厚生労働省が発表した2023年度雇用均等基本調査によると、民間企業における男性の育休取得率は30・1%。
前年度の17・1%から急増し、過去最高となった。
「イクメン」という言葉が使われ始め、男性の育休を促す改正育児・介護休業法が施行された10年度当時1・38%だったことを考えると、着実に前進している。
大きかったのは、21年の法改正だ。子どもが生まれる社員に対し育休制度の周知と取得の意向確認が事業主に義務付けられた。
23年度からは従業員千人超の大企業に対し育休取得状況の公表も義務化された。
法が育休を歓迎するムードをつくり出し、取得を後押ししたのだ。
同時に大きかったのは、子育てや仕事に対する価値観の変化である。
育児休業取得率と合わせて厚労省が発表した、若者の育休に関する意識調査によると、男性の84%が「取得の意向がある」と回答。さらに男女とも9割近くが「配偶者にも取得してほしい」と答えている。
政府は男性の育休取得率を「25年までに50%」とする目標を掲げる。
若い世代ほど仕事も家事も育児も男女平等をという考え方が強い。
「育休は取って当たり前」。その空気をさらに広めたい。
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とはいえ、23年度の女性の育休取得率は84・1%で、依然として相当な隔たりがある。
取得期間を見ても、女性は「10~18カ月未満」が6割を超えているのに対し、男性は「1カ月未満」が約6割となっている。
先の若者調査では、男性の約3割が「半年以上」の取得を希望していた。
期間の充実を次の課題として、取得しやすい環境の整備を進めてもらいたい。
育休を利用しなかった理由として挙げられるのが、職場への遠慮やキャリアへの影響である。取得したものの負い目を感じたという人も少なくない。
育休中の社員の業務をカバーする同僚に手当などを支給する企業が増えているという。周囲の不公平感を緩和し、取得しやすくする取り組みも必要だ。
長時間労働の見直しや生産性を重視した評価システムなど働き方改革も進めていく必要がある。
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就職するに当たって、企業の育休取得状況を重視する傾向は、今後ますます強まるだろう。
人手不足が深刻だからこそ、人材の確保、定着を図る観点から育休推進は企業にもメリットがある。
取得状況の公表が来年度から、従業員300人超の企業まで拡大される。
情報共有の仕組みをつくり、「この人でなければ」という組織の在り方を変えていくことは、子育てに限らず介護や病気治療などワークライフバランス実現の上からも重要だ。