陸自のオスプレイが事故を起こすのは初めてだ。
同じ構造の米軍オスプレイで重大事故が相次いでいることを考えれば、陸上幕僚監部の事故調査委員会は速やかに事故原因を究明し、公表すべきだ。
事故機は23日から始まった日米共同統合演習「キーン・ソード25」の一環で、災害の被災者を輸送する訓練中だった。
目撃者が撮影した映像を見ると、事故機は離陸後にバランスを崩し、機体を左右に揺らしながらゆっくりと降下。着陸前に大きく機体を左に傾かせ、左翼を地面に接触させた。
一歩間違えれば重大事故につながりかねない事態である。
事故を受け、防衛省は陸自オスプレイの飛行を見合わせた。安全対策が取られるまで、任務飛行を除き、飛行は再開しない方針という。
今回の事故は、鹿児島県屋久島沖での米空軍オスプレイの墜落事故を受け、予防点検を講じた中で発生している。
演習中には、別の陸自オスプレイが海自の鹿屋航空基地に緊急着陸する事態も起きている。
今回の事故を軽視すべきではない。
原因究明と抜本的な安全対策が講じられるまで全ての飛行を停止すべきだ。
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陸自は事故前日、与那国町の町議や公民館長らをオスプレイに搭乗させて、島の周辺を周遊する計画を立てていた。
天候不良で取りやめになったが、事故機に住民が乗り合わせた可能性もあり、軽率な計画だったと言わざるを得ない。
屋久島沖での墜落事故では、乗組員8人が死亡した。事故後の調査で変速機の内部で歯車が破断していたことが判明したものの、破断そのものの原因は特定されないままとなっている。
また今回は、事故の公表も遅かった。事故が起きたのは衆院選投票日の午前11時38分ごろだが、事故が公表されたのはそれから9時間近くたった午後8時半だった。
意図的な情報隠しはなかったのか。公表が遅れた経緯についても説明が求められる。
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オスプレイを巡っては、開発段階から墜落などの重大事故が相次ぎ、機体の構造的な欠陥が指摘されてきた。米国外からの調達数が伸びず、唯一調達を決めたのが日本だった。
そうした中、生産ラインの閉鎖も取り沙汰される。米国防総省が製造元と契約を結んだことで少なくとも2027年6月までは生産を維持するとされるが、先行きは不透明だ。
オスプレイの陸自配備を進めた日本政府の判断は妥当だったのか。その検証も求められる。