そして年を明けた2020年、ベントレーは新たな時代に入っていく。
と、その前に、ミュルザンヌは今年春に生産が終了するのをご存知だろうか。去る1月、そんなリリースが本国で発表された。
それはともかく、ミュルザンヌは特別な車である。実際に英国クルーのファクトリーに足を運んだ時にも驚いたが、少ない台数ながらミュルザンヌには他のモデルと混在しない独自の生産ラインがあてがわられる。
ミュルザンヌ・スピードはそんなスタンダードモデルのハイパフォーマンスバージョンとなる。標準車が512psなのに対し537psにスープアップされ、21インチの専用ホイールやステンレススチール製テールパイプなどで化粧される。
当然、こちらの方が価格は高くなり4000万円オーバーのプライスタグが付く。標準車との差は300万円以上。が、おもしろいことに販売台数はミュルザンヌ・スピードの方が上だそうだ。理由は、どうやらこの価格帯になると差額は大きく影響しないらしい。「一番いいやつ持ってきて」というやつだ。
実際に走った印象はまさに王様にでもなった気分。乗り心地はどこまでも優しく、キャビンに振動などはこない。まるで別世界。ただ、それでもステアリングの正確性は高くドライバーはクルマを操る感覚を楽しめる。そこはさすがベントレーである。兎にも角にも、生産終了が決まっているだけに、プレミアム度は相当だ。
次回はベントレー初のSUV ベンテイガをお届けする。
文:九島辰也