新年あけましておめでとうございます。元日から陰鬱な報道が矢継ぎ早に飛び込んでは現実を直視するどころかSNSをザッピングする気力すら削いでいく毎日ですが、「きっと次の閏年に」という誰のものでもない予想図通りに東京事変が再始動することだけは喜ばしく。デビュー時から鋭利さと完璧主義が同居した職業音楽家であった椎名林檎がバンドを結成したという事実だけで垂涎もののニュスだったわけですが、メンバーが亀田誠治、浮雲こと長岡亮介、伊澤一葉、刄田綴色という名前の並びだけで脳が沸騰して霧散しそうな精鋭揃いという、今思えば贅沢で希少な時間が2000年代のJ-POPシーンには確かに存在したのです。実際の始まりはH是都Mことヒイズミマサユ機、晝海幹音が在籍していた第1期ですが、今回は前述の第2期時代に発表された楽曲からピックアップします。

「生きる」('10)/東京事変

アルバム『スポーツ』の冒頭を飾る、荘厳さと生々しさが共振する一曲。ゴスペルのごとき多重録音を用いたヴォーカルとコーラスの静謐な波形の交差から始まり、天性のエフェクターを喉に宿した椎名林檎の絶唱がつなぎ、バネのように躍動するバンドの骨太な演奏でようやく幕を開けるというような。ドラマチックな構成と華々しさが隅々まで象られたサウンドとは打って変わって、歌詞は誰も到達できない境地に至った者だけが手にする果てのない孤高のうら寂しさが綴られています。アルバムタイトルの『スポーツ』、金メダルを模したジャケットと相まって、大舞台を前にした一流のアーティストやアスリートたちの胸中で燃える冷たい葛藤の炎を垣間見るような心持ちになります。

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