日本初の反人種差別法であるヘイトスピーチ解消法の施行から今月で10年となった。
 在日コリアン排斥デモが全国各地で相次ぎ社会問題化したのを受け2016年に制定された。
日本以外の出身者やその子孫に対し、外国人であることを理由に生命や財産を脅かすと公言したり、住んでいる場所から排除しようと地域の人々を扇動したりすることなどを「不当な差別的言動」と定めた。
 国にはこうした差別的言動解消のため取り組む責務を定め、自治体には地域の実情に応じた施策を講じる努力義務を課した。
 23年10月、横浜地裁川崎支部は、在日コリアン3世に対する「祖国に帰れ」といったインターネット投稿をヘイトスピーチだと認定、投稿者に損害賠償を命じた。同法の規定を根拠に損害賠償を認める事例は各地で相次いでいる。
 解消法は一定の役割を果たしてきた。
 しかし憲法が定める表現の自由に配慮した結果、解消法は罰則などの強制力を伴わない「理念法」にとどまっている。当初から実効性には疑問符が付いていた。
 法制定後もネットを中心に外国人に対する排斥運動は続いている。最近では埼玉で在日クルド人を標的にした憎悪表現やイスラム教徒のモスクに対する建設反対運動などが広がっている。
 より実効性ある対策が求められるのは言うまでもない。
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 解消法を補完しようと全国の自治体も動いている。
 川崎市は19年、全国に先駆け、罰則を伴う「差別のない人権尊重のまちづくり条例」を制定した。
差別的言動を行ってはならないとの市長の勧告に従わない場合、罰金50万円を科している。
 東京都は21年の東京五輪を前に、罰則は伴わないものの五輪憲章の実現を目指す条例として、性自認などを含むいかなる差別も許さないとする条例を定めた。
 沖縄県は、公共の場での憎悪表現を知事が公表する条例を都道府県レベルで初めて23年に制定している。
 「県民であることを理由とする不当な差別的言動」との表現で、基地問題に抗議する県民らに浴びせられてきた「沖縄ヘイト」解消に向けた施策に県が取り組むよう求めるのが特徴だ。
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 市民たちの自発的な動きも法をカバーする。
 川崎市の市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は今年2月に結成10年となった。那覇市役所前のヘイトスピーチを止めようと集まった市民らの行動は始まってから6年を経過した。
 在留資格の厳格化など外国人に対する政府の規制強化が進む。ただ、それが外国人への不当な差別につながってはならない。
 解消法の実効性をより高めることが急務だ。そのための対策を国会で議論すべきだ。
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