テキーラで夏の初体験●もしもあなたが、テキーラを罰ゲームの酒だと思っていたらまだまだ若輩。テキーラは世界を夢中にする今いちばんHOTな酒なのだ。

多くの日本人が知らないテキーラのディープな魅力。クッとアツい酒の初体験をテキーラで!

クラフトジンに続いて世界で流行中だというテキーラ事情を学ぶため、600を超える銘柄を揃える世界屈指のテキーラバー「AGAVE(アガヴェ)」を訪問。

バーテンダー兼マネージャーの佐々木宗彦さんに、その深遠なるテキーラワールドをご案内いただいた。

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佐々木宗彦さん
「アガヴェ」のマネージャー兼バーテンダー。テキーラに魅せられて20年余り。各地の蒸留所やバーを訪れるなど、テキーラに関する博覧強記ぶりは業界でも知られている。
テキーラカクテルのレシピは本場メキシコ仕込みで絶品。趣味は愛車のハーレーダヴィッドソンでのツーリング。




日本人が知らないテキーラの真実①
実はテキーラは「ワイン」のように味わうべき酒だった!

日本人だけが知らない「テキーラ」の真実と、世界がハマったその魅力

ここは六本木にあるバー「アガヴェ」。メキシコの夕陽をイメージした赤い照明のなかで、バーテンダー・佐々木宗彦さんのダンディな表情がうっすら見える。黒髪を束ねたオールバック、がっしりとした体格、聖母マリアのアクセサリー……まるでメキシコ映画から飛び出してきたかのような硬骨漢だ。俄然テキーラ気分は盛り上がる。

あれ、でもテキーラってそもそも何でできてる酒なんだっけ?

「テキーラとは“アガベ(リュウゼツラン)”という食物から作られるメキシコの蒸留酒です。

リュウゼツランはメキシコや南米などに自生する植物ですね。アルコール度数が35~55%くらいあるので、ゆっくり飲んでください」。

日本人だけが知らない「テキーラ」の真実と、世界がハマったその魅力

カウンターに置かれたのは、風船のような形をした「スニフター」と呼ばれるグラス。空気が内部に溜まるため、ショットグラスよりもテキーラの芳香をじっくり楽しむのに適しているのだとか。もちろんテキーラの飲み方は自由。ロックやソーダ割りもいいが、ツウはまずこういうグラスで、ワインのようにそのまま味わうという。

鼻腔をくすぐる香りはほんのり甘い。透明な酒を舐めるように口に含むと、舌にすっきりとした優しい甘さが広がる。そして土や樽を思わせる深みのある味わいが口のなか全体に広がっていく。こ、これはウマい!

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日本人が知らないテキーラの真実②
テキーラの王様「プレミアムテキーラ」の存在感が別格だった!

日本人だけが知らない「テキーラ」の真実と、世界がハマったその魅力
風船のような形をした「スニフター」と呼ばれるグラス。グラスを変えるだけで味わいも全然違う!

実際にこれまで何度か飲んだことはあるけど、テキーラってこんなにウマかったっけ?

「これはテキーラのなかでも最高ランクに位置づけられる“プレミアムテキーラ”です」。

佐々木さんは静かに微笑むように言う。

「まず、テキーラはメキシコのハリスコ州など、指定の地域で造られたものしかテキーラとは名乗れません。シャンパンやスコッチのようなものですね」。

日本人だけが知らない「テキーラ」の真実と、世界がハマったその魅力
ボトルがユニークなのもテキーラの特徴。バー「アガヴェ」に並ぶのはどれもアガベ100%のプレミアムテキーラだ。

あまり知られていないが、テキーラは原産地呼称。さらにテキーラ造りには、指定の地域で栽培された「アガベ・アスール・テキラーナ」という品種のアガベを使用することが規則で定められていて、このアガベが51%以上使用されていなければテキーラとは名乗れない。

逆に51%以上使用されていればOKで、そこからは糖蜜など、ほかの原料を混ぜて造っても構わないそう。

「こうしたテキーラは、CRT(テキーラ規制委員会) の正式呼称では『テキーラ』と呼ばれています。 一方、いわゆる『 プレミアムテキーラ』の正式名称は『100% アガベテキーラ』と言い、原料はアガベ100%。コストが高く、手間もかかるため、値段も高価になります。

近年、アメリカを中心にブームになっているのは、このプレミアムテキーラです」。

なるほど。確かにこの高級感と存在感は別格。プレミアムテキーラはテキーラの王様ということだ。

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日本人が知らないテキーラの真実③
ハリウッドではシャンパン代わりの乾杯酒になっていた!

つまり昨今のテキーラブーム、正しくは「プレミアムテキーラブーム」だったのだ。事実、2000年代初頭から現在までに、世界のプレミアムテキーラの市場は2倍以上に急成長しているのだとか。

しかし、なぜこれほど注目されるようになったのだろうか?

「プレミアムテキーラ自体は、昔からアメリカやメキシコの富裕層が愛飲していました。ただ近年、多くのハリウッド俳優やアーティストなど、西海岸のセレブたちがプレミアムテキーラのファンになったことで、その存在が広く知られることになったんです」。

日本人だけが知らない「テキーラ」の真実と、世界がハマったその魅力
左はギタリストのカルロス・サンタナがオーナーのプレミアムテキーラ「カサノブレ エクストラ・アニェホ」、右はヴァン・ヘイレンの元ヴォーカル、サミー・ヘイガーとマルーン5のヴォーカル、アダム・レヴィーンの共同プロデュースで生まれた「サント メスキーラ」。こちらはメスカルとテキーラのブレンドなのでプレミアムテキーラではないが、サミー・ヘイガーはプレミアム・テキーラ「カボワボ」のオーナーも務める、生粋のテキーラ好きなのだ。

有名どころではジョージ・クルーニーやカルロス・サンタナ、ジャスティン・ティンバーレイク。そのテキーラ熱は本物で、自らプレミアムテキーラの銘柄をプロデュースするほど。そう、今、西海岸に集う感度の高い大人の間では、我々がシャンパンでそうするように、プレミアムテキーラで乾杯するのが最高にイケているのだ。もちろん、一気飲みはしない。

「2010年に公開された映画『ソーシャル・ネットワーク』では、ITビジネスで成功した主人公がプレミアムテキーラで乾杯するシーンが登場します。アメリカの感度の高い人たちの間では、すでにこのお酒は社会的成功の象徴と捉えられているようです」。

日本人だけが知らない「テキーラ」の真実と、世界がハマったその魅力
映画『ソーシャル・ネットワーク』で主人公たちが乾杯酒で飲んだ最高級のプレミアムテキーラ「ドン・フリオ1942」。

なるほど。奥深きテキーラの世界を知ったら、さっそく飲んでみよ……とその前に、もうちょっと知らなければならないことがある。ですよね、佐々木さん?

ということで、次回に続く。

[取材協力]
「AGAVE(アガヴェ)」
住所:東京都港区六本木7-18-11
DMビル B1F
電話:03-3497-0229
営業:18:30~25:30LO(金、土曜27:30LO)

※日曜日、および月曜日の祝日は定休

押条良太(押条事務所)=取材・文