「行こう、未来へと。行こう!」。櫻井敦司(vo)が力強く言い放ったのは、2度目のアンコールの2曲目、ショーの閉幕を想起させる「LOVE PARADE」を歌い終え、ラストナンバー「New World」が始まる直前のことだ。
BUCK-TICKはアルバム『ABRACADABRA』をリリースした後、本来ならば全国ツアーを回るはずだったが、コロナ禍を考慮し、当初予定していたスケジュールに会場を追加して フィルムコンサートツアー『TOUR2020 ABRACADABRA ON SCREEN』を開催した。このツアーも他にはない試みだった。フィルムコンサートでありながら、実際のライブと同じ音響システムと照明を使い、臨場感を再現。気迫に満ちたメンバーのパフォーマンスと、通常のライブ同様に拍手を送る観客とが三位一体となってよりリアルに近い空間を作り上げていたが、それでもやはり拭えない寂しさはあった。その『ABRACADABRA ON SCREEN』のメニューを踏襲したこの日本武道館公演は、ガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策を行ない、2020年最初で最後の有観客で開催。さらにネット生配信も実施し、会場に来られないファンの思いにも応えた。