大人になっても無邪気に楽しんでいる人に“FUN-LIFE”なモノ・コトを伺うインタビュー。お相手はお笑い芸人のロバート 秋山竜次さんだ。
「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」ではさまざまな職種の人物に扮しているが、素顔の秋山さんとは? 本人に直撃した。
ウォーキングしている時間が最高に楽しい
「趣味でフットサルとかもないし、キャンプもしない。漫画も特に読まず『北斗の拳』や『キャプテン翼』などのメジャー系すら読んでいませんで。4コマ以上は無理なんですよね。漫画は家にはありますが、全巻並べて背表紙を爪先でカラカラッてやりたいだけっていう」。
スニーカーや料理など、最近は趣味を売りにした芸人が増える中、秋山に関しては謎。特にYouTubeなどで配信している、自身がさまざまな職種の人物に扮する「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」の影響か、プライベートが余計に見えにくい。
だが秋山曰く、プライベートが謎なのではなく、特に見せられることがないだけなのだとか。あの大きな目をギョロギョロとさせつつ、口元のマスクに触れながら続ける。
「唯一の趣味はウォーキングですね。ここ1年くらいハマっていて、一日1万歩を目標にしています。もともとひとりであちこち歩くのが好きなんです」。
一日1万歩はなかなかすごい。
「これまで7年に1度くらいの割合で尿管結石を患っていて。医者からもっと運動をしたほうがいいと言われたので、夜中に歩くようになりました。そのときに、ケータイで一日の平均歩数が出るアプリを見つけて、それを見ながら始めたら、前日よりも歩数を上げたいという衝動に駆られてしまいハマりました。
仕事の前でも「今日はこれから5000歩歩かないと巻き返せないな」とか考えるようになって。それからは、仕事の2時間前に家を出て、現場まで徒歩で向かったりしています。それがとにかく楽しいんです」。
何げないウォーキングだが、この散歩には秋山なりのルールがある。大きな目をさらに見開いて、嬉々として語る。
「グーグルマップは見ず、今日はこの辺を歩いてみようって決めてから歩きます。一度歩いた道は途中で飽きてしまうので、無茶苦茶な角とかで曲がってみたり。気付くと住宅街に入ってしまい『ここどこ?』みたいな……でもそれも楽しい。
道を曲がったらいきなり変なお店とか出てきたらワクワクしますね。ただ方向感覚が優れているのか、だいたいいつも思っていた場所には着いちゃうんですけど。歩いているときは音楽を聴いたり、気になるものがあればケータイで撮影することも」。
そして、ウォーキングと同じくらい好きというのが喫茶店巡り。
「外資系の今っぽいところも行きますが、やはり昭和の純喫茶的なところはたまらないですね。椅子がモケットで直角な造りだったり、古くさい照明器具があったり、マスターがいたり、金魚を飼っていたり、ドアにカランコロンがついていたり……。
そういうところに行ってずっと座っているのが良くて。カウンターのマスターやママと世間話をするのも最高! ウォーキングの途中で喫茶店に入って休憩するのも好きで。
仕事の前日にスタジオの住所を聞いてそこから近くの喫茶店を調べて、その日は現場ではなく、まずその喫茶店に入ることも(苦笑)。自分の中ではネタを考えるという前提で行くんですけど、結局ネットニュースを見たりスポーツ新聞を読んだり、ホットサンドやケーキとかを食べたり。そんな時間が本当にいい。
仕事のあとも、必ず喫茶店に立ち寄ってひと息ついてから家に帰ります。
最近新たに気になっているのはドライブインの自販機
純喫茶以外では市民プール、また有名なところでは熟女など、秋山が好きなものは年季が入っているものが多い。そう投げかけると秋山は首を横に振る。
「喫茶店も市民プールも共通するのは自分が子供の頃から目にしていたもの。年季の入ったというよりは、昔から変わらぬ姿で存在しているものが好きなんだと思います。
そういう昔ながらのもので、今だとドライブインが気になって仕方ないです。最近話題のお洒落なパーキングエリアと違って、かなり味が出ていますよね。自販機で売っているうどんとかトーストを食べてみたいです」。
趣味の範囲は狭いと語る秋山は、ファッションもそこまで興味がない。だが秋山らしい珍妙なこだわりがあることがわかった。
「普段着の9割はチャンピオンのTシャツ、XLです。親父がアメリカかぶれで、昔から家の至るところに『CALIFORNIA』ってペンキで描いてあったせいか、服は自然とNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)とかカレッジものが好きになりました。
カレッジものでXLまであるとなると、僕の中ではチャンピオン、もしくはラッセルアスレティックしかないんです。
ただ、チャンピオンでも理想を言わせてもらえば、アメリカの地名が英語でプリントされているとなお良しですね」。
白髪の似合う老人になってクルーザーを乗り回すのが夢!?
そんな秋山が抱く夢とは。「そうですねぇ~」と真剣な面持ちで思案し、「やっぱりあれしかないですね」と、最初こそ神妙な口調で語りだしたが……。
「大型クルーザーですね。人生の成功はクルーザーだと思っているので、乗り回したいです……というのは冗談ですが、将来的には白髪の紳士になりたくて。白髪のロン毛で、俳優の八名信夫さんみたいな雰囲気がいいなと。
一度新宿駅で見かけたことがあるんですが、そのときに着ていた白のスーツが格好良くて。八名さんのようなルックスになるためには身長も伸ばさなきゃいけないので、1回大手術もしないとですね。そのときは高須克弥先生にお願いしようと思います(笑)」。
撮影終了後、帰り際に今日はこれからどうやって帰るのかたずねた。
「もちろん歩いて帰りますよ~(笑)。アメリカの地名入りのチャンピオンもしっかり着てきましたし」。
マスク越しでもわかる、悪ガキのようなあの笑顔を浮かべながらそう答えると、丁寧にお辞儀をし、エレベーターの中へ消えていった。
インタビュー中はいかにも芸人らしい、おふざけトークを展開してくれた秋山。終始笑いが絶えない時間だった。とにかく面白い。我々が思っていた以上に、人を笑顔にしてくれる不思議なパワーを持つ人物だった。
秋山竜次●1978年、福岡県北九州市生まれ。’98年に馬場裕之、山本博と3人でお笑いトリオ「ロバート」を結成。「キングオブコント2011」で優勝を飾るなど、人気&実力ともに折り紙つき。またバラエティを中心に、ソロとしても多くの番組に出演している。
柏田テツヲ(KiKi inc.)=写真 古澤 愛=スタイリング オオサワ系=文