
⑤ 新型コロナウイルスまずは、イライラしやすい、うつっぽくなりやすいということ。簡単にいうと元気がなくなるっていうことですね。ビタミンD不足でカルシウムの吸収ができなくなることが理由のひとつですが、もし、軽いうつ状態の人がいたらビタミンD欠乏を疑ったほうがいいでしょう。

ビタミンDとうつ病の関係を調べる研究はいくつも行われていて、ビタミンDを投与した患者のうつ病発症が減少したという報告もあります。

晩秋から初冬の10月、11月ってメランコリックになりませんか?

――メランコリックですか? あまり意識したことはないですね……。

ビタミンDは皮膚が紫外線に当たることで作られるので、紫外線を浴びる時間が減る季節にはビタミンDの濃度が下がります。それが、物悲しさを感じることにつながると考えられています。

紫外線の量が少ない北欧では、国をあげてビタミンDを積極的に摂取していますよ。
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大腸がんと心疾患・脳疾患のリスクを軽減

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――ビタミンDの効能が認められているんですね。では、2つめの大腸がんについて教えてください。


ビタミンDにはがんを抑制する働きがあることが知られていますが、ビタミンDが不足すると、最近日本で患者数が増えている大腸がんのリスクが高まると言われています。

14カ国にまたがる13本の論文が、血中ビタミンD濃度が上昇すると大腸がんのリスクが減少すると報告していて、1万2000人を超える大腸がん患者と健常者を対象にした研究では、ビタミンD濃度が30~40ng/mlの範囲にあると、大腸がんのリスクがもっとも低くなるという傾向まで示しています。

――日本男性の大腸がん罹患率は40歳から上がると言われているので、その研究結果は朗報ですね。では、3つめの心疾患や脳疾患についてはどうでしょう?

世界の年間死亡者数でもっとも多い主要疾患は心疾患(1800万人/年)で、日本人だけを見ても死因の15.3%を心疾患が占め、同じく動脈硬化を背景にする脳血管疾患も7.9%と高い割合です。

2014年の「ビタミンD濃度とIMTとの関係」という研究結果では、血中ビタミンD濃度を維持することによって動脈硬化を予防できる可能性が指摘されています。

ちなみに、2015年から2016年にかけて行われた、60歳以上の高齢者137人を対象にした調査では、ビタミンD欠乏状態の場合、心不全のリスクは「約12倍」になると報告されています。 

 

ビタミンDは花粉症の救世主!?

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――満尾先生はビタミンDが花粉症の症状を改善すると指摘していますが、それについて教えてください。

ビタミンDは自己免疫に対して非常に重要な働きをしていることがわかっています。免疫調整作用がビタミンDのもっとも注目すべき点です。

多くの人が悩まされている花粉症(アレルギー性鼻炎)についても、ビタミンDとの関係を調べた研究がありますが、アレルギー性鼻炎の50人全員が10ng/mlの欠乏状態で、数値が低いほど、症状が重いという相関も見られました。ビタミンDを投与すると、症状が大きく改善したこともわかっています。

花粉症の人やアレルギー疾患のある人はビタミンDを補充してみる価値が十分にあると思いますよ。


新型コロナウイルスを予防

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――新型コロナウイルスにビタミンDがいいという話について、教えてください。

ビタミンDが新型コロナを予防するという確固たるデータはまだないのですが、あらゆる研究結果が各国から報告されています。
欧州20カ国について調べた研究では、血中ビタミンD濃度が低い国は、死亡者数も多い傾向が見られました。

2020年の9月にアメリカが発表した、19万人という膨大な数を対象にした調査結果では、ビタミンD濃度が高いほど、新型コロナウイルスの陽性率が下がることを示しています。

また、感染した患者を対象に、ビタミンDを投与した人としなかった人を比較した調査でも、投与した人は重症化した人が少なかったというデータもあります。

 ――日本でそうした指摘はされていませんね。

日本ではこういう研究は全然やりません。ビタミンDを飲めば絶対に感染しないのかっていうステレオタイプの意見が日本では出やすいのですが、感染率が下がる、重症化する割合も低かったという統計データがあるのも事実です。それを踏まえて、皆さん自身で判断されるといいと思います。


トレーニングにもビタミンDはおすすめ!

――今、挙げた5つ以外にも貧血やアトピー、円形脱毛症といったさまざまな健康状態をはじめ、がんや糖尿病、脳梗塞や白血病といった命にかかわる疾患に対しても、ビタミンDがいいと指摘されていますよね。

ビタミンDは細胞機能に直接的に関与する力を持ち、全身の細胞に大きな影響を与えます。ほぼすべての身体機能に関わりがあると言っても過言ではありません。自己免疫疾患の予防や治療の効果は目をみはるものがあります。

本当にオールマイティな栄養素なので、何か疾患を改善したい場合や、いつまでも健康でいたいなら、積極的にビタミンDを摂取することをおすすめします。


 ◇
ビタミンDの驚くべき効果の数々……。最近ではアスリートもパフォーマンスをあげるために積極的に摂取しているというから、オーシャンズ世代には無視できない存在だ。

後編では自分の血中ビタミンD濃度を上げるための方法をたっぷりお伝えするぞ。
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