さらっと羽織るだけでガラッと変わる。モードなアウターには、それだけの威力がある。
この服は超豪華でこそあるが、素材や作り以上に、彼らの究極の戯れを享受できる点でも贅沢なのだ。
「ジル サンダー」のコート
一枚羽織る狙いは、保温のためでもあるが、コーデの物足りなさを解決する手段でもある。軽やかなロングコートなら、着心地におけるストレスもないうえに、コーデに占める面積も広く、視覚効果は高い。
このステンカラーコートは、レーヨンにポリエステルを混紡したふわとろ素材で仕立てられ、そのドレープが風を視覚化してくれる。極言すれば、風が吹いてこそコーデが完成するといった感じ。同時に、背面にはロゴをプリントし、コンサバのアイコンアウターにハズし要素を与えた。
「ボッテガ・ヴェネタ」のコート
フィッシュテールにウエストのドローコード、そしてフードを備えた、いわゆるモッズコートのデザイン。なるほどレザーで形態を借用し、遊び心を持ち込んできたか。と思ったなら間違いで、ボッテガ・ヴェネタはその先を行っている。なぜなら、使用されるマットカーフレザーは熱圧着によるシームレスなつくりで、水を弾きやすい止水ジップをも採用している、いわば本物の機能服だからだ。
例えるならゴールドケースを纏った本格ダイバーズウォッチに近い。
平井敬治=写真 鳥居健次郎、斎藤翔平、岡崎考二=写真(スナップ) 坂井辰翁=スタイリング TAKAI=ヘアメイク 髙村将司、いくら直幸=文