備えよ。俺も、新学期とは・・・
こちらはコミュニケーションのつもりでも、「それって〇〇ハラですよ!」って言われたらもうアウト。
このご時世「そんなの世代間ギャップでしょ?」では許されない。良かれと思ってとか、ついつい……でやりがちなことが果たしてハラスメントになるのか。
新入社員を迎える前に専門家からきちんと教わっておこう。今回は、企業法務や労働事件を手掛ける弁護士の寺田正主さんに話を聞いた。
弁護士・寺田正主さん石川・寺田綜合法律事務所所属。大手アパレル会社勤務を経て明治学院大学法科大学院に進学し、平成20年に司法試験に合格。
――今は上司が部下を飲みに誘うだけでもハラスメントになるらしいっすね……。「飲みニケーション」が当たり前だった世代からすると、ちょっと信じがたいですけど……。
寺田 ハラスメントとは直訳すると嫌がらせのことですが、民法上は不法行為の一類型である人格権侵害として違法となります。つまり「人としての尊厳を傷つけたり、踏みにじるようなことをしてはいけない」ということですね。
――と、言うと?
寺田 仕事関係ではセクシャルな発言は絶対にNGです。本来、コミュニケーションには不要なものですからね。確かに内輪だけの会であれば下ネタで盛り上がることもあるでしょう。
――でも、意識があるからこそ、部下と接するときに「もしや〇〇ハラ……?」ってビクつくんですよね。ここからは、具体的な事象でジャッジしていっていただきます。では、
①同性の部下の肩を組んだらセクハラですか?
寺田 そうですね、たとえ同性だとしても身体的な接触は絶対にやめたほうがいいです。ここ数年でLGBTの意識も高まっていますから。たとえこちらは男同士のコミュニケーションだと思っても、相手にどう受け止められるかわからない。異性に限らず、同性にも配慮が必要です。
②部下のスマホを覗き込んでも◯◯ハラになりますか?
寺田 それはハラスメントというよりプライバシーの侵害になる可能性が高いです。ただ、これも全部が全部そうとはいえません。
――部下のプライバシーに踏み込むことで、何らかのハラスメントになるっていう場合もある?
寺田 そこはまた微妙なところで、業務上の配慮として、上司はある程度は部下のプライベートの部分も知っておく必要があるんです。例えば元気がなければ体調なのか家族関係なのか、とかね。仕事の人間関係に原因があるとしたら上司として然るべき対応をして、パフォーマンスを取り戻す必要がありますしね。
――どこまでOKなのか、それが難しいですね。
寺田 ひとつの基準としては「履歴書に書くことか否か」ということですね。
③「週末何してたの?」もNG?
寺田 週末の予定を聞くなんてことは、日常会話の流れでありえることですから、直ちにハラスメントにはなりません。まあ、毎週「週末何してたの?」って聞いたりしたら、よろしくありませんね。相手に嫌がらせと受け取られるとハラスメントになりえますから。
――ちょっと安心しました。じゃあ「髪切った?」はどうでしょう。
寺田 容姿そのものへの言及はNGです。髪型の話題は……要注意ですね。海外では、ある程度コミュニケーションとして服装や髪型を褒めることが許容されていますが、日本ではセクシャルな意図があると捉えられる可能性があるので、そうした意図がなくても極力避けたほうがいい話題でしょうね。
④仕事が終わらない部下に「あとはやっておくよ」はパワハラになる?
寺田 これも直ちにハラスメントになることはありません。ただ、「お前にやらせると間に合わない」という意図でかけた言葉だったら、それはパワハラにあたりますね。基本的に業務は就業時間内に終えられるというのが前提で、それがうまくいかないのは仕事量や時間の管理、上司の指揮など会社側に問題があることが多いんです。そこをきちんと見直す必要があるでしょう。
――部下との接し方って難しいですね。
寺田 そもそも世代間ギャップがありますから、お互いの認識のズレがハラスメントに繋がることもあります。自分が新入社員だった頃は、オッサン上司って遠い存在だったと思うんですよね。それと同じく、今の新入社員から見たら自分は理解しがたい遠い存在だって、まずは自覚する必要があります。
――常に違いを意識しながら部下に接することが大事ですね。肝に銘じます!
続く中編ではSNSでやりがちなあの行為が〇〇ハラになるのか、お聞きします!
連載「備えよ。俺も、新学期」
Q1.上司にしたい芸能人は?、Q2.仕事で憧れる上司はどんな人?、Q3.どんなときに上司を頼りたい?、Q4.上司からSNSで友達申請が来たらどうする?
ピカピカの新入社員が入社してくる4月。我々は彼らと上手く付き合うためにどんな備えをしておくべきか。大人も新学期を迎える今、知っておきたい新入社員と向き合うための豆知識。上に戻る
岡本卓大=写真 小山田滝音=文