チケットがなくても観戦が楽しめるオリンピック競技、それがマラソン。TOKYO2020と同じコースを走る「マラソン・グランド・チャンピオンシップ」を9月15日(日)に控えた今、知って得するマラソン観戦術を短期連載で。
「箱根駅伝もそうなのですが、ノープランで現場に行くとただ混んでいるだけで、選手もほとんど見れず、マラソン嫌いになって帰ってくる可能性があります(笑)。観戦者も万端の準備を整えておきましょう」というEKIDEN Newsの西本武司さん。
では、万全の準備ってなんなのか。TOKYO2020のマラソン観戦に役立つ6つのQuestionに、西本さんがAnswerする!
中長距離レースや駅伝に関する世界の情報を配信する「EKIDEN News」主宰。トークショーや、松浦弥太郎著『それからの僕にはマラソンがあった』(筑摩書房)にて対談を行うなど、幅広い分野で活躍。昨年好評を博した「あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド!」(ぴあMOOK)を今秋も発売予定。
Q. ベストな観戦場所はスマホで検索?
A. 検索してる間に選手は走り抜けます。
1カ所で見るならまだいいですが、2カ所、3カ所と回りたい人は、乗り継ぎ、ホームのどこで乗降するのが最適か、いちばん近い出口などをチェックしておきましょう。
大体の人は当日Googleマップで見ればいいと思うでしょうが、当日は混雑により通信状況が不安定なことも考えられるし、そもそも地下鉄の出口が非常に見づらい。どこに出ればいいんだろう、とスマホをいじっている間に選手はどんどん進んでいきますから、事前のチェックが必要です。
またレース当日は地下鉄出口が封鎖されていることもあります。東京オリンピック当日もまったく同じ場所が封鎖されるかは分かりませんが、9月15日(日)に行われる、東京オリンピックのマラソン日本代表選考を兼ねたMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)でどこが封鎖されているのかをチェックしておくのは得策でしょう。
Q.自転車で追いかければいいんじゃない?
A.バカ言っちゃいけません。
東京在住者やトライアスロンをやっている人は、自転車で行けるんじゃない? 都内は自転車が最速でしょ、と思っている人もいるでしょうが、バカを言っちゃいけない。
MGCはオリンピックのリハーサルでもあるのです。警視庁が威信をかけて警備にあたるため、自転車はほぼ排除されると見て間違いありません。裏道もあちらこちらが進入禁止になっている可能性があります。実際、群馬県で新年に行われるニューイヤー駅伝を自転車で回ろうとした僕は「はい、その自転車寄せて~」と白バイから注意を受けてレース観戦が終了したことがあります。
Q.選手たち、真夏の日本の暑さに耐えられますかね?
A.自分の心配をしてください。
選手たちはMGCに向けて暑熱対策をしていますが、観戦者も暑熱対策は必須。していますか? していないでしょう。
MGCは9月開催ですが、8月開催の東京オリンピックでは、さらに観戦はハードになります。みなさんも暑熱対策をして暑さに慣れておくといいでしょう。
また、1時間に500mlのペットボトル1本分ぐらいの水を飲むこと。4時間行動するとしたら4本が目安。きちんと水分を取っていると思っても急に動けなくなりますから、気をつけてください。
あと、暑さ対策にはデサントから出ている冷却ジェルもおすすめです。あれは本当に涼しくなっていいですよ。
Q.SNSでいい写真をアップするコツは?
A.動画を起動、冷却材を装備せよ。
せっかく現地に行ったのだから、いい写真を撮ってSNSにアップしたいと思う人もいるでしょう。ですが、何度も言いますが、選手たちの走る速度は非常に速い。しかも前には中継車がいますから、突然写真を撮ろうとしてもシャッターチャンスは5秒ぐらいしかありません。5秒でピントを合わせて撮影するのは至難の技で、これは箱根駅伝を3回ぐらい経験しないとちょっと難しい(笑)。なので、動画で撮って切り出す、もしくはストーリーで投稿するのが正解です。
もうひとつ夏のレースで注意したいのが、スマホや充電器の熱暴走。いざ撮ろうと思ったら突然赤い温度計が出てきて「スマホが高温になりました。シャットダウンします」と勝手に電源が落ち、電源が入らなくなる。これは夏の陸上あるあるです。なので、冷却材を用意してスマホに当てておくと、後半も安心して使うことができます。
NEXT PAGE /Q.そもそもですが……誰を応援しましょうか?
A.出身大学を参考にするのがオススメです。
沿道に出たら、本当は選手の名前を呼んで応援をしてほしいのですが、初めてマラソンを見るという人にはなかなか難しいと思います。特に男子は31人も走るので難易度が高い。そこで、一旦各選手の出身大学でソートをするといいでしょう。
今回のMGCは東洋大学出身者が多くて、設楽悠太選手、山本憲二選手、服部勇馬選手、山本浩之選手、高久龍選手が出場します。意外と弱いと言われた青学からも神野大地選手、一色恭志選手、藤川拓也選手、橋本崚選手が、駒澤大学からは中村匠吾選手、大塚祥平選手が走ります。
大学名だとちょっと馴染みが出てきたのではないでしょうか。とはいえ、ストーリーがないとどの人を応援しようかと迷うでしょう。そこでおすすめなのがコースの要所にいるであろう応援団です。実業団の関係者だけでなく、OBを応援するために各大学の陸上競技部の選手や監督、その家族などがいる可能性は非常に高い。特に神保町あたりには応援団がいるはずなので、混ぜてもらって一緒に応援すると楽しいでしょう。
「白バイを抜け!」など、選手への熱い檄で知られる駒澤大学の大八木弘明監督も終盤のどこかに絶対にいるはずです。大八木監督がどんな檄を飛ばすのか、その選手がどのように反応するのか。監督を見つけたら、こういう光景を見るのもまた楽しいはずです。
Q.観戦の格好はTシャツでいいですよね?
A.ロゴものは避けるべき。
できれば観戦時は、ロゴTシャツも避けましょう。UV加工の施されていないロゴTで炎天下にずっといると“プリント焼け”をする恐れがあります。僕は胸にくっきりとロゴマークの日焼けをしたことがあります(笑)。ユニクロの「エアリズム」をインナーに、UV加工のTシャツが夏の観戦のイチオシスタイルです。
と、ここまで準備をすれば、東京オリンピックは怖いものなしです。9月15日(日)のMGCでの失敗も成功も糧にして、2020年の本番を迎えましょう!
林田順子=取材・文