「バラエティ番組が『MCがいてひな壇がある』というシステムばかりになって、ただその座組でTVをずっと作っていたら、もうよっぽどのことがない限り若いスターが生まれないんじゃないかなって。才能ある若手が出てきてひな壇で結果残しても、次は別の番組のひな壇に座らされて、さらに別の番組のひな壇に座らされて……というね。スターを生むために番組があるのではなく、そのシステムにぴったりくる芸人だけが生き残るっていう状況です」
相方の西野亮廣がTVに出ないと宣言し、自身はTVに出続けたが、「自分とは合ってないな」と確信。そこで、「まったく知らなかった」というYouTubeに飛び込んだが、研究を続けるうちに1つの戦略が見えてきたという。
「TVがYouTubeのことを下に見てるっていうのは明らかでしたし、そこを逆手にとってやろうっていうのはひとつの戦略でした。芸能界がYouTube界を下に見てるっていうの、あくまでも暗黙の了解としてあったけど、口にする人は誰もいなかった。
当初は厳しい反応もあったものの、活動を続けるうちに評価はみるみる上昇。今年4月には吉本とUUUMの業務提携も発表され、芸人がYouTubeをやる土壌を作ったカジサックだが、彼の狙いはあくまでもTVとYouTubeの壁を壊すことだった。
「僕は『壁を壊して橋をかける』って言ったんです。その『橋』は、芸人さんに渡ってほしい橋であり、逆にYouTuberさんがTV界に行くために使ってもらいたい橋であり、それ以上にやっぱり視聴者なんですよ。視聴者に渡って欲しいんですよ、お互いの世界の。高齢者の方々に向けてのTV番組が増え続ける一方で、若い世代のTV離れも加速してる。
僕きっかけでいろんな芸人さんがYouTubeやって、若い人たちがそのYouTube を観て『TVの人たちってやっぱり面白いな』『もう1回TV見てみようかな』ってなったらいいじゃないですか。逆にTVしか観てなかった視聴者さんがタレントさんきっかけに橋を渡ってもらって、YouTubeの面白いところをわかってもらう。そこはあくまでもwin-winじゃないと絶対だめだと僕は思ってます」
TVとYouTubeとのwin-winを目指すというセリフは、両方の世界で成功した彼にしか言えないセリフ。彼が架ける橋が2つの世界を繋ぐ日は、決して遠くはなさそうだ。
◆『クイック・ジャパン』vol.150(2020年6月26日発売/太田出版)