午後7時を10分ほど過ぎた頃に場内が暗転し、清春がステージ中央へと歩み出ると、今年デビュー25周年を迎えた彼の眩しいシルエットに向けて、観客から祝福の歓声が注がれる。祝祭の日の1曲目は「海岸線」。この優しく美しいメロディーがフロアに染みこんでいくと、すかさず「confusion」が妖しく炸裂。こうした緩急の巧みさには、いつ観てもたまらないものがある。この夜、清春の歌唱を支えたのは、中村佳嗣(G)、大橋英之(G)、YUTARO(B)、FUYU(Dr)という強靱な顔ぶれだ。
清春のライヴでは、彼が一種の“ゾーン"に入ったと感じさせられる時間帯があるのだが、この日の「LAST SONG -最後の詞-」から「悲歌」に至る流れはまさにそんな場面だった。生の歌の醍醐味をこんなにも鮮明に伝えてくれるシンガーはそうそういるものではない。その全身から放たれる声に聴き惚れていると、時が経つのを忘れてしまうほど。その後も「YOU」などの圧倒的叙情がフロアを彩り、「妖艶」と「LAW'S」で絶頂に達しながら本編は幕を閉じた。
当然のことながら、観客はまだまだ清春の美学に浸っていたい。そんなアンコールの声に導かれた彼が再び舞台に姿を現わすと、愛溢れる「EMILY」が場内に響き渡る。流麗な「Masquerade」が着地点に至ると、大橋の「Happy Birthday」のギターフレーズを合図に観客が合唱を始めた。ここで巨大なバースデー・ケーキとともに登場したのは、清春の盟友SUGIZO。フロアからは、この日最大級の感嘆の声があがり、フロア前方に人の波が押し寄せる。「良かったね。みんなのほうが誕生日プレゼントをもらったみたい。」と清春が嬉しそうにオーディエンスに語りかけたのが印象的だった。